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世界5大医学誌より 薬剤卸価格と効果の関係

ここ最近、効果が期待できる薬剤が出現する一方、高騰する薬剤価格について議論されることが多くなってきました。
米国では年間のがんに対する薬剤費用が10万ドルを超えており、自己破産のケースも増えてきています。

一方、それに見合う効果があると考えてもよいのか?

世界5大医学誌である米国医師会雑誌(JAMA)オンコロジーの7月版では、2009年1月1日から2013年12月31日までの5年間にFDAで承認された51種類の抗がん剤の卸売価格の中央値を確認し、その薬剤の新規性やFDA承認理由などのケースに分けて分析しました。

ポイントはコチラ
1.新規性の薬剤(ファーストインクラス)は116,100ドル、2番手以降(ネクストインクラス)の薬剤は119,765ドル、と価格に新規性は関与していなかった。
2.承認理由が腫瘍縮小効果の場合は137,952ドル、生存期間の場合は112,370ドル、がん進行を抑える期間の場合は102,677ドルであった。
⇒腫瘍縮小効果がある薬剤がその他の薬剤よりも価格が高くなることが統計学的にも証明された。
3.生存期間やがん進行を抑える期間の長さは相関性の傾向にあった。

上記より、生存期間などを長くするよりも腫瘍縮小がどれだけ認められるかで薬剤の価格が決まることが示唆されます。

Five Years of Cancer Drug Approvals: Innovation, Efficacy, and Costs(JAMA Oncol. 2015;1(4):539-540. doi:10.1001/jamaoncol.2015.0373)

【オンコロスタッフコメント】
上記は若干意外でした。現在、腫瘍縮小効果よりも生存期間の方に重きを置いていると聞いており、生存期間まで評価するとなると調査期間が長くなりコストがかさみ、結果として薬剤価格が高くなると思っていましたが、上記の結果では異なりますね。なお、米国は国民保険がありませんし、高額医療制度もありません。かかった治療費は民間保険に入っていない限り、支払うのも大変です。
日本も個人ベースではどんなに払っても高額医療制度で税金が守ってくれますが、あまりにも高い薬価の薬剤を皆が使用するようになると、国の財政が厳しくなっていきます。故に、今後、医療とお金はとても大切なテーマと言えると思います。

記事:可知 健太

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