2018年1月26日、医学誌『Journal of Clinical Oncology(JCO)』にてアンドロゲン受容体(AR)陽性局所進行性または転移性トリプルネガティブ乳がん患者に対してアンドロゲン受容体阻害薬であるエンザルタミド(商品名イクスタンジ;以下イクスタンジ)の有効性を検証した第II相のMDV3100-11試験(NCT01889238)の結果がMemorial Sloan-Kettering Cancer Center・Tiffany A. Traina氏らにより公表された。
本試験は、免疫組織化学(IHC)によりアンドロゲン受容体(AR)>0%を陽性として定義したトリプルネガティブ局所進行性または転移性乳がん患者に対して1日1回イクスタンジ160mgを病勢進行するまで投与し、主要評価項目として16週時点の臨床的有用性(CBR:完全奏効、部分奏効、または病勢安定状態が16週間継続する)、副次評価項目として24週時点の臨床的有用性(CBR)、無増悪生存期間(PFS)、安全性などを検証したシングルアームオープンラベルの第II相試験である、
なお、本試験に登録された患者の前治療歴中央値は1レジメン(0-7)、84%の患者で進行期早期の段階で術前化学療法を受けている。前治療歴に含まれる治療としては、タキサン系抗がん剤50%、カペシタビン(商品名ゼローダ)44%、プラチナ系抗がん剤42%、エリブリン(商品名ハラヴェン)19%であり、イクスタンジが初期治療であった患者は19%(N=22人)、二次治療であった患者は36%(N=43人)であった。
以上の背景を有する患者に対してイクスタンジを投与した結果、イクスタンジは主要評価項目である16週時点の臨床的有用性(CBR)を達成した。ITT解析(N=118人)による16週時点の臨床的有用性(CBR)は25%(95%信頼区間:17%-33%)、効果判定可能な患者群(N=78人)における16週時点の臨床的有用性(CBR)は33%(95%信頼区間:23%-45%)を示した。
また、イクスタンジは副次評価項目である24週時点の臨床的有用性(CBR)も達成している。効果判定可能な患者群(N=22人)における16週時点の臨床的有用性(CBR)は28%(95%信頼区間:19%-39%)を示した。その他副次評価項目であるITT解析により無増悪生存期間(PFS)中央値は2.9ヶ月(95%信頼区間:1.9-3.7ヶ月)、効果判定可能な患者群における無増悪生存期間(PFS)中央値は3.3ヶ月(95%信頼区間:1.9-4.1ヶ月)。ITT解析により全生存期間(OS)中央値は12.7ヶ月(95%信頼区間:8.5-未到達)、効果判定可能な患者群における全生存期間(OS)中央値は17.6ヶ月(95%信頼区間:11.6-未到達)。
一方の安全性は、10%以上の患者において発症した治療関連有害事象(TRAE)は下記の通りである。疲労36%、吐気25%、食欲減退13%、下痢10%、ホットフラッシュ10%であった。また、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)を発症した患者は10%であり、その内訳としては疲労3%、便秘1%、背部痛1%、呼吸困難1%であった。なお、治療関連有害事象(TRAE)のために治療継続が困難になる患者は8人であった。
以上のMDV3100-11試験の結果より、Tiffany A. Traina氏らは以下のように結論を述べている。”アンドロゲン受容体(AR)陽性局所進行性または転移性トリプルネガティブ乳がん患者に対するイクスタンジ単剤療法の有効性が本試験より証明されました。また、安全性に関しても既存のイクスタンジの安全性プロファイルと合致しており、未知の副作用が発現することはありませんでした。”