がん情報サイト「オンコロ」

がんの臨床試験に関する意識調査

本レポートは2016年5月10日~6月9日に行われた「がんの臨床試験に関する意識調査」について、アンケート設計に携わったがん情報サイト『オンコロ』(運営:株式会社クリニカル・トライアル)が結果をまとめたものです。
本調査を行うに当たり多くの関係者のご協力を頂きました。その結果、2,012名もの方にアンケートへのご協力を頂くことができました。この場を借りて厚くご御礼を申し上げます。

~以下レポートになります~

目次

はじめに

2016年現在、日本で実施されている臨床試験(治験)は約700~800試験と推定され、そのうちの約250~300試験が「がん患者」を対象とした試験である。

これらの臨床試験(治験)は円滑に進まないことが多々あり、その要因の一つとして被験者不足があげられる。一方でがんの臨床試験への参加を希望する患者は決して少ないわけではない。この一見矛盾した原因は、試験参加条件の複雑化、臨床試験(治験)の啓発の不足、治験実施医療機関の受け入れ態勢、関連法規等、様々な要因が交錯していると推測される。

そこで、NPO法人キャンサーネットジャパン、NPO法人西日本がん研究機構(WJOG)、株式会社クリニカル・トライアル(がん情報サイト『オンコロ』))、第14回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO14th)、一般社団法人日本臨床試験学会(JSCTR)、中央大学理工学部 生物統計学研究室は、がんの臨床試験に関する意識調査を実施した。

本調査は、がんの臨床試験(治験)について医療者、患者・家族及び製薬企業等、それぞれの立場の方がどのような意識を持っているのかを調査することにより、そのギャップを確認し、臨床試験を円滑に進めるうえでの課題を明確化することを目的とした定量調査である。2102人(医療者519人、患者・家族1096人、製薬企業関連163人、その他一般324人)からの回答を得た。

結果、全回答者の多くの方が、がんの臨床試験(治験)の必要性を認識しており、臨床試験(治験)は治療選択肢の1つであると回答した。ゆえに、約86%の方ががんの臨床試験の情報を知りたいと回答。がん患者の約80%が臨床試験(治験)の情報を知りたいと考えており、その約半数は診断されて最初の治療選択の際に情報を知りたいと回答している。特に臨床試験(治験)情報の公開について、情報弱者且つ医療を受ける患者・家族に求めるものであった(p<0.05)。

 本結果より、がんに関わる全てのステークホルダーが、がんの臨床試験(治験)情報を求めていることがわかった。現在、日本では、利便性のよいプラットホームは存在せず、そういった情報発信が急務となる。

2016年11月29日
株式会社クリニカル・トライアル

背景

臨床試験(治験)は様々な理由により円滑に進まない事が多々ある。その要因の一つとして被験者不足があげられる。しかし、がんの臨床試験への参加を希望する患者は決して少ないわけでないと思われる。
このような一見矛盾したような状況になる原因としては、臨床試験(治験)の選択基準の複雑化、臨床試験(治験)情報や治験啓発が不足している、実施制度や各関 連機関の事情等、様々な要因が重なり合っている事が推測される。
つまり、現状では患者が臨床試験に参加するには様々な障害があることが想定される。

調査目的

本調査では、患者が治験に参加しにくい現状をうけて、がんの臨床試験(治験)について医師、患者、家族、製薬企業等、それぞれの立場の方がどのような意識を持っているのかの調査を行い、立場による認識の違いを確認し、臨床試験を円滑に進めるための第1歩として現状を理解することを目的とする。

調査概要

実施期間:2016年5月10日~6月9日
対象者:NPO法人キャンサーネットジャパンホームページ及びがん情報サイト『オンコロ』にて募集し、回答された方。総回答数:2,012名
調査方法:インターネットアンケート
実施:株式会社クリニカル・トライアル(がん情報サイト『オンコロ』)、NPO法人キャンサーネットジャパン、西日本がん研究機構(WJOG)、日本臨床腫瘍学会(JSMO14th)、一般社団法人日本臨床試験学会(JSCTR)、中央大学理工学部 生物統計学研究室
報告書作成:株式会社クリニカル・トライアル(がん情報サイト『オンコロ』)

立場別クロス集計について

「Q5.あなたの立場として当てはまるものを全て選んでください」での回答を基に「医師」、「看護師」「薬剤師」「(医師・看護師・薬剤師を除く)医療従事者」「がん患者(がん体験者)」、「がん患者(がん体験者)の家族」、「製薬企業勤務」、「CRO勤務」、「治験コーディネーター」「いずれにも該当しない」の10通りの立場に分けて結果を分析した。(※複数の立場にある場合どれか一つに分類した。分類方法についてはQ5に記載)
記載方法については省略して表記をし、「医師」「看護師」「薬剤師」「医療従事者」「がん患者」「がん患者の家族」「製薬企業」「CRO」「CRC」「一般」とする。

調査内容

1. 背景             Q.2~Q.7
2. がんの種類とステージ     Q.8,Q9
3. 家族歴            Q.10
4. がんに関する情報収集     Q.11
5. 立場別臨床試験(治験)意識  Q.12~Q32

質問項目(付録1にて選択肢等を掲載)

