7月4~5日、Best of ASCO2015 in Japan開催されました。Best of ASCOとは米国腫瘍学会(ASCO)2015年次総会における重要なトピックスをレビュー・検討を行う日本臨床腫瘍学会が主催するプログラムです。
うち、国立がん研究センター東病院の乳腺・腫瘍内科の松原伸晃氏により、「根治術後にPSA上昇が認められた方への救済放射線治療に抗アンドロゲン薬を追加する第3相臨床試験」に関するレビューが行われました。
前立腺がんにおいて、根治術を行っても1/3の患者さんが前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSAが上昇が認めれます。そういった患者さんにはサルベージ(救済)放射線治療を行いますが、本試験はそれにホルモン療法の一種である抗アンドロゲン薬(ゾラデックスなど)を2回使用した時の効果を確認する試験となります。
救済放射線治療単独(放射線単独群)の方は373人、救済放射線治療に抗アンドロゲン薬(+抗アンドロゲン群)を追加した方は369人となりました。
ポイントは以下の通り。
1.5年間腫瘍が進行しなかった割合:放射線治療単独群62.1% vs +抗アンドロゲン群79.8%。統計学的にも証明(P<0.0001)
2.5年間の生存率:放射線治療単独群96.2% vs +抗アンドロゲン群94.8%。統計学的に変わりはない(P=0.185)
3.副作用の発現は両群で大きく差がなかった。
上記より、救済放射線治療に抗アンドロゲン薬を加えたときの生存に寄与するかは、更に長い期間観察しなければ結論は出ないと言えます。
北原医師は以下のように述べています。
・前立腺全摘出後のPSA再発に対して救済放射線治療のみが標準治療である
・若年、PSAが増加するまでの短い患者では、救済放射線治療にホルモン療法を考慮することは可能である。
【ASCO2015での発表について】
仏Centre Léon Bérard (レオンベラールセンター)のChristian Carrie氏の発表演題
Abstract(ASCO2015:英語)
【その他参考】
ASCO POST Christian Carrie氏へのインタビュー(動画:英語)
Research gate(スライド:英語)
【前立腺がんに関する基礎知識いついて】
コチラ(オンコロサイト内)
もっと知ってほしい前立腺がんのこと(キャンサーネットジャパン)
*本記事では、ホルモン療法の具体的アプローチについては言及していません。
記事:可知 健太