2019年4月1日、医学誌『British Journal of Hematology』にて再発難治性多発性骨髄腫(MM)患者に対する抗PD-1抗体薬であるペムブロリズマブ(商品名キイトルーダ;以下キイトルーダ)単剤療法の有効性、安全性を検証した第1b相のKEYNOTE‐013試験(NCT01953692)の結果がInstitut Gustave RoussyのVincent Ribrag氏らにより公表された。
KEYNOTE‐013試験とは、再発難治性多発性骨髄腫患者(N=30人)に対して2週毎にキイトルーダ10mg/kg単剤療または3週毎にキイトルーダ200mg単剤療法を病勢進行または予期せぬ有害事象(AE)が発現するまで投与し、主要評価項目として治療関連有害事象(TRAE)発症率、客観的奏効率(ORR)などを検証した多施設共同単群の第1b相試験である。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は70.0歳。前治療歴中央値は4レジメン。造血幹細胞移植歴のある患者は53.3%(N=16人)、レナリドミド(商品名レブラミド;以下レブラミド)不耐の患者は66.7%(N=20人)である。
以上の背景を有する患者に対するフォローアップ期間中央値19.9ヶ月(2.0-44.0ヶ月)時点における結果は下記の通りである。主要評価項目である客観的奏効率(ORR)は0%(95%信頼区間:0.0-11.6%)を示した。なお、病勢安定率(SD)は56.7%(95%信頼区間:37.4%-74.5%)、病勢進行率(PD)は43.3%(95%信頼区間:25.5%-62.6%)を示した。
病勢安定率(SD)56.7%を示した患者17人の内、58.8%(N=10人)の患者はレブラミド不耐、29.4%(N=5人)の患者はdouble‐refractory、23.3%(N=4人)の患者はtriple‐refractory、5.9%(N=1人)の患者はquadruple‐refractoryであった。なお。また、奏効持続期間(DOR)中央値は3.7ヶ月(95%信頼区間:2.7-18.85ヶ月)を示している。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率40.0%(N=12人)を示し、最も多くの患者で確認された全グレードの治療関連有害事象(TRAE)は無力症16.7%(N=5人)、関節痛6.7%(N=2人)。グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率3.3%(N=1人)を示し、最も多くの患者で確認されたグレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)は筋肉痛3.3%(N=1人)であた。以上のように、再発難治性多発性骨髄腫(MM)患者に対するキイトルーダ単剤療法の忍容性は問題がなかった。
以上のKEYNOTE‐013試験の結果よりVincent Ribrag氏らは以下のように結論を述べている。”再発難治性多発性骨髄腫(MM)患者に対する抗PD-1抗体薬キイトルーダ単剤療法は、病勢安定率(SD)56.7%を示し、忍容性に問題はありませんでした。しかしながら、本試験は小集団、かつ比較群なしの試験であるため、知見の解釈には気をつけるべきである。”
なお、2017年7月3日、米国食品医薬品局(FDA)は他の第3相試験の結果に基づき、多発性骨髄腫患者に対するキイトルーダベースの治療方法の有用性を検証する試験中止の勧告を実施している。