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細分化が進むオンコロジー領域で今、CRAに求められる役割とは

今や医薬品開発において欠かせない存在となっているCRO(Contract Research Organization、医薬品開発業務受託機関)。中でも開発の細分化が進むオンコロジー領域では、CROの重要性は日に日に増してきています。

今回は、40年の歴史あるCROとして、薬事コンサルティングから、モニタリング、DM統計解析、市販後調査関連業務にいたるまで、ワンストップでサービスを提供し続けている株式会社メディサイエンスプラニングの皆さんに、オンコロジー領域での開発の現状やCROの役割、同社の特徴や働き方などについて、お話しを伺いました。

インタビュイー
株式会社メディサイエンスプラニング
星田 昌宏 取締役副社長
高橋 副本部長
髙橋 部長
インタビュアー
3Hクリニカルトライアル株式会社
可知 健太 執行役員

目次

変わる開発環境、開発体制

可知:本日、このような機会を設けさせていただき、ありがとうございます。まずは、メディサイエンスプラニングさんの会社概要を教えてください。

星田 副社長:当社(メディサイエンスプラニング)は、2021年2月に株式会社MICメディカルと合併し、現在の従業員数は約1400名です。その中で、モニターとプロジェクトリーダー合わせて約900名在籍しています。治験がどんどん増えてきていて、中途採用でモニターを募集しています。

高橋 副本部長:開発体制についてですが、オンコロジー領域ですと、1プロジェクトあたりプロジェクトリーダー1名にモニターが4~5人の体制になっています。プライマリー領域の疾患で患者さんの数も多ければ、医療機関の数が20を超える場合もありますが、6名くらいの体制がベースになっています。

髙橋 部長:開発環境としては、医療機関側の受け入れ体制も重要になります。グローバルスタディですと、一例としてトレーニングログを正しく残していくことが基本なので、その理解が得られないと、ICH- GCP(医薬品の臨床試験の実施基準)が守られないケースもあるので、協力いただくことが可能な医療機関に治験を打診することになり、治験を実施する医療機関が偏ってしまいます。

可知:お話を伺っていて、DCT(Decentralized Clinical Trial、分散型治験)が進むと、グローバルスタディ等の経験豊富ながんセンターなどの中核病院によるワンサイトコントロールで地方はサテライトサイト制という方法もあるのかなと思いました。

治験の「e化」とグループ連携に強み

可知:現在、どのくらいの試験を受託していますか?

星田 副社長:試験の数は公開していませんが、常に3桁の試験が動いています。そのうちオンコロジー領域は、試験数で言うと60%から70%の間です。昨年(2021年)、特に後半は業界全体としてコロナ禍以前の水準と同等以上に需要が増えています。コロナ禍で抑制的であった開発が再開されたこともあり、受託件数は大きく積み上がりました。

可知:受託件数が増加している背景として、メディサイエンスプランニングにはどのような特徴があるのか、教えていただけますか。

星田 副社長:ひとつは、治験の「e化」にあります。我々は昨年、デジタルトライアルサービスグループという部署を作りました。ePRO(electric Patient-reported-outcome、患者報告アウトカムシステム)、EDC(Electronic Data Capture、電子的臨床検査情報収集)、リモートSDV(Source Document Verification、直接閲覧)などのe化されているものを、試験ごとに適切な組み合わせでデジタル化した治験を提供するサービスを開始しています。また、エムスリーグループの一社として、治験君や、QLifeのボランティアも活用しています。今後は、3Hグループとも連携していくことになるでしょう。


(リモートSDV室)

また、当社はグローバルから直接依頼を受けている試験も多いというのもひとつの特徴です。治験国内管理人(ICCC、In country Clinical Care-taker)を務めることも多く、グローバルのバイオベンチャーから直接受けている治験を受けることも多くあります。

可知:ICCCはどれくらいの件数を請け負っていますか。

星田 副社長:ICCCは、2桁です。国内管理人業務なので、当局対応も、機構相談も受けています。

可知:かなり多くの件数を請け負ってらっしゃいますね。コンサルテーションから実際に国内管理人の業務まで務められているということですね。

星田 副社長:はい、開発計画のところから携わるための部署も作りました。DM(データマネジメント)統計やPV(Pharmacovigilance、安全性情報担当)、薬事などの部署もすべてありますので、国内管理人の業務をすべて受けられる体制になっています。

もうひとつの特徴は、旧MICメディカルは医療機器に強い会社でしたので、医療機器の案件も多く請け負っています。これに関連する他のCROが有していないサービスのひとつとして、弊社には画像診断部があるため、セントラルレーティングを行うこともできます。

増える新規参入とCROに対する需要、グローバル案件は日常に

可知:近年、オンコロジー領域の開発環境は、大きく変化していると思います。その中でメディサイエンスプラニングはどのような取り組みを行っていこうと考えていますか。

高橋 副本部長:オンコロジー領域に対しては、まだまだ治療の充実度を求められていると感じています。オンコロジー領域の開発は更に増えるものと想定しており、現在でもMPI社内にはオンコロジー経験者は育っていますが、まだまだ人材は足りていないのが現状です。今後は、個別化医療が進み、更にバイオマーカーや特定された遺伝子変異を標的とした開発が進むと考えられ、そういった試験を担当できるスペシャリストの数を増やしていきたいと考えています。

(高橋副本部長)

髙橋 部長:既に、これからオンコロジー領域に取り組もうとしている製薬会社やバイオベンチャーより、MPIに対しコンサルテーションの打診を受ける事案が増えて来ています。初めてオンコロジー領域にチャレンジされる場合、今まで蓄積されたノウハウがない中で、開発を進めるしかない企業も多いと思うので、我々のノウハウを提供していき、開発戦略という時点からサポートすることができると考えています。

