・未治療の急性骨髄性白血病高齢患者が対象の第1b/2相試験
・ベネトクラクス+低用量シタラビン併用療法の有効性・安全性を検証
・忍容性も問題なく、持続的な奏効率も示され、予後改善の可能性も
2019年3月20日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて未治療の急性骨髄性白血病(AML)高齢者に対する経口BCL-2阻害薬であるベネトクラクス+低用量シタラビン併用療法の有効性、安全性を検証した第1b/2相試験(NCT02287233)の結果がThe Alfred HospitalのAndrew H. Wei氏らにより公表された。
本試験は、強力な治療が適応でない60歳以上の未治療急性骨髄性白血病(AML)患者(N=82人)に対して28日を1サイクルとして1日1回ベネトクラクス600mg+1、10日目にシタラビン20mg/m2併用療法を投与し、主要評価項目として安全性、奏効率(RR)、奏効持続期間(DOR)、全生存期間(OS)などを検証した第1b/2相試験である。
本試験が実施された背景として、急性骨髄性白血病として診断される平均年齢は68歳であるにも関わらず、高齢者に対する急性骨髄性白血病の強力な治療を実施することが難しい。そのため、低用量シタラビン単剤療法等が高齢者の標準治療になるが、その奏効率(RR)は11~19%、全生存期間(OS)は6ヶ月未満であり治療成績が優れない。以上の背景より、複数治療歴を有する急性骨髄性白血病患者に対して客観的奏効率(ORR)19%を示しているベネトクラクス単剤療法の有用性を確認するため、本試験が実施された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は74歳(63-90歳)。性別は男性65%(N=53人)。ECOG Performance Statusはスコア0が15%(N=12人)、スコア1が56%(N=46人)、スコア2が28%(N=23人)、スコア3が1%(N=1人)。骨髄芽球は30%未満が33%(N=27人)、30%以上50%未満が22%(N=18人)、50%以上が44%(N=36人)。
メチル化阻害薬(HMA)治療歴はありの患者29%(N=24人)。予後リスク分類はIntermediateが60%(N=49人)、Poorが32%(N=26人)、No mitosisが8%(N=7人)。遺伝子変異ステータスはTP53陽性が14%(N=10人)、FLT3陽性が23%(N=16人)、IDH1/2陽性が25%(N=18人)、NPM1陽性が13%(N=9人)。
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である安全性としては、全グレードの有害事象(AE)発症率100%(N=82人)を示した。最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は発熱性好中球減少症(FN)42%(N=34人)、血小板減少性38%(N=31人)、白血球数減少34%(N=28人)、貧血27%(N=22人)、好中球減少症27%(N=22人)、血小板数減少24%(N=20人)などであった。多くの患者で確認された重篤な有害事象(SAE)は貧血31%(N=25人)、発熱性好中球減少症(FN)27%(N=22人)、肺炎10%(N=8人)などであった。
また、もう一方の主要評価項目である全患者群における完全寛解率(CR)26%、血液の回復は不十分だが骨髄では完全寛解(CRi)28%を示した。予後リスク分類別ではIntermediate群で完全寛解率(CR)35%、血液の回復は不十分だが骨髄では完全寛解(CRi)29%、Poor群で完全寛解率(CR)15%、血液の回復は不十分だが骨髄では完全寛解(CRi)27%を示した。
メチル化阻害薬(HMA)治療歴の有無別ではあり群で完全寛解率(CR)4%、血液の回復は不十分だが骨髄では完全寛解(CRi)29%、なし群で完全寛解率(CR)34%、血液の回復は不十分だが骨髄では完全寛解(CRi)28%を示した。
全患者群における全生存期間(OS)中央値は10.1ヶ月(5.7-14.2ヶ月)を示した。また、奏効率別の全生存期間(OS)中央値は完全寛解(CR)を達成した患者群で未到達(16.9ヶ月-未到達)、完全寛解(CR)+血液の回復は不十分だが骨髄では完全寛解(CRi)を達成した患者群で18.4ヶ月(14.0ヶ月-未到達)、血液の回復は不十分だが骨髄では完全寛解(CRi)を達成した患者群で11.7ヶ月(6.5ヶ月-19.4ヶ月)を示した。
以上の第1b/2相試験の結果よりAndrew H. Wei氏らは以下のように結論を述べている。”強力な治療が適応でない未治療の急性骨髄性白血病(AML)患者に対するベネトクラクス+低用量シタラビン併用療法は忍容性が問題ありませんでした。また、持続的な奏効率も示し、予後改善の可能性も示唆され、本患者の治療選択肢になり得るでしょう。”