2018年3月2日、国立がん研究センター東病院は、進行性または移転性固形がん患者さんを対象とした、腫瘍溶解ウイルス製剤であるテロメライシン(R)(OBP-301)と、抗PD-1抗体薬であるキイトルーダ(ペムブロリズマブ)の併用療法に関する医師主導治験(第I相試験)を開始したと発表した。
腫瘍溶解ウイルス製剤テロメライシン(R)は、風邪ウイルスの一つである5型ヒトアデノウイルスに、細胞ががん化した時に活性化する酵素の遺伝子の一部を遺伝子改変によって組み込んだウイルス製剤となる。
テロメライシンが正常な細胞に感染してもほとんど増殖しないが、がん細胞内ではテロメライシンが増殖し、がん細胞を破壊する。更には、テロメライシンの腫瘍溶解作用がCTL活性(細胞傷害性T細胞活性)を誘導することによる腫瘍免疫増強効果が期待される。ゆえに、免疫チェックポイント阻害薬であるキイトルーダを併用することにより、更なる抗腫瘍効果の向上が期待される。
目次
テロメライシン(R)について
風邪ウイルスの一種であるアデノウイルスに、多くのがん細胞で活性化しているテロメラーゼ酵素を遺伝子改変により組込み、がん細胞内のみで特異的に増殖しがん細胞を破壊するようにデザインされた腫瘍融解アデノウイルス製剤。テロメライシン(R)は正常細胞にも感染するが、テロメラーゼ活性がないためにウイルスは増殖せず、正常組織での副作用は少ないと考えられている。2006年アメリカで実施した進行性固形がん患者を対象として行った単剤投与による臨床試験において、投与部位での腫瘍縮小効果などの有効性が認められた。
詳しい臨床試験情報
UMIN-CTRより抜粋(UMIN000026961)
試験名
進行性又は転移性固形がん患者を対象としたOBP-301とPembrolizumab併用療法の第I相臨床試験
目的
進行性又は転移性固形がん患者を対象として、Phase 1a期においてOBP-301とPembrolizumabとの併用療法の忍容性及び安全性を評価し、併用時のOBP-301の推奨用量を決定する。さらに、Phase 1b期において、症例を追加し、OBP-301とPembrolizumab併用療法の安全性及び有効性を探索的に評価する。
適格基準(抜粋)
・同意取得時の年齢が18 歳以上である。
・ECOG performance statusが0又は1 である。
・進行性又は転移性の固形がんであることが、組織学的又は細胞学的に診断されており、局注可能な病変を有する。かつ、当該がん種に対する標準治療に不応、不耐もしくは不適と治験担当医師が判断した。
・RECIST ver 1.1 に基づく評価可能病変を有する。 (※評価可能病変の定義:標的病変もしくは非標的病変)
・登録前7日以内に測定された以下の臨床検査値により、十分な臓器機能を有する(登録日の7日前の同じ曜日の検査は許容する)。
a. 好中球数≧1,500 /mm3
b. 血小板数≧100,000 /mm3
c. ヘモグロビン値≧9.0 g/dL
d. 総血清ビリルビン≦2.0 mg/dL
e. AST(SGOT)及びALT(SGPT)≦ 100 IU/L (肝転移がある場合≦200 IU/L)
f. 血清クレアチニン≦1.5 mg/dL又は血清クレアチニンが1.5 mg/dLを超える場合は、クレアチニン・クリアランスが60 ml/min以上(Cockroft-Gault式)
除外基準(抜粋)
・過去2年以内に全身性の治療を要した活動性の自己免疫疾患を有する。ただし、補充療法は、全身性の治療とはみなさない。
・免疫不全症と診断された、又は、OBP-301初回投与前7日以内に全身性のステロイド療法や他の免疫抑制療法による治療を受けた。ただし、生理的用量範囲内のコルチコステロイドについては、治験調整委員会との協議の上、許容される場合がある。
・活動性の中枢神経系への転移、又は癌性髄膜炎を有する。脳転移を伴う患者は、少なくともOBP-301初回投与前4週間は脳転移が安定しており、かつ、神経症状がGrade 1以下まで回復している場合、適格としてよい。癌性髄膜炎を有する場合は例外なく除外する。
・進行性であり、かつ加療を必要とする重複がんを有する。ただし、根治的治療を受けた皮膚基底細胞癌又は皮膚扁平上皮癌、及び、子宮頸部上皮内癌は例外とする。
・HIV の既往を有する。 活動性のB 型肝炎又はC 型肝炎を有する。
・活動性の非感染性肺臓炎の既往又は徴候を有する。
目標参加者数
28名
治験実施医療機関
岡山大学病院、国立がん研究センター東病院