がん情報サイト「オンコロ」

「ぜひ防げる病気は防いで欲しい」子宮頸がんを正しく知るイベント「みんパピ! 子宮の日 スペシャルトークライブ」が開催

4月9日(金)の「子宮頸がんを予防する日(子宮の日)」に合わせて、HPV(ヒトパピローマウイルス)について正しく知るためのライブ配信イベント「みんパピ! 子宮の日 スペシャルトークライブ」がオンラインで開催された。

このイベントは、一般社団法人「HPVについての情報を広く発信する会」が運営する「みんパピ!みんなで知ろうHPVプロジェクト」の一環として行われたもの。同プロジェクトでは、「全ての日本国民にヒトパピローマウイルス(HPV)感染症に関する正確な知識を伝えること」を目的として、主にインターネット上で情報発信活動を行っている。

今回の企画では、『子宮頸がんは、予防できる。』をテーマに感染症専門医の忽那 賢志(くつな さとし)氏や産婦人科医の宋 美玄(そん みひょん)氏が日本における子宮頸がんをはじめとしたHPV感染症を取り巻く現状を述べ、境界悪性卵巣腫瘍のため両卵巣・子宮を全摘出した麻美 ゆま氏が闘病経験を語った。

目次

HPVはありふれたウイルスである


はじめに、国立国際医療研究センター 国際感染症センターに勤務する感染症専門医の忽那 賢志氏は「感染症には“感染しないための対策”と“感染した場合の対応”、この2つが大切です。ワクチンは感染症と闘うために重要な手段です」と新型コロナウイルスを例に出し、感染症の対策について述べた。

またHPVについて、「HPVは多くの型があり、子宮頸がんをはじめ、陰茎、膣、肛門などに発生するがんの原因となります。感染症はがんと関係なさそうに思われますが、一部は関連性があります」と感染症由来のがんがあることを補足した。


次に、女性医療に従事する傍ら、テレビ、インターネット、雑誌、書籍で情報発信をしている産婦人科専門医の宋 美玄氏は子宮の構造について、「子宮は赤ちゃんを宿す部分の体部と、入り口の頸部と、大きく2つの部分に分かれます。それぞれに出来るがんを子宮体がん、子宮頸がんといいます。ちなみに子宮体がんはHPVとは関係がないため、ワクチンによる予防はできません」と解説。

子宮頸がん発症の原因については、「HPVは性交渉の経験が1回でもあれば、約8割の人が感染するといわれるほどのありふれたウイルスです。だから、感染すること自体は珍しいことではなく、また感染しても約9割の方は自己の免疫で排除します」とHPV感染が特別でないこと、感染しても必ずがん化するわけではないことを述べた。

HPV感染からがん化のプロセスについては、「HPVに感染したうちのごく一部の方が子宮頸部の細胞に異常をきたします。その異常はいきなりがんになるわけではなく、軽度異形成という状態から感染が続くと中度、高度を経て子宮頸がんとなります。HPVに感染したうちの0.1〜1%の方が子宮頸がんとなります」と解説。


■HPVと子宮頸がんはどのような関係があるの?=みんパピ=より
https://minpapi.jp/hpvv-cervical-cancer/

よく寄せられる質問として、「性交渉の相手を固定していれば子宮頸がんにならないといった認識を持った方もいますが、誰でもHPVを保有している可能性があるため、大半の人がHPVには感染してしまうものという認識を持った方がいいです」と説明した。

またコンドームを着けることでHPV感染を防げるのではないかという質問に対しては、「確かに感染リスクを多少抑えることはできますが、コンドームだけでは防ぎきれません。ただし、性感染症の予防や避妊のためにコンドームをつけることは大事です」と強調した。

誤解や偏見は知らないから起きる


元セクシータレントであり、アイドルグループ「恵比寿マスカッツ」の 2 代目リーダーを務め、タレントとして活動する麻美 ゆま氏は2013年に「境界悪性卵巣腫瘍」のため、26歳で子宮と卵巣を摘出した。

「最初はお腹の張りと軟便の症状がありましたが、体の痛みはなく忙しくて疲れているだけだと思っていました。けれど、どんどん妊婦さんみたくお腹が膨らみ普段履いていたスカートも履けなくなり、病院にいきました」と異変を感じた時から病院に行くまでの状況を語った。

当時はセクシータレント以外にもテレビ出演やイベントやライブ出演など多忙な時期であった麻美氏は、初回の健診で卵巣に腫れがあることがわかりながらも、すぐには病院に行かなかったことに対し、「卵巣が腫れることはよくあり、また忙しかったこともあり、もっと身体に異変が出てきたら病院で詳しく見てもらおうと軽視していました。今思うとあの時に病院に行っていたらそこまで進行する事はなかったのではないかと悔いてしまったこともあります」と後悔を述べた。

告知を受けたときの心境は、「この先の仕事をどうしたらいいのか」と頭が真っ白になったといい、抗がん剤治療と、子宮と卵巣の全摘出が必須との医師からの説明に対し、「いずれは結婚して、子供を産めたらと漠然と考えていた。それが受け入れられず、セカンドオピニオン、サードオピニオンに行った。しかし見立ては変わりませんでした」。

治療との両立については、「入院までとにかく仕事を忙しくすることで、現実を逃避していた。しかしある番組プロデューサーから、『今あなたがすべきことは仕事ではなく、病気を治すことです』と言われハッとしました。自分のためにも周りのためにもまずは病気を治すことが最優先だと気づきました」と病気の捉え方が変わったきっかけを話した。

また病を公表したことにより、「予想はしていたものの、“麻美ゆまが子宮がんになった”や“AVでセックスのしすぎで病気になった”のような誹謗中傷が来ました。間違った認識がこんなにも世の中にあることを知りました。偏見や差別は知らないから起きるのだと思い、だからこれからも私が伝えることで、誤解や偏見をなくしていきたいと思いました」と述べ、HPV感染症に限らず、病気を正しく知ってもらうことの大切さについて語った。

現在はタレント活動を再開し、タレント業の傍らで、自身の体験した病気の話や性教育に関わる講演活動も行ってる麻美氏は「これからは、歌手活動やタレント活動の他に、AV女優として活動してきたので、性教育など私が経験した事で皆さんの役に立ちっていきたいです」と今後の目標を語った。


イベントのクロージングでは、みんパピ!みんなで知ろう HPV プロジェクトの代表で婦人科専門医の稲葉 可奈子氏が

「子宮頸がんは誰もが罹りうる病気ですが、若いうちにワクチン接種することと、20歳を過ぎたら子宮頸がん検診を受けることで、ほぼ確実に予防できます。さらに子宮頸がんは20〜40代の働き盛りや、これから結婚する世代での罹患者が多いです。ぜひ防げる病気は防いで欲しく、がんを予防できるワクチンがある、ということを多くの人に知ってもらいたいです」と語り、子宮頸がんを予防する大切さを改めて述べ、締めくくった。

■関連リンク
みんパピ! – みんなで知ろうHPVプロジェクト ウェブサイト
https://minpapi.jp/

×
モバイルバージョンを終了