2017年12月7日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にてホルモン避妊療法と乳がんのリスクについて検証したデンマークでの全国規模前向きコーホート試験の結果がCopenhagen大学・Lina S. Morch氏らにより公表された。
本研究は、がん、静脈血栓塞栓症または不妊治療歴のない15から49歳の女性患者(N=1,800,000人)を対象にホルモン避妊療法と浸潤性乳がんのリスクについて検証した前向きコーホート研究である。なお本研究の平均追跡調査期間中央値は10.9年、この期間内に乳がんを発症した患者は11,517人いた。
本研究の結果、ホルモン避妊療法を現在使用している、または最近までホルモン避妊療法を使用していた患者は、ホルモン避妊療法の使用歴のない患者に比べて乳がん発症の相対リスクは1.20(95%信頼区間:1.14-1.26)であった。
また、ホルモン避妊療法の使用期間別の相対リスクは使用期間1年未満は1.09(95%信頼区間:0.96-1.23)に対して10年を超えると1.38(95%信頼区間:1.26-1.51)、ホルモン避妊療法の使用期間が長いことで乳がん発症のリスクは上昇した(P=0.002)。
そして、ホルモン避妊療法の使用期間が5年を超えてる場合、たとえホルモン避妊療法を中止したとしてもホルモン避妊療法の使用歴のない患者に比べて乳がん発症のリスクは高いことが示された。
ホルモン避妊療法の種類別での乳がん発症のリスクは、エストロゲン-プロゲスチン混合型経口避妊薬を現在使用している、または最近まで使用していた患者の推定リスクは1.0-1.6であった。また、プロゲスチン単独経口避妊薬を現在使用している、または最近まで使用していた患者はホルモン避妊療法の使用歴のない患者に比べて乳がん発症の相対リスクは1.21(95%信頼区間:1.11-1.33)であった。
以上の研究結果より、ホルモン避妊療法の使用歴のない患者はホルモン避妊療法を現在実施使用している、または過去に使用していた患者に比べて乳がん発症のリスクは低率であることが示された。しかし、絶対的リスクの増加は小さいため、避妊効果とそれ以外の利益である卵巣がん、子宮体がんの発症リスク低減などを考慮するべきであるとLina S. Morch氏らは結論づけている。