米国で行われたオララツマブ(商品名Lartruvo)の第1b/2相試験(NCT01185964)で、オララツマブとドキソルビシン(商品名アドリアシン)の併用療法はアドリアシン単剤群と比べ無増悪生存(PFS)期間、および全生存期間(OS)ともに有意に延長した。米国Memorial Sloan KetteringがんセンターのWilliam D Tap氏らが最終結果を2016年6月9日のLancetオンライン(2016年7月30日Lancet誌388巻488ページ)で発表した。
なお、血小板由来成長因子受容体アルファ(PDGFRα)を標的とするモノクローナル抗体オララツマブ(商品名Lartruvo)は2016年10月、米国食品医薬品局(FDA)により軟部組織肉腫の適応で迅速承認された。
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第2相試験最終解析で主要評価項目を達成
2010年10月6日から2013年1月14日、米国の16施設において、進行、または転移軟部組織肉腫患者133人が第2相試験に登録された。1サイクル21日として、オララツマブは15mg/kgを1日目と8日目に、アドリアシンは75mg/m2を1日目に静注し、最長8サイクル反復した。
その結果、オララツマブ×アドリアシン併用群に66人、アドリアシン単剤群に67人が登録され、それぞれ64人、65人に少なくとも1回投与された。主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間のハザード比(HR)は試験者評価と第三者評価で近似し(各HR=0.672、HR=0.67)、ドキソルビシン単剤群と比べオララツマブ×アドリアシン併用群は増悪・死亡リスクが33%低下した。
併用群のアドリアシン累積投与量は多いも重篤毒性の増大なくOS延長
オララツマブ×アドリアシン併用群におけるアドリアシンの投与回数中央値は7回(累積投与量487.6mg/m2)、オララツマブの投与回数中央値は16.5回、アドリアシン単剤群の投与回数中央値は4回(累積投与量299.6mg/m2)であった。8サイクルの治療を完了した患者は、オララツマブ×アドリアシン併用群(31/64人)の方がアドリアシン単剤群(17/64人)より多かった。
全生存期間(OS)中央値は、オララツマブ×アドリアシン併用群(26.5カ月)がアドリアシン単剤群(14.7カ月)と比べ11.8カ月延長し、死亡リスクは54%低下した(HR=0.46)。オララツマブ×アドリアシン併用群のOSはアドリアシン単剤群より80%延長したことになり、PFS期間の延長(61%)よりベネフィットが大きいことが示された。また、腫瘍のタイプや前治療の数、年齢、性別、罹病期間など、あらゆる因子別の解析でも、オララツマブ×アドリアシン併用群のOS中央値は一貫してアドリアシン単剤群より延長した。
オララツマブ×アドリアシン併用群の奏効率は試験者評価、第三者評価ともに18.2%、アドリアシン単剤群はそれぞれ11.9%、7.5%であった。
グレード3以上の治療関連有害事象、およびグレード3以上の重篤な有害事象は、オララツマブ×アドリアシン併用群の方がアドリアシン単剤群より多く発現し、グレード3以上の疲労、好中球減少症の発現率もオララツマブ×アドリアシン併用群(各9%、53%)がアドリアシン単剤群(各3%、32%)より高かったが、発熱性好中球減少症は両群間に差はなかった(各13%、14%)。
治療中止の理由は主に病勢進行(PD)で、アドリアシンの中止理由となった主な有害事象は心駆出率低下(オララツマブ×アドリアシン併用群3/64人、アドリアシン単剤群4/64人)、オララツマブの中止理由は主に静注関連反応(2/64人)であった。
オララツマブ×アドリアシン併用群の53%(34/64人)は同併用療法完了後、オララツマブの単剤療法に移行し、中央値で4.5サイクルを継続した。アドリアシン単剤群では、病勢進行した46%(30/65人)がオララツマブ単剤療法に切り替え、中央値で4サイクルを実施した。
なお、日本も参加した「進行又は転移性軟部組織肉腫を有する患者においてolaratumab 及びドキソルビシンの併用投与とプラセボ及びドキソルビシンの併用投与を比較する無作為化二重盲検プラセボ対照第III相臨床試験(NCT02451943、JapicCTI-153045)」は登録が終了しており、結果が待たれる。
記事:川又 総江