Q1.アンケート説明
Q2.あなたの年代を教えてください。
Q3.あなたの性別を教えてください。
Q4.あなたはがんの臨床試験(治験)に関わったことがありますか。
Q5.あなたの立場として当てはまるものを全て選んでください。
Q6.あなたの勤務形態を教えてください。※医師のみ
Q7.以下の中で経験があることを全て選んでください。※医師のみ
Q8.あなたのがんの種類を教えてください。※患者のみ
Q9.あなたの診断時のがんの病期(ステージ)を教えてください。※患者のみ
Q10.あなたの周囲でがんの診断を受けた方はいますか。当てはまる方を全て教えてください。
Q11.あなたは普段「がんに関する情報」をどのくらいの間隔でご覧になられていますか。
Q12.がんの臨床試験(治験)についてあなたのイメージを教えてください。
・「人体実験である」
・「治験は必要なことである」
・「社会貢献性がある」
・「安全性に不安がある」
・「最先端の治療が受けられる」
・「治療費の負担を軽減できる」
・「プラセボ(偽薬)が不安である」
・「最終的な治療手段である」
・「治療選択肢の一つである」
Q13.あなたはがんの臨床試験(治験)の情報を欲しいと思いますか。※患者のみ
Q14.そう思う理由を教えてください。
Q15.あなた自身ががんに罹患した場合、臨床試験(治験)の情報を欲しいと思いますか。※患者以外
Q16.そう思う理由を教えてください。
Q17.がんの臨床試験(治験)情報はどのタイミングで欲しいですか。
Q18.そう思う理由を教えてください。
Q19.あなたはがんの患者に臨床試験(治験)の情報提供をすることは必要だと思いますか。※医師のみ
Q20.どのタイミングでがんの患者に臨床試験(治験)の情報を提供するべきだと思いますか。※医師のみ
Q21.患者さんへの臨床試験(治験)の情報提供についてそのように考える理由を教えてください。※医師のみ
Q22.臨床試験(治験)に関する情報で広く一般的に公開するべきかについてあなたの考えを教えてください。
Q23.臨床試験(治験)に関する情報の公開についてご意見があればご記入をお願いします。
Q24.臨床試験(治験)情報の発信はどこが行うのが良いと思いますか。当てはまるものを全て選んでください。
Q25. 「その他」についてはこちらにご記入ください。
Q26.そう思う理由を教えてください。
Q27.現在の日本の臨床試験(治験)は世界的に見て進んでいると思いますか。
Q28.海外では臨床試験(治験)の実施計画や試験の評価において患者が参加する試みがなされています。日本でもそのような患者参加の取り組みは必要だと思いますか。
Q29.そう思う理由を教えてください。
Q30.がんの臨床試験(治験)の情報をどこで得ていますか。当てはまるものを全て選んでください。(複数選択可)
Q31. 「その他」についてはこちらにご記入ください。
Q32.がんの臨床試験(治験)に対するあなたのご意見をお聞かせください。(普段感じている事や、がんの臨床試験のイメージ、アンケートに回答してみての感想などなんでも結構です。)

アンケート結果

1.背景 Q.2~Q.7

Q.2年代

回答者は年代別に40代(33.5%)、50代(28.3%)、30代(18.2%)の順に多かった。

Q.3性別(N=2,102)

女性の回答割合が309名(61.2%)と多かったのは、乳がん患者の回答数が多かったことが影響したと考えられる。

Q.4がんの臨床試験への関わりの有無(N=2,102)

「はい」の割合が30%を超え、想定より多かった。立場別では主要なところで「はい」の割合は「医師」(89.6%)、「がん患者」(15.4%)であった。

Q.5あなたの立場として当てはまるものを全て選んでください。※複数選択可(N=2,102)



※立場が複数ある方に関してはクロス集計を行うに当たり、以下の条件でどれか一つに分類した。
・医師が優先 (がん患者であろうと家族があろうと)
・薬剤師で製薬企業・CROなら勤め先が優先
・看護師が優先 (がん患者であろうと家族があろうと)
・ついでその他の医療従事者が優先(がん患者であろうと家族があろうと)
・薬剤師で製薬企業・CROは医療従事者とみなさない
・医療関係では医師以外はCRCが優先

Q.6.あなたの勤務形態を教えてください。※医師のみ(N=144)

ほとんどの医師が勤務医であり、半数は大学病院勤務であった。

Q.7.以下の中で経験があることを全て選んでください。※医師のみ(N=144)

医師144名中127名ががんの臨床試験の責任医師または分担医の経験があった。先の質問でもあったが、がんの臨床試験に携わった事のある医師は89.6%(Q.4)であり本調査では、がんの臨床試験について知っている医師が多く回答している。

Q.8.あなたのがんの種類を教えてください。※患者のみ(N=809)

複数の乳がんの患者会でアンケートの協力が得られたため、乳がんが多くなった。肺がんに関しても患者会の協力が得られたため多くなっている。

4.がんに関する情報収集 Q11

Q.11.あなたは普段「がんに関する情報」をどのくらいの間隔でご覧になられていますか。(N=2、012)

がんに関する仕事をする立場であれば「ほぼ毎日」の割合が高い。一般の方では、「ほとんどない」(40.1%)、「月に数回程度」(32.4%)となり、それと比較すると「がん患者」や「がん患者の家族」もがんに関する情報を閲覧している。

5.立場別臨床試験(治験)意識 Q12~Q32

Q.12.がんの臨床試験(治験)についてあなたのイメージを教えてください。(N=2,102)

全体としては、「そう思う群」(37.3%)、「どちらともいえない」(25.7%)、「そう思わない群」(37.0%)と「そう思う」「そう思わない」はほぼ同等であった。
立場別にみると、人体実験であると思っている割合は「がん患者」「がん患者の家族」「医療従事者」「医師」で約40%と若干高い傾向にあった。
また、「医師」を除けば医療提供側に比べ受益者側(「がん患者」「がん患者の家族」)で若干高い傾向にあるように見えた。


