・脳転移のある腎細胞がん患者が対象のレトロスペクティブ試験
・カボメティクス単剤療法の有効性・安全性を検証
・脳局所治療なし患者群における頭蓋内奏効率55%、頭蓋外全奏効率48%を示した
2021年10月21日、医学誌『JAMA Oncology』にて脳転移のある腎細胞がん患者に対するマルチキナーゼ阻害薬であるカボメティクス(一般名:カボザンチニブ、以下カボメティクス)単剤療法の有効性、安全性を比較検証したレトロスペクティブ試験の結果がDana-Farber Cancer InstituteのLaure Hirsch氏らにより公表された。
本試験は2014年から2020年の期間、米国、フランスなどを含む15ヶ所の医療機関において、脳転移のある腎細胞がんに対してカボメティクス単剤療法が投与された患者を対象にその有用性を検証したレトロスペクティブ試験である。なお、対象患者はコホートA、コホートBの2つのコホートに分かれており、コホートAは脳局所治療なしに病勢進行した患者、コホートBは脳局所治療を実施して病勢進行、または病勢安定している患者で分かれている。
本試験が開始された背景として、転移性腎細胞がん患者に対するマルチキナーゼ阻害薬カボメティクス単剤療法の有用性は臨床試験にて確認されている。しかしながら、脳転移のある腎細胞がんに対しては不明確な状況である。以上の背景より、レトロスペクティブ試験が実施された。
本試験に登録された88人の患者背景は下記の通りである。性別は男性78%(N=69人)。年齢中央値は61歳(34~81歳)。以上の背景を有する患者に対するフォローアップ期間中央値17ヶ月時点における結果は下記の通りである。
Intracranial response rate(頭蓋内奏効率)はコホートAで55%(95%信頼区間:36~73%)、コホートBで47%(95%信頼区間:33~61%)それぞれを示した。また、Extracranial response rate(頭蓋外全奏効率)はコホートAで48%(95%信頼区間:31~66%)、コホートBで38%(95%信頼区間:25~52%)それぞれを示した。
全生存期間(OS)中央値はコホートAで15ヶ月(95%信頼区間:9.0~30.0ヶ月)、コホートBで16ヶ月(95%信頼区間:12.0~21.9ヶ月)を示した。 治療成功期間(TTF)中央値は、コホートAで8.9ヶ月(95%信頼区間:5.9~12.3ヶ月)、コホートBで9.7ヶ月(95%信頼区間:6.0~13.2ヶ月)を示した。
一方の安全性として、カボメティクス単剤療法の忍容性は良好であり、予期せぬ有害事象(AE)、神経障害の発現は確認されなかった。また、治療関連有害事象(TRAE)による死亡は1人の患者でも確認されなかった。
以上のレトロスペクティブ試験の結果よりDana-FarLaure Hirsch氏らは「脳転移のある腎細胞がん患者に対するマルチキナーゼ阻害薬カボメティクス単剤療法のIntracranial response rate(頭蓋内奏効率)は良好であり、忍容性も問題ありませんでした」と結論を述べている。