がん情報サイト「オンコロ」

Asco 2022 –アディセット社、アーセレックス社、PMV社に大きな期待

※本記事はEvaluate社の許可のもと、オンコロが翻訳したものです。内容および解釈については英語の原文を優先します。正確な内容については原文をお読みください。

 

Ascoから発表されたアブストラクトは、いくつかのバイオテクノロジー企業の株価を上げ、来週開催されるカンファレンス(米国癌治療学会議、Asco 2022)で期待を裏切らないようプレッシャーがかかっている。

バイオテクノロジー市場の低迷により、各社は低水準からスタートすることになっただけかもしれないが、昨日(5月26日)のAscoによるアブストラクトの発表で、特に米アディセット社、米アーセレックス社、米PMV社、英メレオ社の株価が上昇した。

一方、米スプリングワークス社の悲惨な週は、火曜日(5月24日)の肯定的なデータリリースの後も続き、米ミラティ社はKRAS阻害薬のライバル企業である米アムジェン社との最新の戦いに敗れた。しかし、アブストラクトの多くは一般的に詳細が不明であり、投資家はAscoでの完全なデータ発表が期待を下回らないことを切望しているはずだ。

アディセット社は、その典型例だ。昨年(2021年)12月、ADI-001で治療した4人のリンパ腫患者のうち3人が寛解し、ガンマデルタCar-T細胞療法に最初の臨床的裏付けを与えたという報告を受けて、同社は急騰していた。Ascoのアブストラクトでは、2名の被験者が追加され、さらに寛解も確認されたことから、株価は今朝、10%上昇した。

アディセット社にとって、これらの寛解が持続するかどうかは、同種移植のCar-T細胞療法である米アロジーン社、米プレシジョン社、スイス・クリスパー社を頓挫させた再発を考えると、特に核心的な問題である。アディセット社は、5月31日のAscoでのカットオフから、耐久性の詳細を含むデータを約束しており、ADI-001細胞のHVG反応(宿主対移植片反応)の排除の証拠があるかどうかに注目が集まっている。

その他のB細胞成熟抗原(BCMA)

アーセレックス社は、バイオテクノロジー業界のセンチメントが悪化していた2月にIPOを果たし、Ascoでは、その抗BCMA Car-T療法が24人の多発性骨髄腫被験者で100%の寛解率を達成したことを示している。これは素晴らしいことだが、業界の競争や、添付文書に95%のORR(全奏効率)と記載されている米ジョンソン&ジョンソン社/米レジェンド社のCarvykti(ciltacabtagene autoleucel)の優位性を考えると、このようなプロジェクトの船出はすでに終わっているのかもしれない。

同じ問題は、中グラセル社のBCMA/CD19標的CAR-T療法であるGC012Fにも当てはまる。これは2日間の製造工程を誇っているが、患者の予約にまだ数週間かかることを考えると、このような進歩の実用的な利点はまだ証明されていない。

もう一つ証明すべきことが多いバイオベンチャーはPVM社であり、PC14586は難治性のY220C p53突然変異を持つ21人の評価対象者に5つの部分寛解をもたらした。これは有望なスタートであるが、3つの反応は未確認であり、耐久性については何もわかっていない。

昨日、KRAS G12C阻害薬adagrasib(アダグラシブ)のKrystal-1試験に関するAscoのアブストラクトで、ミラティ社の投資家にとってはるかに悪いニュースが飛び込んできた。このデータは、アムジェン社が販売するルマケラス(一般名:ソトラシブ)のデータとほぼ一致しているだけでなく、ルマケラスの第3相データが確定した時点で、ミラティ社は早期承認取得を目指すという展望に直面することになった

スプリングワークス社は今週、デスモイド腫瘍という小さな領域でnirogacestat(ニロガセスタット)を獲得したが、より大きなチャンスは、多発性骨髄腫におけるBCMA阻害薬との併用である可能性がある。Ascoのポスター発表では、英グラクソ・スミスクライン(GSK)社のBlenrep (一般名:Belantamab mafodotin、ベランタマブ マフォドチン)の添付文書に記載されている31%というORRに、このγセクレターゼ阻害薬が実際には多くの有効性を追加するものではないことが示唆されており、またnirogacestatの特許期間が短いという問題を無視している。

そして、Ascoに関連する銘柄の中で最もパフォーマンスが悪かったのは米アイオバンス社だったが、厳密に言えば、今日の63%もの株価暴落はAscoで発表されるデータによるものではない。

レイトブレーカー

また、投資家がまだ知らないアブストラクトも注目に値する。昨日明らかになったのは、通常のプレゼンテーションだけであり、レイトブレーカーはAscoで発表されるまで秘密のままだ。

その中でも、エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン)のDestiny-Breast04試験は、米シーゲン社のトゥキーザ(一般名:ツカチニブ)や米ギリアド社のトロデルヴィ(一般名:サシツズマブ ゴビテカン)など、Her2を標的とするプロジェクトを揺るがす可能性を持っているとして、注目されている。投資家は、表向きは肯定的なTrodelvyのTropics-02試験に関するAscoのレイトブレーカー発表を不安げに待っているが、ギリアド社はわざわざ臨床的に意味があると主張しているわけではない。

そして、6月5日に発表されるスイス・ロシュ社のtiragolumab(チラゴルマブ)の小細胞肺がん(SCLC)を対象としたSkyscraper-02試験の失敗は、TIGIT阻害薬のその後の非小細胞肺がん(NSCLC)での失敗を考えると、大きな意味を持つ。数値的な効果や、SCLCの失敗の理由を示唆するバイオマーカーの詳細が待ち望まれている。

このデータは、イスラエル・コンピュジェン社、米アイテオス社、米アーカス社、メレオ社を含む他のTIGIT阻害薬の開発者にも影響を与えることは間違いないだろう。これらのうち最後の1社(メレオ社)は、etigilimabに関連するAscoのポスター発表が印象的なものではなかったため、売りが先行した。

Evaluate Vantageは、6月3日から7日に米国・シカゴで開催されるAscoからレポートを実施する予定だ。

この記事が掲載された後、スプリングワークス社は、2039年まで組成特許を有するnirogacestatの多形体を臨床研究していることを指摘した

■出典
Asco 2022 – great expectations for Adicet, Arcellx and PMV

×
モバイルバージョンを終了