臨床試験(治験)は必要なことであると思っていた方は全体で95.9%と非常に高かった。
立場別では「一般」では若干「どちらともいえない」(8.6%)の割合が若干目立ったものの、がんの臨床試験の必要性は多くの方が認識していると言えそうだ。また医療提供側である「医師」(80.6%)「薬剤師」(81.6%)「製薬企業勤務」(86.6%)では「とてもそう思う」の割合が高く、より強い必要性を感じている傾向にあった。


全体的には、前項と比較すると「どちらともいえない」がそれなりにいるものの、『社会貢献性がある』「とてもそう思う+そう思う」(88.8%)という意識が高い割合であった。
立場で見ると、前項と同様に「医師」(72.9%)「薬剤師」(68.4%)「製薬企業勤務」(62.2%)で「とてもそう思う」割合が高い傾向にあった。

全体では、約半数の方で安全性に『不安がある』「とてもそう思う+そう思う」(51.5%)と思っていた。また「どちらともいえない」(38.3%)の割合も高く、試験の内容に依存するところでもありそうだ。(※定性コメント参照)
立場で比較すると、大きな違いはないものの「医師」(41.7%)「製薬企業勤務」(42.0%)で若干「とてもそう思う+そう思う」の割合が低い傾向にあった。また「医師」では「そう思わない+全くそう思わない」(32.6%)がと他の立場と比較し高かった。



全体的に治験は『最先端の治療が受けられる』「とてもそう思う+そう思う」(69.0%)と思っている割合の方が高かった。また本項では「どちらともいえない」(25.2%)の割合も高かったが、これは新薬だけが治験をするわけではない事、プラセボがある事などが関係していると思われる。(※定性コメントより)
立場別では「CRO」の「とてもそう思う」(46.5%)が他の立場と比べて高く、「CRO」「CRC」では「そう思わない」が0%となっていた。

この項も全体的に「とてもそう思う+そう思う」(68.5%)の割合が高かった。立場別にみると特に「製薬企業」(37.0%)「CRO」(44.2%)「CRC」(40%)で「とてもそう思う」が高い傾向にあった。



全体でみると『安全性に不安がある』の項目と同様に「どちらともいえない」(31.0%)が多く、試験の内容によるところであると思われる。また、約半数がプラセボに対する不安について「とてもそう思う+そう思う」(54.1%)と回答した。
立場別では「医師」(28.5%)「薬剤師」(26.4%)で他の立場と比較して「そう思わない+全くそう思わない」が高い傾向にあった。


全体では、「とてもそう思う+そう思う」(25.4%)よりも「そう思わない+全くそう思わない」(36.8%)が上回り、がんの臨床試験を最終的な治療手段と思っていない割合のほうが高かった。
立場で比較すると「そう思わない+全くそう思わない」の割合が「医師」(60.4%)「薬剤師」(65.8%)で特に高かった。「がん患者の家族」では唯一「とてもそう思う+そう思う」(35.3%)が「そう思わない+全くそう思わない」(27.8%)を上回った。


全体では「とてもそう思う+そう思う」(85.9%)となり、多くの方が臨床試験は治療選択肢の一つであると思っていた。
立場別の傾向としては医療提供側である「医師」(41.7%)「薬剤師」(39.5%)「製薬企業勤務」(40.3%)「CRO」(48.8%)「CRC」(41.8%)で「とてもそう思う」という回答率が高かった。

Q.13.あなたはがんの臨床試験(治験)の情報を欲しいと思いますか。※患者(N=764)
Q.15.あなた自身ががんに罹患した場合、臨床試験(治験)の情報を欲しいと思いますか。※患者以外(N=1290)

全体では、「とてもそう思う+そう思う」(85.9%)が「そう思わない+全くそう思わない」(2.9%)を大きく上回った。立場別では「がん患者」は「とてもそう思う+そう思う」(82.1%)であった。また「どちらともいえない」は「看護師」(13.1%)「がん患者」(14.3%)「一般」(13.6%)で他の立場と比較して若干高いが、それについてはQ.14「そう思う理由を教えてください」の回答から、「今は必要ではないから」といった、がんではない方、経過観察中や完治された方の回答があったためと考えられる。

Q.14.そう思う理由を教えてください。『Q13回答者(がん患者)』
(全ての回答は付録2に掲載)
ピックアップ
●「とてもそう思う」「そう思う」と回答された方
・今は現実に必要とはしていないが、再発転移が分かったりしたら、最新(ベストかどうかは別として)情報の1つとして知りたい。医師は聞かないことは教えてくれない。(40代女性)
・一部の病院でしか行われていないことが多いため、標準治療後の選択肢がなくなってきた患者さんへの情報提供ができれば、選択肢のひとつとして検討ができる。(20代女性)
・私の病気(肉腫)は、忘れられたがんと云われる程、適切な治療法が未開発なので、情報がほしい。(50代女性)
・病院で治療法が無いと言われた知り合い(治療に前向きな方)と治験を探していたが、治験を探すことができた時には間に合わなかった。(60代男性)

●「そう思わない」「全くそう思わない」と回答された方
・エビデンスが無いため(30代女性)
・現在の治療で十分であると考えているため(50代女性)

●「どちらともいえない」と回答された方
・新薬に対する期待と不安が入り交じっているため(40代男性)
・調べようと思うと調べられるので、公開性はあると思うが、少し不親切。知らない医師も多いのではないか(30代女性)

