・化学療法、分子標的治療薬など2レジメン治療後に病勢進行した進行性非小細胞肺がんの標準治療は確立していない
・進行性非小細胞肺がん患者に対する三次治療としてFruquintinibはプラセボよりも無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に延長した
・抗VEGF薬であるFruquintinibの主な治療関連有害事象(TRAE)は高血圧、手足症候群、蛋白尿である
2018年3月12日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて2レジメンの治療歴のある進行性非小細胞肺がん患者に対する抗VEGF薬であるFruquintinib(HMPL-013)単剤療法のプラセボに対する有効性を検証した第II相試験(NCT02590965)の結果がShanghai Lung Cancer Center・Shun Lu氏らにより公表された。
本試験は、2レジメンの標準化学療法後に病勢進行した非小細胞肺がん患者(N=91人)に対して4週間を1サイクルとして1日1回Fruquintinib(HMPL-013)5mgを3週間投与し1週間休薬する群(N=61人)、又はプラセボを投与する群(N=30人)に2:1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として治験医師判定による無増悪生存期間(PFS)、客観的奏効率(ORR)、病勢コントロール率(DCR)、全生存期間(OS)、安全性を比較検証した国際多施設共同二重盲検下の第II相試験である。なお、両群とも最善の支持療法(BSC)を併用して実施している。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値はFruquintinib群54.3歳、プラセボ群55.4歳。性別はFruquintinib群で男性55.7%(N=34人)、女性44.3%(N=27人)、プラセボ群で男性40.0%(N=12人)、女性60.0%(N=18人)。ECOG Performance StatusはFruquintinib群でスコア0が6.6%(N=4人)、スコア1が93.4%(N=57人)、プラセボ群でスコア0が3.3%(N=1人)、スコア1が96.7%(N=29人)。
転移部位はFruquintinib群で1箇所23.0%(N=14人)、複数箇所77.0%(N=47人)、プラセボ群で1箇所13.3%(N=4人)、複数箇所83.3%(N=25人)。脳転移の有無はFruquintinib群で脳転移あり11.5%(N=7人)、脳転移なし88.5%(N=54人)、プラセボ群で脳転移あり13.3%(N=4人)、脳転移なし86.7%(N=26人)。EGFR遺伝子ステータスはFruquintinib群で変異型49.2%(N=30人)、野生型44.3%(N=27人)、不明6.6%(N=4人)、プラセボ群で変異型50.0%(N=15人)、野生型43.3%(N=13人)、不明6.7%(N=2人)。
前治療の種類はFruquintinib群でペメトレキセド(商品名アリムタ;以下アリムタ)+プラチナ系抗がん剤52.5%(N=32人)、ゲムシタビン(商品名ジェムザール;以下ジェムザール)+プラチナ系抗がん剤47.5%(N=29人)、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)37.7%(N=23人)、パクリタキセル+プラチナ系抗がん剤32.8%(N=20人)、パクリタキセル31.1%(N=19人)、アリムタ14.8%(N=9人)、ジェムザール1.6%(N=1人)、その他21.3%(N=13人)。
プラセボ群でアリムタ+プラチナ系抗がん剤46.7%(N=14人)、EGFRチロシンキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)46.7%(N=14人)、ジェムザール+プラチナ系抗がん剤43.3%(N=13人)、パクリタキセル40.0%(N=12人)、パクリタキセル+プラチナ系抗がん剤33.3%(N=10人)、アリムタ10.0%(N=3人)、ジェムザール3.3%(N=1人)、その他23.3%(N=7人)。
上記背景を有する患者に対してFruquintinibまたはプラセボを投与した結果は下記の通りである。主要評価項目である盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)中央値はFruquintinib群3.8ヶ月(95%信頼区間:2.8-4.6ヶ月)に対してプラセボ群1.1ヶ月(95%信頼区間:1.0-1.9ヶ月)、Fruquintinib群で病勢進行または死亡のリスクが66%統計学的有意に減少(ハザードリスク比:0.34,95%信頼区間:0.20-0.57,P<0,001)した。
また、副次評価項目である治験医師判定による無増悪生存期間(PFS)も盲検下独立中央判定(BICR)による無増悪生存期間(PFS)と同様の結果であった。その他副次評価項目である客観的奏効率(ORR)はFruquintinib群16.4%(95%信頼区間:8.2%-27.1%)に対してプラセボ群0%(95%信頼区間:0%-10.0%)、Fruquintinib群で客観的奏効率(ORR)が16.39%(95%信頼区間:7.10%-25.68%,P=0.021)高率であった。
病勢コントロール率(DCR)はFruquintinib群70.5%(95%信頼区間:57.6%-80.8%)に対してプラセボ群16.7%(95%信頼区間:6.8%-34.3%)、Fruquintinib群で病勢コントロール率(DCR)が53.83%(95%信頼区間:36.25%-71.40%,P<0.001)高率であった。
全生存期間(OS)中央値はFruquintinib群7.7ヶ月に対してプラセボ群9.7ヶ月(ハザードリスク比:0.70,95%信頼区間:0.43-1.15,P=0.152)、3ヶ月全生存率(OS)はFruquintinib群90・2%に対してプラセボ群73.3%、6ヶ月全生存率(OS)はFruquintinib群67.2%に対してプラセボ群58.8%であった。
一方の安全性としてグレード1以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はFruquintinib群100%(N=61人)に対してプラセボ群90.0%(N=27人)、Fruquintinib群で高率であった。また、グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率もFruquintinib群41.0%(N=25人)に対してプラセボ群20.0%(N=6人)、Fruquintinib群で高率であった。
Fruquintinib群で最も一般的に確認されたグレード3または4の治療関連有害事象(TRAE)はそれぞれ下記の通りである。高血圧8.2%(N=5人)、手足症候群4.9%(N=3人)、蛋白尿4.9%(N=3人)、倦怠感3.3%(N=2人)、下痢1.6%(N=1人)、口内炎1.6%(N=1人)、咳1.6%(N=1人)、体重減少1.6%(N=1人)、口腔粘膜疾患1.6%(N=1人)。
なお、減量した患者割合はFruquintinib群21.3%に対してプラセボ群16.4%、治療関連有害事象(TRAE)のために治療中止した患者割合はFruquintinib群9.8%(N=6人)に対してプラセボ群3.3%(N=1人)であった。
以上の第II相試験の結果よりShun Lu氏らは以下のように結論を述べている。”進行性非小細胞肺がん患者さんに対する三次/四次治療としての抗VEGF薬Fruquintinib(HMPL-013)単剤療法はプラセボよりも無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善し、忍容性もあることが本試験より示されました。”