・再発又は難治性のFLT3変異陽性の急性骨髄性白血病患者が対象の第3相試験
・FLT阻害薬ギルテリチニブ単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・ギルテリチニブ群で死亡のリスクを36%統計学的有意に改善
2019年10月31日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて再発又は難治性のFLT3変異陽性の急性骨髄性白血病患者に対するFLT阻害薬であるギルテリチニブ単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のADMIRAL試験(NCT02421939)の結果がUniversity of PennsylvaniaのAlexander E. Perl氏らにより公表された。
ADMIRAL試験とは、再発又は難治性のFLT3変異陽性の急性骨髄性白血病患者(N=371人)に対して1日1回ギルテリチニブ120mg単剤療法を投与する群(N=247人)、またはサルベージ化学療法を投与する群(N=124人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として全生存期間(OS)、完全奏効率(CR)+部分奏効率(PR)の割合、副次評価項目として無イベント生存期間(EFS)などを比較検証した第3相試験である。
本試験が実施された背景として、急性骨髄性白血病患者の中で約30%程度の患者がFLT3変異陽性を示す。そして、FLT3変異陽性は急性骨髄性白血病患者の初回治療の奏効に対して影響を与えるため、予後が不良である。以上の背景より、第1/2相試験にて安全性が確認されているギルテリチニブ単剤療法の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
ギルテリチニブ群=62.0歳(20.0-84.0歳)
サルベージ化学療法群=62.0歳(19.0-85.0歳)
遺伝子リスクステータス
ギルテリチニブ群=Favorable 1.6%、Intermediate 73.7%、Unfavorable 10.5%
サルベージ化学療法群=Favorable 0.8%、Intermediate 71.8%、Unfavorable 8.9%
前治療歴
ギルテリチニブ群=アントラサイクリン系 83.0%、FLT3阻害薬 13.0%、造血幹細胞移植 19.4%
サルベージ化学療法群=アントラサイクリン系 85.5%、FLT3阻害薬 11.3%、造血幹細胞移植 21.0%
FLT3遺伝子変異のサブタイプ
ギルテリチニブ群=ITD型 87.0%、TKD型 8.5%、ITD/TKD型 2.8%
サルベージ化学療法群=ITD型 91.1%、TKD型 8.1%、ITD/TKD型 0%
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はギルテリチニブ群9.3ヶ月に対してサルベージ化学療法群5.6ヶ月、ギルテリチニブ群で死亡(OS)のリスクを36%統計学的有意に改善した(HR:0.64,95%信頼区間:0.49-0.83,P<0.001)。完全寛解率(CR)はギルテリチニブ群21.1%(N=52人)に対してサルベージ化学療法群10.5%(N=13人)。
副次評価項目である無イベント生存期間(EFS)中央値はギルテリチニブ群2.8ヶ月に対してサルベージ化学療法群0.7ヶ月、ギルテリチニブ群でのイベント(EFS)リスクを21%改善した(HR:0.79,95%信頼区間:0.58-1.09)。
一方の安全性として、ギルテリチニブ群で最も多くの患者で確認されたグレード3以上の有害事象(AE)は発熱好中球減少症(FN)45.9%、貧血40.7%、血小板減少性22.8%を示した。
以上のADMIRAL試験の結果よりAlexander E. Perl氏らは以下のように結論を述べている。”再発又は難治性のFLT3変異陽性の急性骨髄性白血病患者に対するFLT阻害薬ギルテリチニブ単剤療法は、全生存期間(OS)、完全奏効率(CR)を統計学的有意に改善しました。”