Q.16.そう思う理由を教えてください。※Q.15回答者(患者以外)
(全ての回答は付録2に掲載)
ピックアップ
●「とてもそう思う」「そう思う」と回答された方
【医師の声】
免疫チェックポイント阻害剤分子標的薬など、治療のブレイクスルーが起こっているから。
・現在のもっとも有効かつ標準の治療が分かり、付随して様々な情報を得ることができるから
【看護師・薬剤師・医療従事者の声】
・治験で治るのであればそれが一番だし、治らなくても1つのデータとして社会に貢献できると思うと嬉しいから。(看護師)
・医療は日々進歩しているから(看護師)
・最新の治療を受けられる機会を入手したいから(薬剤師)
・がんの治療は、まだ発展途上にあると思われる。極力最先端の治療を受けたい、医学の進歩に役立ちたい。(医療従事者)
・治る可能性がどれくらいか分からなくても、信頼出来るドクターであれば、ドクターのスキル向上や、社会貢献の為にやると思う。(医療従事者)
【がん患者の家族の声】
・標準治療で対応できない場合もあろうし、試験に参加するかどうかの判断のために情報は必須です。(がん患者の家族)
・がん患者にならなければ受けられないから。広く社会貢献になり、次の患者さんの為に貢献できるから。臨床試験(治験)は、自分自身の希望であり、他の患者さん、未来の為になるから。(がん患者の家族)
【製薬企業・CRO・CRCの声】
・NCCN guidelineなど、いくつかの治療ガイドラインでも示されている通り、治験は治療の1つである。従って、治療方法を探すことと同義であり、情報が不要なわけがない。(製薬企業勤務)
・新たな治療法を知りたい。今後の治療法がどのように変わる可能性があるのか知りたい。(製薬企業勤務)
・先進の治療法として抗がん剤の治験は選択肢の一つであると考えられる。ただし、それが最善か否かは状況によって異なる。(CRO勤務)
・治験は最新の医療情報の一つとも言える。最新情報を収集して勉強することががんと向き合うことに繋がるし、「知らない」ことからくる不安を軽減できるから。(CRO勤務)
・臨床試験はその時代の最新の治療法である場合もあるので、標準治療と比較する上で、情報は欲しい(CRC)
・癌種、lineによっては治験しか選択肢がない場合もある。治験に携わる者として、自身も貢献したいと考えるから。(CRC)
【一般の声】
・治験で治せるものなら治したいと思うから。
・既存の治療に限界があった時の選択しの一つとして

●「そう思わない」「全くそう思わない」と回答された方
・他にちゃんと選択肢が多くあると思う。(看護師)
・罹患時の年齢にも依りますが、特に延命を期待せず、疼痛緩和等を中心とした治療法を選択したいと思います。(製薬企業勤務)
・治験をしてまで延命したいと思わない。(CRC)
・現時点では、自分に関係がない。(一般)

●「どちらともいえない」と回答された方
・まずは標準治療(医師)
・病期や個人の状態、居住地によって、臨床試験の薬剤の使用が確実ではないため。また臨床試験の参加においては、対象薬・プラセボに該当することもあり、博打のようで気が進まない。(看護師)
・治療の選択肢は多いほうがいいと思う反面、その時点で受けられる最善の治療法の中からあまり迷うこと無く選びたいとも思うので、どちらとも言えないです。(がん患者の家族)
・不確かな治療法はやはり不安。ガンということだけで怖くて不安なのにそれ以上に精神的な不安は怖い。(がん患者の家族)
・先端の治療を受けれることができる可能性がある一方で安全性、効果に不安があるので(製薬企業)
・情報が沢山ある事は治療を選択する上でも役たつかもしれないが、過度な期待や治療不安を仰ぐ事にならないだろうかと考える為。(CRC)
・プラセボだと期待感が裏切られる様でイヤだ(一般)

Q17.がんの臨床試験(治験)情報はどのタイミングで欲しいですか。(N=1957)

全体では「診断を受けて最初の治療選択」(61.0%)が上位となり、次いで「承認されている薬での治療法が無くなったとき」(19.0%)「情報を貰うタイミングは医師に任せたい」(12.2%)となった。注目したいのが「患者」で、「最初の治療選択」(50.9%)と他の立場と比較して低く、「承認されている薬での治療法が無くなったとき」(24.9%)「情報を貰うタイミングは医師に任せたい」(15.3%)の割合が他の立場と比較して高かった。

