・前治療歴のあるHER2陽性の再発/転移性乳がん患者が対象の第3相試験
・エンハーツ単剤療法の有効性・安全性をT-DM1と比較検証
・盲検下独立中央評価による無増悪生存期間はエンハーツ単剤群は未到達であり、
T-DM1単剤群に対して死亡リスクを72%減少した
2021年9月18日、英アストラゼネカ社のプレスリリースにて、前治療歴のあるHER2陽性の再発/転移性乳がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン、開発コード:DS-8201、以下エンハーツ)と抗HER2抗体チューブリン重合阻害薬複合体であるT-DM1(一般名:トラスツズマブ エムタンシン、以下T-DM1)の有効性、安全性を比較検証した第3相のDESTINY-Breast03試験の結果がInternational Breast Cancer CenterのJavier Cortés氏により公表された。なお、同試験の結果は、9月23日~26日にバーチャルで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2021)でも発表された。
DESTINY-Breast03試験は、前治療歴のあるHER2陽性の再発/転移性乳がん患者に対してエンハーツ単剤を投与する群、もしくはT-DM1単剤を投与する群に無作為に振り分け、主要評価項目として盲検下独立中央評価(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として主治医評価による無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)などを比較検証した国際多施設共同の第3相試験である。
本試験のフォローアップ期間中央値エンハーツ単剤群で15.5ヶ月、T-DM1単剤群で13.9ヶ月時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である盲検下独立中央評価(BICR)による無増悪生存期間(PFS)中央値はエンハーツ単剤群の未到達(95%信頼区間:18.5ヶ月~未到達)に対してT-DM1単剤群で6.8ヶ月(95%信頼区間:5.6ヶ~8.2ヶ月)と、エンハーツ単剤群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクが72%減少(HR:0.28、95%信頼区間:0.22~0.37)した。
重要な副次評価項目である主治医評価による無増悪生存期間(PFS)中央値はエンハーツ単剤群の25.1ヶ月に対してT-DM1単剤群で7.2ヶ月と、エンハーツ単剤群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクが74%減少(HR:0.26、95%信頼区間:0.20~0.35)した。
全生存期間(OS)はT-DM1単剤群に比べてエンハーツ単剤群で死亡(OS)のリスクを44%減少(HR:0.56、95%信頼区間:0.36~0.86、P=0.007172)し、エンハーツ単剤群で改善傾向を示すも、データは未成熟であった。1年全生存率(OS)はエンハーツ単剤群の94.1%に対してT-DM1単剤群で85.9%を示した。
客観的奏効率(ORR)はエンハーツ単剤群の79.7%に対してT-DM1単剤群で34.2%と、エンハーツ単剤群で2倍以上の抗腫瘍効果を示した。奏効の内訳については、完全奏効率(CR)はエンハーツ単剤群の16.1%に対してT-DM1単剤群で8.7%、部分奏効率(PR)はエンハーツ単剤群の63.6%に対してT-DM1単剤群で25.5%を示した。
以上のDESTINY-Breast03試験の結果よりJavier Cortés氏は「前治療歴のあるHER2陽性の再発/転移性乳がん患者に対する抗HER2抗体薬物複合体エンハーツ単剤療法は、T-DM1単剤群に比べて盲検下独立中央評価(BICR)による無増悪生存期間(PFS)を改善し、本疾患の標準治療選択肢になり得る可能性が示唆されました」と結論を述べている。