2018年1月1日、医学誌『Journal of Clinical Oncology(JCO)』にて病院側の都合などにより退院することになった進行性がん患者を対象に、退院後の新しい転院先と予後に関する因子の関係性について検証した試験の結果がHarvard Catalyst Medicine・Daniel E. Lage氏らの研究により明らかになった。
本試験は、2014年9月から2016年3月の間に計画外入院を経験した進行性がん患者(N=932人)に対してエドモントン症状評価システムにより身体的症状、Patient Health Questionnaire-4により精神的苦痛を評価し、主要評価項目である退院後の新しい転院先(在宅、ホスピス、そして急性期後の治療を引き継ぐ(Post Acute Care)病院)により評価結果に違いが出るかどうかを検証した前向き試験である。
本試験に登録された患者の退院後の新しい入院先の内訳は、在宅が77.9%(N=726人)、ホスピスが9.4%(N=88人)、急性期後の治療を引き継ぐ(Post Acute Care)病院が12.7%(N=118人)である。
本試験の結果、ホスピスと急性期後の治療を引き継ぐ(Post Acute Care)病院に転院した患者は呼吸困難、便秘、食欲低下、疲労、うつ病、そして不安を示す割合が高率であることを示した。
また、ロジスティック回帰解析によればホスピスと急性期後の治療を引き継ぐ(Post Acute Care)病院に転院した患者は在宅で治療を受ける患者に比べて高齢であり(オッズ比:1.03,95%信頼区間:1.02-1.05,P < .001)、一人暮らしをしており(オッズ比:1.95,95%信頼区間:1.25-3.02,P < .001)、入院期間が長く(オッズ比:1.15,95%信頼区間:1.11-1.20,P < .001)、身体的状態が悪く(オッズ比:1.02,95%信頼区間:1.003-1.032,P < .017)、精神的状態が悪かった(オッズ比:1.13,95%信頼区間:1.01-1.25,P < .027)。
また、ホスピスに転院した患者は急性期後の治療を引き継ぐ(Post Acute Care)病院に転院した患者に比べて緩和ケアの相談を受ける機会が多く(オッズ比:4.44,95%信頼区間:2.12-9.29,P < .011)、入院期間が短かった(オッズ比:0.84,95%信頼区間:0.77-0.91,P < .001)。そして、急性期後の治療を引き継ぐ(Post Acute Care)病院に転院した患者は在宅で治療を受ける患者に比べて生存率が低かった(ハザード比:1.53,95%信頼区間:1.22-1.93,P < .001)。
以上の前向き試験の結果より、ホスピスと急性期後の治療を引き継ぐ(Post Acute Care)病院に転院した進行性がん患者は、家庭に退院した患者に比べて身体的状態、心理的状態が伴に悪く、そして生存率も低下することが示された。