Q.18.そう思う理由を教えてください。
(全ての回答は付録3に掲載)
●「診断を受けて最初の治療を選択するとき」と回答された方の声
【医師の声】
・現在行われている治験や臨床研究では初回治療の患者が多くリクルートされている印象。ターミナル期にさしかかってから、治験があると言われても、体力・気力的に参加の同意できるかどうかわからない。(医師)
・初回治療から治験のオプションを知りたいので(医師)
【看護師・薬剤師・医療従事者の声】
・大まかな自分への治療の選択の流れを想像しておきたいので(看護師)
・最初の段階から情報をもらっていないと、インフォームドコンセントにならないから。(看護師)
・治療の見通しを聞く時に、今後開発されるかも知れない薬についても知った方が良い。(薬剤師)
・治療の選択の仕方が変わると思うので、最初にほしい(薬剤師)
・すべての可能性の中から選びたい。何かの治療をやったあとでは受けられない治療もあると思うので、こんなものがあるよ、という情報は欲しい。(医療従事者)
・今後どのようなタイミングでどのような選択肢が存在するのか、治療チャートのような全体的なイメージを患者本人のみでなく家族も持っていた方が良いと思うし、情報を得てから決断するまでのタイムラグを考えると、情報だけでも早めに知っておいた方が良いと思うから。(医療従事者)
【がん患者・がん患者の家族の声】
・実際の治療は手術も含め、まるでベルトコンベヤーに乗っかったようにどんどん進んでいってしまうもの。渦中にいる時は余裕もなく、ただ流されてそんなものだと思っていた。少し落ち着いてくると、他にも選択肢があったのではないかと思ったりもする。選択肢は多い方がいいと思うので。(がん患者)
・治療方針は患者自身が納得して選択、確定したいから。医師のいいなりの治療は納得できないから。(がん患者)
・治験の条件に治療を受けていたら不適応となる場合があるので、最初の治療の段階で欲しい。(がん患者の家族)
・これから受ける治療内容と共に治験があるという事も頭の片隅に入れておきたい。(がん患者の家族)
【製薬企業・CRO・CRCの声】
・治験によっては1stラインの治験も多いから。(製薬企業)
・海外の治験情報も含め情報を精査し、1st lineとして有望な可能性があるか否かも検討したい(製薬企業)
・情報が全て明らかになったうえで治療を進めたい。自分も積極的に関与したい。(CRO勤務)
・既に治療を開始していると参加できないケースが多いため。(CRO勤務)
・情報を受けて、診断されたばかりで受け入れられなければ断って承認薬での治療を希望すればいいので、後から知るよりは後々聞いてよかったと思えると考えます。(CRC)
・最初の治療の際に参加する治験もあると思うので、いつでも情報は必要(CRC)
【一般の声】
・医師や他人任せにせず、自分でもしっかりガンに向き合いたいので、選択肢の1つとして最初に知りたい。(一般)
・後で後悔しないよう、可能性がある情報は、先に知りたい(一般)

●「承認されている薬での治療法が無くなったとき」と回答された方の声
【医師の声】
・現段階でエビデンスのある治療を全うすることが最も安全性が高いと思うから
・選択肢が多いと判断しにくくなる
【看護師・薬剤師・医療従事者の声】
・既存の治療法で治療可能な場合は、エピデンスが確立されている通常診療を優先させたいからで、もしもその選択肢がないのであれば、治験を検討したいと思うからです(看護師)
・最後の希望として。(薬剤師)
・エビデンスのある治療をちゃんとしたと思えれば医師を信頼できるから。逆に早い段階で治験の話をすると下心があるとおもってしまう。(医療従事者)
【がん患者・がん患者の家族の声】
・初発治療中に治験情報はいらないし、そのタイミングで入手しても混乱するだけだと思います。日本ではまずは標準治療をやってみることが現時点では最善だと思います。(がん患者)
・承認されていない薬を自分の病状や治療法などしっかり把握できていない初期段階で提示されても冷静に正常な判断ができるか分からないため(がん患者)
・最初から治験は、勇気がいると思います。(がん患者の家族)
・選択肢が多い段階で知っても迷ってしまうかもしれないので、選択肢がほとんどない状態になってからで良い気がする。(がん患者の家族)
【製薬企業・CRO・CRCの声】
・治験はあくまで治療法がない場合の選択肢の一つと考えているため(製薬企業)
・最初の治療は既にリスクベネフィットがある程度検証されている治療法のうち最良と思う治療を受けたいため。(製薬企業)
・基本的には標準的な治療を試すべきであるから(CRO)
・承認されている薬のレジメンがガイドライン通りにエビデンスがあることが必要、選択肢がなくなった段階で参加したい(CRO)
・最初の治療は、既にエビデンスがある方法で臨みたい。後で後悔したくないから。(CRC)
【一般の声】
・いきなりでは副作用などわからない部分が怖いから。(一般)
・最終的な手段とは思わないが、エビデンスのある標準治療があるのなら、そちらをまず受けたいから(一般)

●「情報を貰うタイミングは医師に任せたい」と回答された方の声
【医師の声】
・自分の病状が当てはまらないタイミングで情報を提示されても意味がない。(医師)
・治療のタイミング(術後、術前、再発・転移初回や進行時)によって異なるので。(医師)
【看護師・薬剤師・医療従事者の声】
・情報の整理ができる自信がないから。(看護師)
・標準治療の適応である場合に治験の情報を与えられてしまうと標準治療に対する信頼が揺らぐ気がするが、選択肢が無くなってからだと情報をしっかり整理する体力や気力がなくなっている気がする。(薬剤師)
・医師が一番新しい治療方法を知っているし、患者に合う薬も分かるから(医療従事者)
・信頼出来るドクターであれば、ガンに限らず治療は任せるものだと思うから。(医療従事者)
【がん患者・がん患者の家族の声】
・実際に必要になった時は、おそらく精神的にも過酷な状況なため、あまりに多くの選択肢を最初に示されても混乱してしまう気がします。私の場合では、そのあたりの精神面も見極めたうえで医師から提示してもらいたいと思います。(がん患者)
・自分の病気の性質、進行度合い、体質に合わせて判断が必要だと思いますので、自分で判断するのは難しい(がん患者)
・今現在まで信頼できる医師に出会っているので医師が示してくれる治療法が最良だと思っているから(がん患者)
・お医者様との信頼関係を重要視したい(がん患者の家族)
・最終的に治験を受けるかどうかは別として、症状からプロの判断のもと、選択肢の1つになり得るなら教えて欲しいです。(がん患者の家族)

【製薬企業・CRO・CRCの声】
・素人ではいくら情報があったとしても、判断ができないため。(製薬企業)
・経験上そう感じたため。(CRO勤務で患者の方)
・情報を知っているにこしたことはないが、医師が提案できると判断したときでないと参加自体が難しいと考えるから(CRC)

【一般の声】
・自分にとっての最善の治療が何かを、先生が判断してくれると思うから(一般)
・自分で調べなくても必要な時には医師が教えてくれると考えているから(一般)
・客観的な立場から、適切なタイミングで情報を得ることで、選択肢が広がるから。(一般)