(髙橋部長)

星田 副社長:他に、オンコロジー領域はほぼ100%グローバルスタディです。英語の資料を使用したり、レポート等を英語で作成することは日常的になってきています。

髙橋 部長:グローバルスタディの場合、テレカンも基本的に英語で求められることが多いです。メールも英語でやり取りしています。もちろん国内企業からの受託もあるので、その場合は日本語を使いますが、その場合でも資料は英語を求められる機会が増えてきました。

星田 副社長:社内には、英語のサポートをしてくれる専門の部署があります。

高橋 副本部長:英語のサポート部署は、プロトコルなどもある程度把握した上でサポートしてくれますし、プレゼンのマテリアルレビューもお願いしています。

リモートSDV室設置など「e化」は、働き方の多様性にも寄与

可知:メディサイエンスプラニングさんでの働き方に特徴はありますか。オンコロジー領域を例に教えてください。

星田 副社長:現在は、在宅勤務と出社のハイブリッド勤務を実施しています。臨床は、現在週3日在宅になっています。

高橋 副本部長:基本的に、(在宅・出社の割合は)プロジェクトの試験進捗状況に応じて異なります。もちろん、体調面などを考慮して、日数を増やす等は柔軟に対応しています。

可知:産休や育休などについて気になる方もいると思うので、産休育休からの復職率など、女性の働き方について教えてください。

星田 副社長:産休、育休からの復職率は100%です。産休期間は最長2年です。お子さんが小学校3年生修了までは時短勤務も可能です。男性で育休を取っている方もいます。

モニターで復職された方には、基本的には宿泊出張がないモニタリングをお願いしています。ケースバイケースで内勤になる人もいますし、本人の希望に沿うようにしています。

可知:復職して業務に当たられている方の割合は、全体の何%くらいですか。

高橋 副本部長:今現在、私が所属している本部では、170人うちの10人が産休中で、復職後すぐに業務されています。入れ替わりで常に10人程度は産休されている方がいる印象です。

髙橋 部長:私の本部では、50人中8人が復職したばかりの時短勤務をしています。復職した方でも活躍の場はあります。PL(プロジェクトリーダー)クラスでも復職された女性の方がいます。出社や在宅をうまく使い分け、かつメンバーの協力を得ることにより復職後であっても業務を遂行できています。

高橋 副本部長:また、オフィスの移転を機にリモートSDV室を2部屋に拡充しました。大学病院やがんセンターのカルテを会社で見ることができる環境が整い、出張を減らすことができるので、産休から復職した方の活躍の場も広がっています。

可知:PLの方の平均年齢や性別の割合はどれくらいですか。

星田 副社長:PLクラスだと、女性と男性の割合はだいたい同じくらいです。オンコロジーも同じくらいの割合です。

早くて30歳くらいでPLに就任します。がん種によっては、部長になってもPLを兼任するので、幅広い年代のPLがいます。

当社は完全に実力主義ですので、中途採用も新卒も関係なく、PLになることはできます。男性か女性かなども関係なく実績に応じて評価します。

オンコロジー領域CRAに求められる人物像とは

可知:これからのCRAには、どのような人物が求められていると考えますか。知識が必要なのはもちろんですが、他に求められる能力や要素はありますか。

髙橋 部長:幅広い知識や柔軟性のある方が来てくれるとうれしいです。1つの領域に特化している方も多いと思いますが、その時々の開発トレンドがあり、CROではそのトレンドに併せて開発を行うので、柔軟に、色々な領域に携われる人材が求められています。

高橋 副本部長:オンコロジー領域の試験は長いことが多く、アクティビティが低下するフォローフェーズにおいては、(医療機関や実施診療科が重複する場合に)他の試験を兼任して担当する人も多くいます。また、複雑な試験も増えているため、複数の試験を担当していても、混乱せず、マルチタスクに応じられる人材が求められるのでは無いでしょうか。もちろん、マルチタスクを行う場合は、同じクライアント、同じ薬剤、同じ疾患であるなど、負担を軽減するような措置は取ります。また、コミュニケーション能力も重要だと思います。オンコロジーの先生は研究熱心な先生が多いので、先生とコミュニケーションを取る際に、先生が興味あるような会話ができる方のほうが好ましいです。

ご自身も(担当している開発品目に)興味をもって、相手にメッセージを伝えられるような人のほうがよいと思います。教えることが好きな先生もいらっしゃるので、面談の機会に情報をいただき、学ぶことに対し遠慮しないでトライできるような人が向いているのではないでしょうか。

可知:最後にメディサイエンスプランニング社の強みなど、教えていただきたいです。

星田 副社長:当社はエムスリーグループの一員ですので、各がん種の患者さんがどれくらいいらっしゃるのか、グループ会社のデータや事前の調査が可能です。グループ会社があるからこそ得られる情報は、他社にはないメリットだと思います。

可知:ありがとうございます。オンコロはここ数年間、がん情報サイトを運営してきました。それにより「世間よりも早い段階で新しい情報が集まりやすいこと」「がん領域のKOLへのコネクションを多く保有していること」「患者のインサイトが良くわかること」がアセットとしてあります。この「情報」「KOL」「患者インサイト」といったアセットをMPIさんに提供することで、通常のCROとしては経験できないがん特化のチーム実現に助力できればと思っています。

また、3HはDCT支援ベンダーとして業界シェアを伸ばしている実績もあり、オンコロジー領域でもDCTがスタートしています。がん分野もスクリーニングや長期フォローアップといった領域でDCT手法が求められ始めていますが、現在、MPIさんと3HによるDCTチームの編成・検討も始まっていますので、その行く先の展開が楽しみです。

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