2018年1月24日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて乳がん患者が手術療法の意思決定をするためのサポートツールである「iCanDecide」の有効性を検証した試験の結果がUniversity of Michigan・Sarah T. Hawley氏らにより公表された。
「iCanDecide」とは、乳がん患者がその治療方法を決定するためのインターネット上のサポートツールであり、手術療法、化学療法などを選択する科学的根拠になる知識を患者向けに提供する。その知識とは、例えば乳がんの生存率、局所再発リスク、遺伝子検査の必要性、術後の回復期などである。
本試験では、ステージIまたはII期乳がんと新規に診断された患者(N=537人)に対してステージ、年齢、人種など患者の個別因子に基いて「iCanDecide」により知識をインタラクティブに提供する介入群(N=245人)、「iCanDecide」により単なる知識提供をするコントロール群(N=251人)に分けて、主要評価項目として患者アンケートに基いて判定した局所治療を選択する時の意思決定の質の高さを比較検証した無作為化試験である。
なお、意思決定の質とは、治療を選択する時にリスクとベネフィットの両面を十分に理解した知識に基づく意思決定であるか、その患者における高い治療成績を選択できているかの両側面を5項目の知識尺度に基いて定義しており、「iCanDecide」を登録したベースライン時点より、登録4週間後の初回フォローアップ時点での差を検証している。
本試験の結果、主要評価項目である局所治療を選択する時に質の高い意思決定をした患者比率は介入群49.6%に対してコントロール群33.3%、介入群で統計学的有意に多く(P = 0.0004)そのオッズ比は2.00(95%信頼区間:1.37-2.92,P =0.0004)を示した。
また、高い知識レベルに基いて治療の意思決定ができた患者の比率は介入群60.7%に対してコントロール群42.5%、介入群で統計学的有意に多く(P < 0.001)そのオッズ比は2.19(95%信頼区間:1.51-3.18,P < 0.001)を示した。一方、その患者にとって最適な治療の選択率は介入群78.6%に対してコントロール群81.4%、両群間に統計学的有意な差はなかった(P = 0.45)。
なお、本試験に参加した90%の患者が「iCanDecide」の使用は容易であると回答しており、60%の患者は意思決定のために非常に役に立ったと回答しており、介入群の85.1%の患者、コントロール群の79.4%の患者が知人に「iCanDecide」を推奨すると回答していた。
以上の結果より、Sarah T. Hawley氏らは以下のように結論を述べている”患者の個別化因子に基いてインタラクティブに知識を提供することで早期乳がん患者に対して質の高い治療の意思決定をサポートできることが本試験により証明されました。また、「iCanDecide」のようなインターネットツールは患者さんにとっても使いやすく、非常に実用的です。”