Q.19.あなたはがんの患者に臨床試験(治験)の情報提供をすることは必要だと思いますか。※医師のみ(N=144)


患者への臨床試験の情報提供を「必要でない」と思っている方は0%であった。
回答した医師の89.6%ががんの臨床試験に関わりがある方であったが(Q.4)、この結果より、がんと関わりのある医師のほとんどが、がん患者への臨床試験情報の提供は必要であると考えていると言えそうだ。

Q.20.どのタイミングでがんの患者に臨床試験(治験)の情報をするべきだと思いますか。※医師のみ(N=144)

臨床試験の情報提供をするのは「治療計画の段階から」(58.8%)が過半数を占めた。Q.17の「治験情報を欲しいタイミング」と比較すると、関連する項目の割合が良く似ていた。《「診断を受けて最初の治療選択」(61.0%)「承認されている薬での治療法が無くなったとき」(19.0%)「情報を貰うタイミングは医師に任せたい」(12.2%)》。また、次項に回答理由を記載しているが、多くの医師は患者のことをよく考えたうえで情報提供を行っている事がわかる。

Q.21.患者さんへの臨床試験(治験)の情報提供についてそのように考える理由を教えてください。※医師のみ
(全ての回答は付録4に掲載)
●「治療計画の段階から」と回答された医師の声
・患者さんの意思決定支援の重要な項目の一つであるから。
・がん治療は診断当初から始まっており、患者さんに、治療に対する選択と熟考に必要な時間と余裕を与えるため。
・自分が把握してる情報に合致するならタイミングは関係ない

●「承認薬での治療法が無くなったとき」と回答された医師の声
・まずお勧めする治療は安全性、有効性が確立しているものからと考えられ、また最初に多すぎる選択枝を提示しても患者さんが混乱すると考えるため。
・治験が適応となる場合以外は情報提供する事がよくない。

●「患者から求められたら」と回答された医師の声
・常に新薬のすべての治験情報を提供する事は困難だし、患者さんには取捨選択することは困難と思う

●「わからない」と回答された医師の声
・がんの種類によって異なると思います。また、治験にも色々な相があるので一概にはいえません。
・患者さんの理解度、利便性、経済的負担(通院など)、効果、副作用、保険適用治療との優先度は様々で、必ずしも患者さんの利益に直結するとは限らないので

Q.22.臨床試験(治験)に関する情報で広く一般的に公開するべきかについてあなたの考えを教えてください。(N=2102)

全体では『参加条件』について広く一般的に「公開すべき」(84.6%)と回答した。
注目点として、Q.22の他の項では「がん患者」「がん患者の家族」で「公開すべき」の割合が他の立場に比べ高い傾向にあるのだが、『参加条件』については他と立場と比較しても違いはなく、そのような傾向が見られなかった。

全体では『実施医療機関』について広く一般的に「公開すべき」(84.1%)と回答した。
立場別でみると「公開すべき」という考えに「医師」(90.3%)と比較して「CRO」(76.7%)「CRC」(73.6%)では差があった。これは興味深い結果に感じた。実施医療機関内での臨床試験の被験者の受け入れについて考え方の違いがあるのかもしれない。


全体では『開発メーカー』について広く一般的に「公開すべき」(75.9%)と回答した。(Q22内で7位)。立場別で比較すると「薬剤師」(18.4%)「製薬企業」(11.7%)「CRC」(10.9%)で「公開すべきでない」が目立った。




全体では『効果に関する試験結果』について広く一般的に「公開すべき」(90.4%)と回答した。(Q.22内で2位)
「公開すべき」について特に高い割合となっているのが「がん患者」(95.4%)「がん患者の家族」(93.4%)で、臨床試験の効果に関する情報を求める声は大きく、よりわかりやすい情報発信が必要となりそうだ。


全体では『副作用に関する試験結果』について広く一般的に「公開すべき」(93.6%)と回答した。(Q22内で1位)
臨床試験に関する情報で最も求められているのは副作用に関する情報という結果になった。
立場別では特に「がん患者」(97.4%)で「公開すべき」と非常に高い割合となり、患者の求める情報提供をするうえで、必須といえる項目となりそうだ。


全体では『非臨床試験での試験結果』について広く一般的に「公開すべき」(74.9%)と回答した。
立場別で見ると「公開すべき」は臨床試験に携わる「医師」(59.7%)「製薬企業」(55.0%)「CRO」(51.2%)「CRC」(59.1%)では「がん患者」(82.3%)「がん患者の家族」(80.1%)と比較して大きく差があった。


全体では『海外での情報』について広く一般的に「公開すべき」(85.7%)と回答した。
本項も同じく「公開すべき」の割合は「がん患者」(90.1%)「がん患者の家族」(89.2%)で他の立場より高かった。

全体では『参加者の募集状況』について広く一般的に「公開すべき」(74.6%)と回答した。
(Q.22内で最下位)
『参加者の募集状況』は参加をするにあたって重要な情報であるものの、「公開すべき」という割合はQ22の項目中最も低かった。立場別では「看護師」(80.8%)「がん患者」(79.1%)「がん患者の家族」(78.9%)「製薬企業勤務」(79.2%)で「公開すべき」が高い傾向であった。

Q.23.臨床試験(治験)に関する情報の公開についてご意見があればご記入をお願いします。
付録5にて全ての回答を掲載)

Q.24.臨床試験(治験)情報の発信はどこが行うのが良いと思いますか。当てはまるものを全て選んでください。(N=2102)

