・MET駆動性の進行性乳頭状腎細胞がん患者が対象の第3相試験
・サボリチニブ単剤療法の有効性・安全性を検証
・サボリチニブ群において無増悪生存期間が7.0ヶ月、病勢進行・死亡リスクが29%減少
2020年5月29日~31日、バーチャルミーティングで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2020)にて MET駆動性の進行性乳頭状腎細胞がん(PRCC)患者に対してMETチロシンキナーゼ阻害薬であるサボリチニブ単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のSAVOIR試験(NCT03091192)の結果がDana-Farber Cancer Institute/Harvard Medical SchoolのToni K. Choueiri氏らにより公表された。
SAVOIR試験とは、MET駆動性の進行性乳頭状腎細胞がん(PRCC)患者をサボリチニブ 600mg単剤療法群とスニチニブ50mg(商品名スーテント;以下スーテント)単剤療法群に1対1の割合で無作為に振り分け、それぞれに1日1回、4週間投薬後、2週間休薬の投与スケジュールで比較検証した第3相試験である。主要評価項目を無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目を全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)などとした。
なお、本試験は当初患者登録数を180人予定していたが、MET駆動性の進行性乳頭状腎細胞がん(PRCC)に対するスーテント単剤療法の無増悪生存期間(PFS)の予測データが外部より入手可能になったため、60人の患者登録により試験は早期終了した。
乳頭状腎細胞がん(PRCC)は腎細胞全体での約10~15%を占めており、淡明細胞型腎細胞がんの中では最も典型的なタイプである。乳頭状腎細胞がん(PRCC)の一部はMET駆動性であるため、MET阻害薬であるサボリチニブの抗腫瘍効果が期待できる可能性があり、本試験が開始された。
本試験のデータカットオフ時の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はサボリチニブ群7.0ヶ月(95%信頼区間:2.8-未到達)に対してスーテント群5.6ヶ月(95%信頼区間:4.1-6.9ヶ月)、サボリチニブ群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを29%(HR:0.71,95%信頼区間:0.37-1.36,P=0.313)減少した。
副次評価項目である全生存期間(OS)中央値はサボリチニブ群未到達(95%信頼区間:11.9ヶ月-未到達)に対してスーテント群13.2ヶ月(95%信頼区間:7.6ヶ月-未到達)、サボリチニブ群で死亡(OS)のリスクを49%(HR:0.51,95%信頼区間:0.21-1.17,P=0.110)減少した。客観的奏効率(ORR)はサボリチニブ群27%(95%信頼区間:13.3%-45.5%)に対してスーテント群7%(95%信頼区間:0.9%-24.3%)を示した。
安全性として、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はサボリチニブ群42%に対してスーテント群81%であった。
以上のSAVOIR試験の結果よりToni K. Choueiri氏らは「MET駆動性の進行性乳頭状腎細胞がん(PRCC)に対するMETチロシンキナーゼ阻害薬サボリチニブ単剤療法は、スーテントに比べて統計学有意な差はなかったものの、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)を改善する傾向があり、忍容性も問題ありませんでした」と結論を述べている。