オンコロの可知です。
6月になってしまいましたが、2015年5月15日に開設したオンコロも5周年という節目を迎えることができました。これまで続けることができたのも、応援頂いている皆さまのおかげだと思います。有難うございました。
今年は、オンコロの現状をつらつら書かせて頂くのではなく、自己満足ながら、オンコロにとってなくてはならない人物、近畿大学の中川和彦先生と対談収録をさせて頂きましたので、そのことを中心に書かせて頂きます。
宜しければお付き合い頂ければと思います。
目次
きっかけはホルモン屋
【5周年記念】がん情報サイト「オンコロ」<5th Anniversary TALK on the WEB>
対談「きっかけはホルモン屋」可知 健太 × 中川 和彦(近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門教授)
患者さんに、意義のある臨床試験情報を届ける
中川先生との出会いは、2015年夏、神保町のホルモン屋でした。
当時、「ふざけた名前」と思われたみたいですが(笑)、コンセプトを聞き、2つの試験で試しに活用してみたいとおっしゃられた中川先生。その2つの試験の内容を聞き、非常に意義がある試験だなと率直に思いました。
1つは、二ボリューション試験といい非小細胞肺がん患者に免疫チェックポイント阻害薬のバイオマーカー探索をする臨床試験。使用する薬剤は後に大きな話題を呼ぶオプジーボという薬剤。共同研究者には後にノーベル賞を受賞される本庶佑先生。中川先生は「何よりも、承認される前にオプジーボを使用できる。承認されるまで待てない患者さんに情報を届けたい」とおっしゃっていました。
もう1つは、WJOG8815L試験と言い、血漿中DNAにてEGFR T790M変異陽性が確認された非小細胞肺がん患者にAZD9291を投与して有効性を確認するという臨床試験。当時、一般名もつけられていなかった治験薬コードAZD9291は、後に商品名で「タグリッソ」と呼ばれ、圧倒的なパフォーマンスを示すEGFRチロシンキナーゼ阻害薬。そして、当時、腫瘍組織から遺伝子変異を確認する時代に、いまでいう「リキッドバイオプシー」を用いて遺伝子変異が検出された患者さんに薬剤を投与するという画期的な手法。中川先生は「腫瘍組織を再生検で取得できない患者さんがいる。そういう人にAXD9291を使用できるチャンスがあるという情報を届けたい」とおっしゃっていました。
特に二ボリューション試験の反響は大きく、初動2週間の問い合わせは50を超え、「インターネットを用いた、がんの臨床試験情報提供の価値」、おそらく必要であろうと思い始めたチャレンジが、初めて支援する試験で立証される事となりました。
この5年間で、研究者や製薬企業との契約下で支援した臨床試験数は100に迫りますが、このきっかけがなかったら、何も成し得ていなかったかもしれません。
なお、この時のことは以下にも詳しく書かせて頂いています。
ニボカップ試験、原発不明がん初の適応へのチャレンジ
つい先日、米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)にて、原発不明がんに対するオプジーボの有効性を確認した第2相臨床試験結果が近畿大学の谷崎潤子先生より発表されました。
原発不明がんに新たな治療法を! 原発不明がんにおけるオプジーボの有効性を証明(近畿大学プレスリリース)
時はさかのぼり、2018年2月10日。
原発不明がんを対象とした免疫チェックポイント阻害薬ニボルマブ(オプジーボ)の医師主導治験(NivoCUP試験)のスタートアップミーティングが開催されましたが、私は被験者募集の仕組みの紹介のために出席しておりました。
原発不明がん対象のオプジーボの試験が間もなく開始~医師主導治験のスタートアップミーティング開催~(2018.02.15)
この5年間で、オンコロは希少がん分野で被験者募集力を発揮しやすいということがわかっています。我々も「これは無理だろ?」と思うがん種でパフォーマンスを示してきた自負があります。ニボカップ試験でも、私の知る限り3名の患者さんがオンコロを通じて登録されています。
2018年に、文字通りキックオフされた治験が、予定登録期間を約半年前倒しして2年後のASCOのプレデンシャル・サイエンス・シンポジウムで発表される。それに関与できたことをうれしく思います。
さて、この治験結果は経過に過ぎず、本当のゴールは日本で初めて原発不明がんで適応を取得することです。
信じられないでしょうが、原発不明がんは適応薬剤がありません。
オプジーボがその1つ目の薬剤になるか?その行く末を、イチ情報メディアとして見守りたいと思っています。
2018年2月10日撮影、責任著者の林秀敏先生、発表演者の谷崎潤子先生
これから
あっという間の5年間でした。
ものすごくベタですが、正直な感想です。
2万人以上のがん患者さんと接してきました。
よくやってきたと思う一方、まだまだとも思います。
この機会に、過去の〇周年記事を読み返しました。
失敗に終わった取り組みも多いなと感じる一方、次の5年の展開を見据える様々な芽を吹き始めたとも思います。
今回、中川先生との対談では過去について対談させて頂きましたが、(お蔵入りになるかもしれませんが)別の動画では、未来についても語らせて頂いています。
この5年間で、がん治療も、治験のあり方も、世の中の仕組みも、大きく変わりました。
情報メディアも新たな価値を見出さなければならない時代です。その時代において、オンコロの目指すべき方向は「実診療の中に情報をのせる」ということです。
その布石として「ガーディアン」というePROアプリをローンチしており、間もなく「ゲートウェイ」という臨床試験支援用システムをローンチします。
一方、「患者さん・ご家族と直接的な接点をもち続ける」ということこそがオンコロの本流であり、一番の価値であることを忘れず次の5年を見据えていきたいと思います。
これからも、オンコロのことを宜しくお願いします。
3Hクリニカルトライアル株式会社
代表取締役副社長 可知 健太
オンコロメンバー(LIFTA統括一同)
濱崎、茂木、深谷、中山裕、大内、山崎和、高橋、中島、吉田、熊谷、恒川、成田、羽岡、佐々木、小林竜、鈴木美、後藤、大堀、八重樫、鈴木薫、関本、山本、中山悟、小川、井戸崎、橘、楠、木村、山崎由、川上、柳澤、滝澤(代表取締役)
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