全体では、上位から「公的機関」(27.9%)「医療機関」(24.1%)となり、次いで「医師」(14.2%)「製薬企業」(14.0%)「患者団体・支援団体」(12.1%)がほぼ並ぶ形となった。立場別にみると、「医師」(35.6%)「製薬企業」(33.8%)「薬剤師」(36.2%)では「公的機関」の割合が若干高かった。「がん患者」(41.4%)では「医療機関+医師」が高く、医療提供者からの情報提供を求める傾向にあった。

Q.25. 「その他」についてはこちらにご記入ください。
中立的な第三者機関がするべき、複数個所から発信するべきという回答が目立った。

Q.26.そう思う理由を教えてください。
付録6にて全ての回答を掲載)

Q.27.現在の日本の臨床試験(治験)は世界的に見て進んでいると思いますか。(N=2102)

全体では「遅れている」(51.4%)が過半数となった。「わからない」(35.4%)「変わらない」(9.6%)「進んでいる」(3.6%)となった。
立場別で「変わらない」を比較すると「がん患者」(5.1%)「がん患者の家族」(7.5%)「一般」(6.5%)に対して「医師」(22.9%)「製薬企業勤務」(21.7%)「CRO」(25.6%)「CRC」(22.7%)の方が割合が高かった。

Q.28.海外では臨床試験(治験)の実施計画や試験の評価において患者が参加する試みがなされています。日本でもそのような患者参加の取り組みは必要だと思いますか。(N=2102)

全体としては「とても必要+必要」(78.7%)となった。立場別でみると、「とても必要+必要」について「がん患者」(85.7%)に対し、臨床試験業務に携わる立場である「製薬企業」(55.8%)「CRO」(62.8%)「CRC」(58.2%)で低かった。特に「製薬企業」では「必要ではない+全く必要ではない」(14.2%)が目立って高かった。次項(Q.29)にて記載もあるが、患者が参加することで生じる問題を懸念している事が要因かもしれない。

Q.29.そう思う理由を教えてください。
付録7に全ての回答を掲載)
●「とても必要」「必要」と回答した方の声
【医師の声】
・治験に対する社会的な認識が受けやすくなる。被験者も試験実施者の1パートナー。(医師)
・アウトカムの設定など、患者の視点で組まれた試験からの情報の方が患者にとって役に立つ(医師)
【看護師・薬剤師・医療従事者の声】
・患者の立場での意見は大切。実際、説明資料が多すぎて協力を得る手順は形骸化している(看護師)
・客観的結果も必要だが、実際に治療を受けるのは患者であり、その意見を取り入れるのはより良い治療・看護に必要だと思う(看護師)
・患者の負担軽減、PROの項目や実施方法をより適切にできる可能性、患者自身の知識向上につながると思う(薬剤師)
・関係者は皆 真剣であろうが、患者も多角的見地から自己を観察し、状況を報告できることが望ましい(医療従事者)
・何かを評価する場合、当事者(=患者)が中心にいるべき。QOLも含めた評価をすべき。結果に対する説得力が増す。(医療従事者)
【がん患者・がん患者の家族の声】
・以前TV番組でMDアンダーソンがんセンターでの患者会の活動として治験への介入を拝見しました。患者と医療者とが手をとって活動する姿がとてもイキイキとして、その中にはもちろんツライ現実もあるのでしょうが、日本でもこうした取り組みがあったらと思いました。(患者)
・検査の数値だけで効果が全部わかるわけじゃない、患者の身体は患者が1番わかってる。その患者の意見や評価なしでは意味が無いと思う。(患者)
・自身がCRCとして関わった癌の臨床試験のプロトコールに満足していないから。また、プロトコールで規定されているさまざまな項目、診断、制約等の中で、患者にしかわからない(わかりえない)情報は少なからずあると考えるため。(患者・CRC)
・患者になって初めて分かったことが多かったから。実施計画書等の立案に患者の意見の取入れが必要(患者・CRO勤務)
・実際に受けている人の声が反映されるから。患者本人が体調不良などによってむずかしいのなら、患者家族の評価も必要だと思います。(患者家族)
【製薬企業・CRO・CRCの声】
・がん領域ではごく僅かな生存延長で有意差を出し高額で販売される薬剤もある。EUのように本当に患者が望んでいる効果と経済面のバランスを治験に取り入れることは今後とても重要。(製薬企業)
・何が本当に必要な事かは、患者やその家族などの当事者が一番切実に感じている筈だから。(製薬企業)
・患者の評価が必ずしも正確で有意義なものとは限らないが、多角的に評価することで精度が高まることが期待される(CRO勤務)
・倫理委員会に一般人の介入があるように、臨床試験でもそうあるべき。過去に、女性の避妊方法として卵管結紮を挙げてきた企業がいたが、一般常識では考えられないことであった。(CRC)
・現在の治験、専門家の考えが強く反映されているように感じる 被験者、後の使用者となる患者さんの意見を是非反映させるべき。 検査頻度、同意説明文書、など最近偏ってないか、と感じるものも散見される(CRC)
【一般の声】
・双方向の視点は重要だと思います。ただし日本では”医師にお任せ”の患者さんも少なくないと思いますので、まずは患者側の意識を変えることが必要と思います。(一般)
・臨床試験=人体実験、という構図が根強いから。患者参加型にして、治験側の味方を増やせればと思うから。(一般)

