・治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者が対象の第3相試験
・Selinexor+ボルテゾミブ+デキサメタゾン併用療法の有効性・安全性を比較検証
・無増悪生存期間は3剤併用群が13.93ヶ月、病勢進行または死亡のリスクを30%改善した
2020年5月29日~31日、バーチャルミーティングで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)にて治療歴のある多発性骨髄腫患者に対する経口選択的核外輸送(SINE)タンパク阻害薬であるSelinexorとプロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブとデキサメタゾンの3剤併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のBOSTON試験(NCT03110562)の結果がNational and Kapodistrian UniversityのMeletios A. Dimopoulos氏らにより公表された。
BOSTON試験とは、前治療歴1~3レジメンのある再発難治性多発性骨髄腫患者(N=402人)を対象に35日を1サイクルとして1,8,15,22,29日目にSelinexor100mg+1,8,15,22日目にボルテゾミブ1.3mg/m2+1,2,8,9,15,16,22,23,29,30日目にデキサメタゾン20mg併用療法を投与する群(N=195人,SVd)と、21日を1サイクルとして1,4,8,11日目にボルテゾミブ1.3mg/m2+1,2,4,5,8,9,11,12日目にデキサメタゾン20mg併用療法を8サイクル投与し、9サイクル目以降は35日を1サイクルとして1,8,15,22日目にボルテゾミブ1.3mg/m2+1,2,8,9,15,16,22,23,29,30日目にデキサメタゾン20mg併用療法を投与する群(N=207人,Vd)を1対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として客観的奏効率(ORR)、全生存期間(OS)などを比較検証した国際多施設共同無作為化第3相試験である。
多発性骨髄腫の標準治療薬であるボルテゾミブは抗腫瘍効果が高いものの、その副作用の末梢神経障害により約50~60%の患者が長期治療を途中で離脱している。一方、第1/2相試験ではプロテアソーム阻害薬による治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者に対してSelinexor+ボルテゾミブ+デキサメタゾン併用療法で忍容性、抗腫瘍効果が確認された背景があり、この3剤の併用療法の有用性を検証する目的でBOSTON試験が開始された。
本試験に登録された患者の年齢中央値は67歳(38-90歳)。性別は男性57.1%。R-ISS分類によるステージIIIは18.5%。なお、両群間における患者背景に偏りはなかった。本試験の主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はSVd群13.93ヶ月に対してVd群9.46ヶ月、SVd群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを30%(HR:0.70,P=0.0066)統計学有意に改善した。副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はSVd群76.4%に対してVd群62.3%、SVd群で高率であった(P=0.0012)。全生存期間(OS)中央値はSVd群で未到達に対してVd群25ヶ月であった。
一方の安全性として、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。血小板減少症はSVd群35.9%に対してVd群15.2%、疲労はSVd群11.3%に対してVd群0.5%、悪心はSVd群7.7%に対してVd群0%。また、グレード2以上の末梢神経障害発症率はSVd群21.0%に対してVd群34.3%、SVd群で統計学的有意に低率であった(P=0.0013)。
BOSTON試験の結果よりMeletios A. Dimopoulos氏らは「治療歴のある再発難治性多発性骨髄腫患者に対するSelinexor+ボルテゾミブ+デキサメタゾン併用療法は無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)を統計学有意に改善し、週1回のボルテゾミブの用量設定により末梢神経障害発症率も減少させることができました」と結論を述べている。