・マインドフルネス認知療法(MBCT)とは瞑想、ヨガ、グループディスカッション、教訓的な指導を通じて日々の生活にもっと注意を払うよう被験者に対し教育する認知行動療法である
・本試験の主要評価項目であるベースライン時点から介入時点での不安と抑うつを評価スケール(HADS)中央値はMBCT群18.81より13.25、eMBCT群17.24より11.87、TAU群17.04より16.37へ減少し、TAU群に比べてMBCT群(P < .001)、eMBCT群(P < .001)で統計学有意に減少した
・本試験の副次評価項目である精神関連疾患の診断の改善度はTAU群16%に対してMBCT群32%、TAU群16%に対してeMBCT群29%、TAU群に比べてMBCT群、eMBCT群で改善するも統計学有意な差は確認されなかった
2018年6月28日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてがん患者における心理的ストレスを軽減するための治療法としてマインドフルネス認知療法(Mindfulness-based cognitive therapy;以下MBCT)、インターネットベースのMBCT(Internet-based Mindfulness-based cognitive therapy;以下eMBCT)、通常の心理社会的治療(Treatment as usual;以下TAU)の有効性を比較検証した無作為化試験(NCT02138513)の結果がRadboud universitair medisch centrum voor mindfulness・Félix Compen氏らにより公表された。
なお、MBCTとは瞑想、ヨガ、グループディスカッション、教訓的な指導を通じて日々の生活にもっと注意を払うよう被験者に対し教育する認知行動療法である。MBCTは近年の臨床試験でその有効性が証明されているが、参加する障壁があるため本試験ではeMBCTの有効性を検証している。
本試験は、不安と抑うつを評価スケール(Hospital Anxiety and Depression Scale;以下HADS)11以上の心理的苦痛を有するがん患者(N=245人)に対してMBCTを実施する群(N=77人)、eMBCTを実施する群(N=90人)、またはTAUを実施する群(N=78人)の3群に1対1.2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目としてHADSによる心理的苦痛の程度、副次評価項目として精神関連疾患の診断の改善度などを比較検証した多施設共同の無作為化試験である。
本試験に登録された患者背景はMBCT群、eMBCT群、TAU群それぞれ下記の通りである。年齢中央値はMBCT群52.1歳、eMBCT群52.4歳、TAU群50.4歳。性別は女性87.0%(N=67人)、85.6%(N=77人)、84.6%(N=66人)。
結婚歴のある患者は84.4%(N=65人)、84.4%(N=76人)、78.2%(N=61人)。子供のいる患者は62.3%(N=48人)、72.2%(N=65人)、71.8%(N=56人)。教育レベルは高学歴70.1%(N=54人)、62.2%(N=56人)、71.8%(N=56人)、中等度28.6%(N=22人)、37.8%(N=34人)、26.9%(N=21人)。
がんの種類は乳がん68.8%(N=53人)、58.9%(N=53人)、57.7%(N=45人)、婦人科がん2.6%(N=2人)、10.0%(N=9人)、9.0%(N=7人)、前立腺がん7.8%(N=6人)、7.8%(N=7人)、3.8%(N=3人)、大腸がん5.2%(N=4人)、4.4%(N=4人)、5.1%(N=4人)、非ホジキンリンパ腫1.3%(N=1人)、3.3%(N=3人)、9.0%(N=7人)、皮膚がん1.3%(N=1人)、3.3%(N=3人)、1.3%(N=1人)、甲状腺がん1.3%(N=1人)、1.1%(N=1人)、2.6%(N=2人)、膀胱がん1.3%(N=1人)、2.2%(N=2人)、1.3%(N=1人)、神経内分泌腫瘍1.3%(N=1人)、2.2%(N=2人)、1.3%(N=1人)。
診断からの経過年数中央値は3.9年、3.3年、3.2年。現在の治療内容は未治療55.8%(N=43人)、54.4%(N=49人)、52.6%(N=41人)、ホルモン療法28.6%(N=22人)、31.1%(N=28人)、37.2%(N=29人)、免疫療法1.3%(N=1人)、5.6%(N=5人)、3.8%(N=3人)、放射線療法6.5%(N=5人)、3.3%(N=3人)、0%、化学療法2.6%(N=2人)、1.1%(N=1人)、1.3%(N=1人)。以上のように3群間における患者背景に統計学有意な違いはなかった。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果、主要評価項目であるベースライン時点から介入時点でのHADS中央値はMBCT群18.81より13.25、eMBCT群17.24より11.87、TAU群17.04より16.37に減少し、TAU群に比べてMBCT群(P < .001)、eMBCT群(P < .001)で統計学有意に減少した。
また、副次評価項目である精神関連疾患の診断の改善度はTAU群16%に対してMBCT群32%(P = .030)、TAU群16%に対してeMBCT群29%(P = .076)、TAU群に比べてMBCT群、eMBCT群で改善するも統計学有意な差は確認されなかった。
以上の無作為化試験の結果よりFélix Compen氏らは以下のように結論を述べている。”TAUに比べてMBCT、eMBCTはがん患者の心理的ストレスを軽減するための治療法として効果的であることが本試験により証明されました。”