●「必要ではない」・「全く必要ではない」と回答した方の声
・専門性や方向性に大きく関わり進捗が遅くなり無意味(医師)
・残念ながら、日本人の気質には合わない。合理的に考えられる人が極めて少ない(医師)
・そのような評価は難しい。ただ参加するだけで良いと思う。外国の真似しなくてもいい。・日本は日本らしさがあるのがいい。(看護師)
・専門家がやるべき(薬剤師・患者)
・患者に責任を持たせてはいけない。治験に責任を持てるものが仕事を全うすべき(患者)
・情報量の少ない患者が入っても、時間と手間がかかるわりには代わり映えしないと考えるため(患者家族)
・あくまで治験は薬の評価がメインであり、客観的・科学的に薬の評価をすることが大切であると考える。そのため、専門家が組み立てるプロトコールのほうが適切であると思うため。(製薬企業勤務)
・患者はあくまでも素人(製薬企業勤務)
・薬の評価の問題であり、個人的な感情論は治験計画には不要だと思う。(CRO勤務)
・患者が入ると感情論に左右される恐れがあると思う(CRC)
・医療や治験の知識が乏しい者が行うべきではない。偏りが出る。責任の所在に困る。(CRC)
・海外では患者の意識も高いので、可能なのでは。日本だと、非合理的な主張でも、声が大きい人が勝つし、マスコミもそういうところばかりピックアップする気がする。(一般)

Q.30.がんの臨床試験(治験)の情報をどこで得ていますか。当てはまるものを全て選んでください。※複数選択可(N=2102)

全体では上位から「国立がん研究センターなどのがん専門病院のホームページ」(35.7%)「がん関連の学会のホームページ」(32.2%)「医師から」(26.7%)「特に得ていない」(23.6%)「患者団体・患者支援団体のホームページ」(19.9%)「製薬企業などのホームページ」(19.1%)「マスメディアや出版社が運営・管理するウェブサイト」(15.9%)となった。(選択率15%以上の項目)
「japic」「umin」といった公的に治験情報を公開しているサイトの選択率は、立場別に「japic」は「製薬企業勤務」(40.0%)「CRO」(23.3%)「CRC」(11.8%)「薬剤師」(7.9%)「医師」(5.6%)となり「がん患者」(1.7%)であった。「umin」では「製薬企業勤務」(50.8%)「薬剤師」(26.3%)「CRC」(25.55)「CRO」(23.3%)「医師」(21.5%)となり「がん患者」(2.9%)であった。
また「テレビ番組」において「一般」(20.1%)「がん患者の家族」(16.0%)が多いのはその影響力の高さが気になるところである。

Q.32.がんの臨床試験(治験)に対するあなたのご意見をお聞かせください。(普段感じている事や、がんの臨床試験のイメージ、アンケートに回答してみての感想などなんでも結構です。)
付録7に全ての回答を掲載)

調査結果からみえること
第14回日本臨床腫瘍学会学術集会ペイシェント・アドボケイト・プラグラム での発表について
<特別シンポジウム> がん医療の進歩のためにできること(中央大学 大橋 靖雄)
調査結果を医師・がん患者・一般の方でクロス集計を行ったデータ及び自由書式でのピックアップ回答についてディスカッションが行われた。がん患者は臨床試験の情報を求めている事、また医師も情報提供をするべきであるとの結果が発表され、がんの臨床試験の情報の必要性が明確になった。
なお本学会での発表についてはキャンサーネットジャパンにて公開している。
http://www.cancernet.jp/upload/press/PR_ClinicalTraial_160808.pdf

多岐にわたる内容を様々な立場から比較した本調査は、この調査結果を見る人の立場によっても着眼点が変わり、発見や感想は異なると思う。特に自由書式の定性的な情報を見た場合はなおさらかもしれない。
この項では、冒頭に記載した調査の目的である、臨床試験情報の必要性や情報提供をするうえで重要と思えた事をまとめてみた。

・がんの臨床試験の必要性は多くの方が認識している。(「Q.12治験は必要なことである」より)
・85.9%と多くの方ががんの臨床試験は治療の選択肢の一つと考えている。(Q.12「治療選択肢の一つである」より)
・がんの臨床試験の情報は約86%と多くの方が欲しいと思っている。(.Q13,15より)
・がん患者の約80%が臨床試験の情報を欲しいと思っており、その約半数が診断されて最初の治療選択の際に情報を知りたいと思っている。もう半数は、標準治療を優先したい方や、医師に任せたい方である。(Q.13,17,18より)
・がんと関わりのある医師のほとんどが、がん患者への臨床試験情報の提供は必要であると考えている。(Q.4,19より)
・臨床試験の情報公開についてはがん患者やその家族という医療を受ける側でより求める声が大きかった。特に副作用、効果といった試験結果の情報公開を求めている。(Q.22より)
・.臨床試験の情報発信は公的機関や医療機関が上位で、次いで医師、製薬企業でするのが良いと思われている。民間企業という回答は現状では少ない。(Q.24)
・全体として医療提供側(臨床試験に携わる立場)とがん患者や家族(医療を受ける側)で回答が分かれる傾向にある。

本調査レポートに関するお問い合わせ
株式会社クリニカル・トライアル オンコロジー事業本部 担当:濱崎
MAIL:info_oncolo@3h-ct.co.jp
TEL :03-5928-0991
URL :https://www.clinical-trial.co.jp/

付録1:調査票
付録2:がんの臨床試験(治験)の情報が欲しいかについての声
付録3:がんの臨床試験(治験)情報の欲しいタイミングについての声
付録4:患者さんへの臨床試験(治験)の情報提供についての医師の声
付録5:臨床試験(治験)に関する情報の公開についての声
付録6:臨床試験(治験)情報の発信はどこが行うのが良いかについての声
付録7:臨床試験(治験)の実施計画や試験の評価で患者参加の取り組みについての声

本調査のPDFはコチラ

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