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転移リスクの高い非転移性の去勢抵抗性前立腺がん患者に対するアンドロゲン除去療法+darolutamide、無転移生存期間を統計学有意に改善

この記事の3つのポイント
転移リスクの高い非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者が対象の第3相試験
・アンドロゲン除去療法+darolutamide併用療法有効性安全性を比較検証
・darolutamide群はプラセボ群に対して、転移または死亡のリスクを59%統計学有意に減少

2019年2月14日、医学誌『The New England Journal of Medicine』にて転移リスクの高い非転移性の去勢抵抗性前立腺がん患者に対するアンドロゲン除去療法(ADT)+新規経口アンドロゲン受容体阻害薬であるdarolutamide併用療法の有効性、安全性を比較検証した第3相のARAMIS試験(NCT02200614)の結果がthe Institut Gustave Roussy・Karim Fizazi氏らにより公表された。

ARAMIS試験とは、転移リスクの高い非転移性の去勢抵抗性前立腺がん患者(N=1509人)に対してアンドロゲン除去療法(ADT)+1日2回darolutamide 600mg併用療法を投与する群(N=955人)、アンドロゲン除去療法(ADT)+プラセボ併用療法を投与する群(N=554人)に2対1の割合で無作為に振り分け、主要評価項目として無転移生存期間(MFS)、副次評価項目として全生存期間OS)、痛みの増悪までの期間、最初の殺細胞性化学療法開始までの期間、症候性骨関連事象(SSE)の初回発現までの期間、そして安全性など比較検証した多施設共同二重盲検プラセボ対照ランダム化の第3相試験である。

本試験が実施された背景として、非転移性の去勢抵抗性前立腺がん患者に対する初回治療後のアンドロゲン除去療法(ADT)は標準治療であるが、多くの患者は治療後に病勢進行を経験する。近年、アンドロゲン受容体阻害薬であるアパルタミド、エンザルタミドなどの承認により非転移性の去勢抵抗性前立腺がん患者の無転移生存期間(MFS)は改善したものの、治療関連有害事象(TRAE)は増加した。以上の背景より、血液脳関門への通過が低率であり、毒性が少なく非重篤である新規経口アンドロゲン受容体阻害薬であるdarolutamideの有効性、安全性が本試験により検証された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。

年齢中央値

darolutamide群=74歳(48-95歳)
プラセボ群=74歳(50-92歳)

初回診断時よりの期間中央値

darolutamide群=86.2ヶ月(2.6-337.5ヶ月)
プラセボ群=84.2ヶ月(0.5-344.7ヶ月)

ECOG Performance Status

darolutamide群=スコア0が68%(N=650人)、スコア1が32%(N=305人)
プラセボ群=スコア0が71%(N=391人)、スコア1が29%(N=163人)

血清PSA

darolutamide群=9.0ng/ml(0.3-858.3)
プラセボ群=9.7ng/ml(1.5-885.2)

PSA倍化時間中央値

darolutamide群=4.4ヶ月(0.7-11.0)
プラセボ群=4.7ヶ月(0.7-13.2)

血清テストステロン値

darolutamide群=0.6nmol/L(0.2-25.9)
プラセボ群=0.6nmol/L(0.2-7.3)

以上のように両群間における患者背景に大きな偏りはなかった。

本試験の追跡期間中央値17.9ヶ月時点における主要評価項目である無転移生存期間(MFS)中央値の結果はdarolutamide群40.4ヶ月に対してプラセボ群18.4ヶ月、darolutamide群で転移または死亡(MFS)のリスクを59%統計学有意に減少した(ハザード比:0.41,95%信頼区間:0.34-0.50,P<0.001)。なお、サブグループ解析の結果では全グループにおいてdarolutamide群で無転移生存期間(MFS)を改善していた。

副次評価項目である全生存期間(OS)中央値の結果はdarolutamide群未到達に対してプラセボ群未到達、darolutamide群で死亡(OS)のリスクを29%減少した(ハザード比:0.71,95%信頼区間:0.50-0.99,P=0.0452)。痛みの増悪までの期間中央値はdarolutamide群40.3ヶ月に対してプラセボ群25.4ヶ月、darolutamide群で痛みの増悪リスクを35%減少した(ハザード比:0.65,95%信頼区間:0.53-0.79,p<0.0001)。

探索的評価項目である無増悪生存期間PFS)中央値はdarolutamide群36.8ヶ月に対してプラセボ群14.8ヶ月、darolutamide群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを62%減少した(ハザード比:0.38,95%信頼区間:0.32-0.45,P<0.001)。PSA値増悪までの期間中央値はdarolutamide群33.2ヶ月に対してプラセボ群7.3ヶ月、darolutamide群でPSA値増悪のリスクを87%減少した(ハザード比:0.13,95%信頼区間:0.11-0.16,p<0.0001)。

一方の安全性として、全グレードの有害事象(AE)発症率はdarolutamide群83.2%(N=794人)に対してプラセボ群76.9%(N=426人)、グレード3または4の有害事象(AE)発症率はdarolutamide群24.7%(N=236人)に対してプラセボ群19.5%(N=108人)を示した。

darolutamide群で多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)は倦怠感12.1%(N=115人)、背部痛8.8%(N=84人)、関節痛8.1%(N=77人)、下痢6.9%(N=63人)、便秘6.3%(N=60人)。また、darolutamide群で多くの患者で確認されたグレード3または4の有害事象(AE)は高血圧3.1%(N=30人)、尿閉1.6%(N=15人)などであった。

以上のARAMIS試験の結果よりthe Institut Gustave Roussy・Karim Fizazi氏らは以下のように結論を述べている。”転移リスクの高い非転移性の去勢抵抗性前立腺がん患者に対するアンドロゲン除去療法(ADT)+darolutamide併用療法は、無転移生存期間(MFS)を統計学有意に改善しました。また、有害事象(AE)発症率もプラセボ群と同等であり、忍容性は問題ありませんでした。”

Darolutamide in Nonmetastatic, Castration-Resistant Prostate Cancer(N Engl J Med 2019; 380:1235-1246)

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