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腎盂・尿管がんの化学療法(抗がん剤治療)

目次

化学(薬物)療法について

腎盂・尿管がんでは、手術で腎臓~尿管を切除することが主な治療方法ですが、手術によって根治ができる可能性が高いのは、腎盂・尿管がんがほかの臓器やリンパ節に転移していない場合に限られます。診断時に、ほかの臓器やリンパ節にがんが転移していることが判明した場合には、手術ではなく化学療法抗がん剤治療)を行うことになります。

腎盂・尿管がんの化学療法としては、以前はMVAC療法が行われていましたが、近年はGC療法という抗がん剤治療が標準的に行われます。

MVAC療法
MVAC療法は1985年に報告され、それ以来、腎盂・尿管がんに対する標準的な化学療法として行われてきました。MVAC療法では、メトトレキサート、ビンブラスチン硫酸塩、アドリアマイシンシスプラチンの4種類の薬剤を用います。4種類の薬剤を用いることから、副作用が強く、患者さんにとっては、とても負担の大きい治療でした。

GC療法
GC療法は2000年に報告された腎盂・尿管がんの抗がん剤療法です。GC療法では、ゲムシタビン塩酸塩とシスプラチンという2種類の薬剤を用います。MVAC療法と比較した臨床試験において、治療効果としては同等でありつつも、GC療法の方が副作用は少ないという結果が得られたことから、現在ではGC療法が尿路上皮がん(腎盂がん・尿管がん・膀胱がんにおいて代表的な組織型)に対する標準的な化学療法となっています。

手術と組み合わせて行う場合

腎盂・尿管がんでは、化学療法を手術と組み合わせて行うこともあります。具体的には、術前化学療法と術後化学療法という2つの考え方があります。

術前化学療法としては、1コース 3週間程度のGC療法を、手術の前に2-4コース行い、その後に手術にのぞむというものです。これは、手術に先立ってがんを縮めておくことで、よりとりきれる確率を上げることを目指して行います。

一方、術後化学療法というのは、手術でとって詳しい病理診断が出た後に、がんが外側まで及んでいた場合や、悪性度が高いことが判明した際に、再発や転移がみられなくても追加で2-4コースのGC療法を行うというものです。

どちらも、本当に行うメリットがあるのかという点について明確なデータはありません。しかし、同じ組織型である膀胱がんにおいては、可能なら術前化学療法を行った方が生存率がよいとの研究結果があることから、術前化学療法としてGC療法を行うことが標準的になっています。そうした背景から、医療機関や医師によっては、また患者さんの状態によっては術前化学療法が勧められることもあります。

※術前化学療法は、効けばいいのですが、中には全く効かないということも時折あります。そうした場合に、「化学療法なんかやらないで早く手術をしておけばよかった」と後悔することもあるため、適応を慎重に考える必要があります。

※腎盂・尿管がんは、膀胱がんに比べて頻度が低い疾患です。大きな病院でも、月2-3例程度であり、症例を蓄積することが難しい面があります。そうした背景から、質の高いデータを出すのが難しいのです。

腎盂・尿管内注入療法について

いわゆる全身化学療法とは異なる概念ですが、転移が無い場合において、Cisとよばれるがんに対して、腎盂~尿管に薬剤を注入して治療を行うことがあります。具体的には、ウシ結核菌の毒性を弱めたBCGという薬品を利用します。BCGと聞いて、スタンプ型の予防接種を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、BCGはまさにその結核の予防接種としても用いられている薬品です。

結核の予防接種としても用いられるBCGはなぜ腎盂・尿管がんの治療に効果を発揮するのでしょうか。BCGを腎盂や尿管内に注入すると、そこで炎症が起こります。炎症が起こるとその炎症を収めようとして体の免疫反応が活性化します。

免疫機能を司る細胞の中でも、異物を認識して排除する働きをしているのがNK(ナチュラルキラー)細胞や、細胞障害性T細胞(キラーT細胞)といった免疫細胞が活性化することでがん細胞を死滅させる効果があると考えられているのです。

ただし、そもそもBCG注入療法は、膀胱上皮内がんの治療として確立され、広く行われている治療です。腎盂~尿管がんに対する治療としては、(症例数が少なく質の高い統計データが出せないために)どこまで効果があるのか明確でないという点には留意する必要があります。

また、膀胱がんと比べると内視鏡的検査の難易度が高いため、BCG注入療法の効果があったかどうかを確認する際にも、手間とコストがかかります。

また、BCG注入療法は、弱毒化しているといっても生きている結核菌を利用しています。したがって、BCG注入療法で結核そのものに感染してしまうリスクがあります。

ライター症候群という尿路感染症に続いて関節炎や結膜炎、虹彩炎などを併発する病気になったり、全身性結核になったりすることもあるため、治療を受けている方は高い熱が続いたり呼吸器症状があるような場合には注意が必要です。(※治療当日に38℃程度の熱が出ることはよくあります)

化学(薬物)療法の副作用

抗がん剤は、おもにがん細胞の細胞分裂を妨げることでがん細胞を殺し、がんを抑制する効果を発揮します。しかし、抗がん剤は都合よくがん細胞のみに効果を発揮するわけではありません。

がん化していない普通の細胞にも、細胞増殖が起こっている細胞には影響が及んでしまいます。特に、髪の毛をつくる細胞がある毛根、赤血球や白血球などをつくるもととなる細胞がある骨髄、消化管の粘膜といった組織や臓器で抗がん剤の副作用が出やすいことが分かっています。

具体的には、白血球などの免疫を司る細胞が減少することによって感染症にかかりやすくなる、血小板が減少して出血しやすくなったり血が止まりにくくなったりする、赤血球が減少することによって貧血症状が出やすくなるといった状態である骨髄抑制をはじめとして、肝機能障害間質性肺炎、腎機能障害、聴力障害、食欲低下、嘔気嘔吐など、全身のさまざまな臓器や組織に障害出ることがあります。

しかし、制吐剤をはじめとした、副作用をコントロールするための薬の発達により、一般的なイメージよりはかなり楽に治療を行うことができるようになってきています。

GC療法が合わない場合

患者さんの状態によっては、GC療法を行えない場合があります。たとえば、非常に高齢であったり、合併症があったりして全身状態が著しく悪い場合です。

また、腎機能が悪い場合にはGC療法の「C」を意味するシスプラチンが使用できないことがあります。さらに、間質性肺炎を起こした既往があると、GC療法の「G」を意味するジェムザールの使用が憚られるケースもあります。

このように、患者さんの状態によって抗がん剤の使用がためらわれる場合には、たとえばシスプラチンをカルボプラチンという同系統の薬に切り替えて抗がん剤治療を行うといったことが行われます。

GC療法が効かない場合

腎盂がん・尿管がんに対してGC療法を行った場合、(少なくとも最初は)7割程度の方には効果が認められます。しかし、しばらく続けていると効かなくなってくる場合や、中には初めから全く効果が見られない方もいます。

そうした場合の有効なセカンドライン(2次療法)は、現状ではまだ確立されていません。少数例の報告で、ある程度の効果を認めたとする化学療法はあっても、劇的な効果がみられるものではなく、医師によっては「GC療法が効かなければ延命を目指した治療は諦める」という立場をとっていることもあります。

(最近、免疫療法が有望な治療選択肢になりうるとの報告も出てきていますが、まだ標準治療にはなっていません。)

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