・HER2陰性BRCA1/2遺伝子変異陽性の進行性/転移性乳がん患者が対象の第3相試験
・ベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル併用療法の有効性・安全性を検証
・カルボプラチン+パクリタキセル併用療法よりも無増悪生存期間を統計学的有意に改善
2019年9月27日より10月1日まで、スペイン/バルセロナで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO 2019)にて、HER2陰性BRCA1/2遺伝子変異陽性の進行性/転移性乳がん患者に対するポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害薬であるベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相試験(NCT02163694)の結果がParis, and Centre Eugène Marquis in RennesのVéronique Diéras氏らにより公表された。
本試験は、HER2陰性BRCA1/2遺伝子変異陽性の進行性/転移性乳がん患者に対して21日を1サイクルとして1日2回ベリパリブ120mg+1日目にカルボプラチンAUC6+1、8、15日目にパクリタキセル80mg/m2併用療法を投与する群、または21日を1サイクルとしてプラセボ+1日目にカルボプラチンAUC6+1、8、15日目にパクリタキセル80mg/m2併用療法を投与する群に2対1の割合で振り分け、主要評価項目として主治医判定による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)、臨床的ベネフィット率(CBR)などを比較検証した第3相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は47歳(24-82歳)。エストロゲン受容体/プロゲステロン受容体陰性率48%。前治療歴は2レジメン以下、全患者でBRCA1/2遺伝子変異陽性が確認されている。以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。
主要評価項目である主治医判定による無増悪生存期間(PFS)中央値はベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル群14.5ヶ月(95%信頼区間:12.5–17.7ヶ月)に対してプラセボ群12.6ヶ月(95%信頼区間:10.6-14.4ヶ月)、ベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを29%統計学的有意に改善した(HR:0.71,95%信頼区間:0.57-0.88,P=0.002)。また、3年無増悪生存率(PFS)はベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル群26%に対してプラセボ群11%、2倍以上の3年無増悪生存率(PFS)を示した。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル群33.5ヶ月(95%信頼区間:27.6-37.9ヶ月)に対してプラセボ群28.2ヶ月(95%信頼区間:24.7-35.2ヶ月)、ベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル群で死亡(OS)のリスクを5%改善した(HR:0.95,95%信頼区間:0.73-1.2,P=0.67)。
客観的奏効率(ORR)はベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル群75.8%に対してプラセボ群74.1%、臨床的ベネフィット率(CBR)はベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル群90.7%に対してプラセボ群93.2%をそれぞれ示した。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)はベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル群、プラセボ群それぞれ下記の通りである。好中球減少症は91%に対して91%、血小板減少症は82%に対して72%、貧血は81%に対して70%、吐き気/嘔吐は75%に対して68%であった。
また、20%以上の患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)はベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル群、プラセボ群それぞれ下記の通りである。貧血は27%に対して17%、好中球減少症は52%に対して50%、血小板減少症は25%に対して15%を示した。
以上の3相試験の結果より、Véronique Diéras氏らは以下のように結論を述べている。”HER2陰性BRCA1/2遺伝子変異陽性の進行性/転移性乳がん患者に対するPARP阻害薬であるベリパリブ+カルボプラチン+パクリタキセル併用療法は、カルボプラチン+パクリタキセル併用療法よりも無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。”