・本試験は1回以上の化学療法の治療歴があるまたはシスプラチン不適応の転移性尿路上皮がん患者に対して抗体薬物複合体(ADC)であるEnfortumab vedotin単剤療法の安全性、有効性を検証した第I相試験である
・本試験の主要評価項目である忍容性は、Enfortumab vedotin投与により発症した主な治療関連有害事象(TRAE)は疲労、貧血、低ナトリウム血症、尿路感染症、高血糖症であった
・本試験の副次評価項目である全奏効率(ORR)は41%を示し、また免疫チェックポイント阻害薬治療歴がある患者に対しても40%の奏効が確認された
2018年6月1日より5日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2018)にて、1回以上の化学療法の治療歴があるまたはシスプラチン不適応の転移性尿路上皮がん患者に対する抗体薬物複合体(ADC)であるEnfortumab vedotin単剤療法の有効性を検証した第I相のEV-101試験(NCT02091999)の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer Center・Jonathan E. Rosenberg氏らにより公表された。
本試験は、1回以上の化学療法の治療歴があるまたはシスプラチン不適応の転移性尿路上皮がん患者(N=112人)に対して28日を1サイクルとして1日目、8日目、15日目にEnfortumab vedotin単剤療法を投与し、主要評価項目として忍容性、副次評価項目として全奏効率(ORR)などを検証した第I相試験である。
本試験の結果、主要評価項目である忍容性は下記の通りである。Enfortumab vedotinにより発症した治療関連有害事象(TRAE)は全グレードでは疲労(54%)であった。また、グレード3の治療関連有害事象(TRAE)は貧血(8%)、低ナトリウム血症(7%)、尿路感染症(7%)、高血糖症(6%)であった。なお、呼吸不全、尿路閉塞、糖尿病性ケトアシドーシス、多臓器不全などの治療関連有害事象(TRAE)により4人の患者が死亡している。
副次評価項目である全奏効率(ORR)は41%を示し、その奏効率(RR)の内訳は完全奏効(CR)が4人、部分奏効(PR)は41人であった。なお、抗PD-1抗体薬などの免疫チェックポイント阻害薬治療歴の有無により奏効率(RR)の解析がされており、免疫チェックポイント阻害薬治療歴がある患者(N=89人)では40%、免疫チェックポイント阻害薬治療歴がない患者(N=23人)では44%を示した。
その他評価項目として全生存期間(OS)の暫定中央値13.6か月、奏効持続期間(DOR)中央値5.75か月、無増悪生存期間(PFS)中央値5.4か月であった。
以上の第I試験の結果よりJonathan E. Rosenberg氏らは以下のように結論を述べている。”治療歴のある転移性尿路上皮がん患者に対して抗体薬物複合体(ADC)であるEnfortumab vedotin単剤療法は有望な奏効を示しました。また、抗PD-1抗体薬などの免疫チェックポイント阻害薬に対して不耐を示した患者にも奏効を示し、このような患者に対してEnfortumab vedotinは新たな治療選択肢になる可能性が示唆されました。
※enfortumab vedotinについて
enfortumab vedotinは、シアトルジェネティクス社独自の最先端のリンカーテクノロジーを用いて、抗ネクチン-4モノクローナル抗体に微小管阻害作用を持つMMAEを結合させた抗体‐薬物複合体(ADC)です。
enfortumab vedotinは、細胞接着分子であるネクチン-4 を標的とする初の、そして唯一の薬剤であり、アステラス製薬がさまざまな固形がんに発現するネクチン-4をADCの標的として同定しました。
ネクチン-4は尿路上皮がん、特に膀胱がんで高く発現します。
前臨床試験において、enfortumab vedotinはがん細胞上でネクチン-4に結合し、標的細胞内に取り込まれると細胞殺傷物質を放出することが認められています。
(アステラス製薬プレスリリースより)