・SMARCB1/INI1遺伝子欠失進行性類上皮肉腫患者が対象の第2相試験
・タゼメトスタット単剤療法の有効性・安全性を比較検証
・客観的奏効率15%、全生存期間19.0ヶ月を示す
2020年10月6日、医学誌『The Lancet Oncology』にてSMARCB1/INI1遺伝子欠失進行性類上皮肉腫(サルコーマ)患者に対するエピジェネティック関連酵素EZH2を標的とする経口低分子阻害薬であるタゼメトスタット(E7438)単剤療法の有効性、安全性を検証した第2相試験(NCT02601950)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのMrinal Gounder氏らにより公表された。
本試験は、SMARCB1/INI1遺伝子欠失進行性類上皮肉腫(サルコーマ)患者に対して28日を1サイクルとして1日2回タゼメトスタット(E7438)800mg単剤療法を投与し、主要評価項目として客観的奏効率(ORR)、副次評価項目として奏効持続期間(DOR)、治療開始32週時点の病勢コントロール率(DCR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性などを検証した国際多施設共同シングルアームオープンラベルの第2相試験である。
本試験が開始された背景として、類上皮肉腫(サルコーマ)は非常に稀な疾患であり、肉腫(サルコーマ)の中でも病勢進行が早い。また、類上皮肉腫(サルコーマ)の約90%の患者でINI1遺伝子欠失が発現するため、エピジェネティック関連酵素EZH2を原因にして発がんする可能性がある。以上の背景より、SMARCB1/INI1遺伝子欠失進行性類上皮肉腫(サルコーマ)患者に対するエピジェネティック関連酵素EZH2阻害薬であるタゼメトスタット(E7438)の有用性が本試験にて検証された。
試験登録期間2015年12月22日~2017年7月7日で62人の患者が登録され、その結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は15%(95%信頼区間:7%~26%、N=9/62人)を示した。
フォローアップ期間中央値13.8ヶ月時点における副次評価項目である奏効持続期間(DOR)中央値は未到達(95%信頼区間:9.2ヶ月~未到達)だった。また、治療開始32週時点の病勢コントロール率(DCR)は26%(95%信頼区間:16%~39%、N=16/62人)、無増悪生存期間(PFS) 中央値は5.5ヶ月(95%信頼区間:3.4-5.9ヶ月)、全生存期間(OS)中央値は19.0ヶ月(95%信頼区間:11.0ヶ月-未到達)を示した。
一方の安全性として、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は貧血6%(N=4人)、体重減少3%(N=2人)であった。また、重篤な治療関連有害事象(TRAE)は発作(N=1人)、喀血(N=1人)。なお、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は、確認されなかった。
以上の第2相試験の結果よりMrinal Gounder氏らは「SMARCB1/INI1遺伝子欠失進行性類上皮肉腫(サルコーマ)に対するエピジェネティック関連酵素EZH2標的阻害薬タゼメトスタット(E7438)は良好な抗腫瘍効果を示し、進行性類上皮肉腫(サルコーマ)の治療成績を向上する可能性が示唆されました」と結論を述べている。