2月26日、厚生労働省薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会は、新薬7製品の承認を了承した。うち、抗がん剤関連は5製品。また報告品目※として、抗がん剤関連3製品の適応追加も承認された。
※報告品目:医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階において、承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
目次
審議品目
オニバイド点滴静注43mg(イリノテカン塩酸塩水和物)
抗悪性腫瘍剤であるオニバイドは、イリノテカンを医薬品有効成分としてリポソームに封入した製剤。イリノテカンリポソーム製剤は、フルオロウラシル(5-FU)とロイコボリンとの併用で、ゲムシタビン治療後に増悪した成人の膵臓がん患者に対する治療として、Onivyde(R)の販売名で、これまでに世界17か国以上で販売されている。
ベレキシブル錠80mg(チラブルチニブ塩酸塩)
中枢神経系原発リンパ腫は、初発時に病変が眼を含む脳脊髄に局在する悪性リンパ腫で、日本における年間発症数は約980人と推定されている。ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬であるベレキシブルは、B細胞受容体の下流に位置するメディエーターであるBTKを阻害することから、治療効果が期待されている。
エンハーツ点滴静注用100mg(トラスツズマブ デルクステカン(遺伝子組換え))
効能・効果:化学療法歴のあるHER2陽性の手術不能又は再発乳がん(標準的な治療が困難な場合に限る)
エンハーツは、HER2を標的とした抗体薬物複合体(ADC)。ADCとは、抗体と薬物(低分子化合物)を適切なリンカーを介して結合させた薬剤で、がん細胞に発現する標的因子に結合する抗体を介して薬物をがん細胞へ直接到達させることにより、薬物の全身曝露を抑えつつがん細胞への攻撃力を高めている。
HER2陽性再発・転移性乳がんでは、ハーセプチン(トラスツズマブ)などの抗HER2療法が標準治療であり、病勢進行した患者では別のADCとしてカドサイラ(トラスツズマブ エムタンシン)が使われている。エンハーツは、カドサイラ投与でも治療困難なサードライン以降の治療に用いられる。
ステボロニン点滴静注バッグ9000mg/300mL(ボロファラン(10B))
効能・効果:切除不能な局所再発頭頸部がん及び切除不能な進行頭頸部非扁平上皮がん
ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)用ホウ素薬剤であるステボロニンは、放射線治療の一種。患者にホウ素薬剤を投与することで、ホウ素(10B)ががん細胞に集まり、その後、体外から患部に中性子線を照射する。照射する中性子線は、非常にエネルギーが小さく、人体への影響はほとんどないが、ホウ素(10B)とぶつかると核反応を起こし、放射線が発生する。BNCTは、この放射線によってがん細胞を破壊する。
テプミトコ錠250mg(テポチニブ塩酸塩水和物)
効能・効果:MET遺伝子エクソン14スキッピング変異陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺がん
テプミトコは、受容体型チロシンキナーゼMETに対して高い選択性を有する低分子阻害剤。肝細胞増殖因子依存性および非依存性のMET活性を低ナノモルの濃度で阻害する能力を持つ。近年の遺伝子解析技術の進歩によって、MET遺伝子異常のひとつである「METex14スキッピング変異」が新たながんの治療標的として着目されている。
報告品目
リサイオ点滴静注液100mg(チオテパ)
効能・効果:悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療
リサイオは、DNA合成阻害作用をもつ抗腫瘍性アルキル化剤。チオテパは、国内では1958 年から「テスパミン注射液」として販売されていたが、原薬供給の中止によって2010年に承認整理を行い、一時国内では販売されてなかった。
しかし、2010年に欧州でチオテパ製剤が造血幹細胞移植の前治療薬として承認されたこともあり、学会などから臨床使用について多くの要望が出されていた。
2019年3月には、「小児悪性固形腫瘍における自家造血幹細胞移植の前治療」の効能・効果で製造販売承認を取得し、同年5月に発売。今回は、「悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療」への適応が追加された。
ニンラーロカプセル2.3mg、同3mg、同4mg(イキサゾミブクエン酸エステル)
効能・効果:多発性骨髄腫における自家造血幹細胞移植後の維持療法
ニンラーロは日本で初めての経口プロテアソーム阻害剤。2017年5月に、レナリドミド及びデキサメタゾンとの併用で「再発又は難治性の多発性骨髄腫」の適応を取得していた。今回の追加承認は、ファーストラインの前治療での使用を目的とするもの。
ブスルフェクス点滴静注用60mg(ブスルファン)
効能・効果:悪性リンパ腫における自家造血幹細胞移植の前治療
アルキル化抗悪性腫瘍薬のブスルフェクスは、DNA合成を阻害し、異常細胞の過剰な増殖を抑制する。主に血液がんを対象とした造血幹細胞移植の前治療薬として用いられる。同剤は米国、欧州などで承認されており、日本国内でも「同種造血幹細胞移植の前治療」「ユーイング肉腫ファミリー腫瘍、神経芽細胞腫における自家造血幹細胞移植の前治療」の適応を有している。
また、2019年10月31日の薬食審医薬品第二部会においては、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の報告書に基づき、公知申請を行っても差し支えないとする事前評価が行われていた。
関連リンク:厚生労働省 薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会)