がん情報サイト「オンコロ」

胆管がん体験者 西口洋平さん

白石:こんにちは。私はオンコロの学生スタッフをさせていただいている薬学部の2年生です。今回は私がインタビューさせていただきます。宜しくお願い致します。

西口:宜しくお願いします。

目次

原因不明の下痢

白石:では、西口さんのがん種と、がんが見つかった経緯を教えてください。

西口:私は2015年の2月に胆管がんだとわかりました。前の年の夏くらいから体重が5キロ落ちて、ずっと白っぽい下痢が続いていました。特に、脂っぽいものを食べると下し、初めは原因がわからなくて下痢止めを飲んでいました。消化器系が悪いのかと思い、病院で下部・上部内視鏡を受けましたが何も異常は発見されませんでした。でもやっぱりおかしいぞと思い、2度目の診察にいくと目が黄色くなっている、いわゆる黄疸が出ていると言われました。そして精密検査をし、胆管がんの診断を受けました。

なんで自分なんだろう

白石:がんの告知を受けた時はどのような気持ちでしたか?

西口:まず「死んだ。」「あ、終わったな。」と感じました。何か自分は悪いことをしたのだろうか? 泥棒も、殺人もしたことないのに、なぜ自分がとも思いました。最初、先生からは「悪性腫瘍です」と言われたのですが、私はその時、悪性腫瘍という単語を知らなくて、「悪性腫瘍ってなんですか?」って聞きました。先生はがんだと答えました。がんのこと、悪性腫瘍って言うんだ。って思いました。告知をされたときは、そんな気持ちでした。

病院での電話

白石:告知を受けてどなたかに相談はされましたか?

西口:相談というか、まず母親に電話をしました。先生から告知を受けた時は淡々と話を聞いていたのですが、電話口の母親の反応には言葉が出なくなりました。次第に感情も高まりましたが、嗚咽するのを手で口を押え堪えていました。病院の中でしたので。

その後に妻に電話をしましたが、母親との電話のこともあり冷静に話をしました。

事実を伝えることはしましたが、相談は特にはしなかったです。

白石:お子さんへは伝えたのですか。

西口:手術のタイミングと子供の卒園式、入学式が重なってしまう可能性があり、出られないかもしれないという事は伝えたかもしれません。妻だけが参加することに心苦しさを感じていました。

白石:実際参加することは出来ましたか。

西口:出られました。手術前後で体重が減少し、新しいスーツを買うことになりましたが(笑)。

便秘とふきで物が辛い

白石:治療中について教えてください。

西口:現在も治療は続けています。

手術は難しく、12時間はかかると言われました。しかし、いざ開腹すると腹膜への転移が分かり、手を付けられないとのことで2時間ちょっとで終わりました。

その後は化学療法で、ジェムザール、シスプラチンを3週に2回受けています。最初は免疫が下がってきて翌週は休みという状態でしたが、今は出来ています。辛い副作用は便秘と肌荒れです。水分がまるっきりないので血が出ることもあります。また、ふきで物がすごい出ます。あとはステロイドによる体重増加が気になり、ステロイドを減らしたことがあったのですが、吐き気がひどくなってしまい、結局元の量に戻したこともありました。

明るく深刻になり過ぎないように

白石:勤務先へはどのように伝えましたか。

西口:家族や友人に病状を伝えた際にはお互い涙し、感情的になった事もありました。そのようなこともあり、勤務先へは比較的スムーズに話が出来ました。深刻になり過ぎないようにできるだけ明るい感じで伝えました。ただ、夜遅くなり過ぎたり、体調が悪い時があるかもしれないなど、ちょっとだけ思いやりを下さいとも話しました。見た目にはわからないので、もしかしたら周りの人は自分が病気である事を忘れている人もいるかもしれませんね(笑)

白石:経済面で何か苦労されたことはありましたか。

西口:幸いなことに、仕事が出来ていますし、保険も出た事や困ったときには親の支援も得られる環境だったため、経済面での苦労は特にありませんでした。

短かった手術

白石:がんになって一番辛かったことはなんですか?

西口:・・・手術後ですかね。先ほども言いましたが、12時間かかると言われた手術が2時間ちょっとで終わりました。それって明らかにダメだったってことじゃないですか。手術できる状態ではなく、それを聞いた両親は絶句したそうです。私自身は手術から3日後に先生から聞いたのですが、その間は家族だけが知っている状況でした。なんとなく手術が早く終わったのもわかっていて、何かおかしいなとは感じていましたが。これは終わったなと思いました。・・・。

 

奥さんに感謝

白石:どなたか感謝したい方はいますか?

西口:奥さんですかね。あらゆる点で気を使ってくれていると思います。特に食事にはとても気を使ってくれています。外食だと何が含まれているかわからないからと家で夜ご飯を食べたり、お弁当を作ってくれたり。しんどかっただろうと思います。見えないプレッシャーもあったと思います。

白石:食生活は大きな変化があったのですね。

西口:かなり変化はありましたね。生活リズム自体も変わりましたし、3食ちゃんと食べる事が多くなりました。これまでは朝ごはん抜きとか、夜遅くに食べたりなどがありましたが。ただ、厳しい食事制限をしても辛いですので、たまにはビールを飲んだり、脂っこいものも食べたりするようになってきました。最近は、無理はしていません。楽しんで生きたいと思いますからね。

はっきりといってほしい

白石:国や医療に対して何か意見はありますか?

西口:医者に「ぶっちゃけた話、自分はあとどれくらい生きられるのか」って聞いたことがあるんですが、その時の返答がすごく“もごもご”しており、はっきりしていない。態度にも表れているし、患者としては、わからないなら「わからない」と言ってほしいですし、わかっている事であればはっきりと言って欲しいと思いました。

あとは、医師と患者の関係性についてなのですが、患者は先生を気にし過ぎなところがあると思います。自分はそんなことはないのですが、先生に気に入られたい、嫌われたくないという思いから、あまりはっきり言わないところがあると思います。遠慮せずに話をしていくべきだと思います。

大きな目標  同じ想いを持つ人は必ずいるはず

白石:何か目標にしていることはありますか?

西口:あります!!(質問をくい気味に)

30代半ばで胆管がんになり強く感じたのですが、子供もいて、死ぬかもしれないっていうような同じ境遇の人が周りにはいませんでした。でも、カミングアウトしないだけで同じ境遇の方は必ずいるはずなんです。そのような人どうしで繋がったら、子供の事、家族の事、仕事の事など色んな悩みをシェアできると思うんです。そういうネットワークを作り上げたいと考えています。そしてそのネットワークを活用したビジネス化が出来たらよいなと考えています。

ビジネス化というのは、このネットワーク自体が働くプラットフォームとしての機能を持ち、仕事を提供できる場でもあったりする。また、ここで前向きに「ビジネスをやろう!」と考える事が生きる希望になったりもする。そして好循環を生み出すシステムとなり、利益も得て、永続的に存在するものを、やるからには目指したいのです。

まずは同じ境遇の方のネットワーク作りからスタートしています!!

白石:実現できれば多くの患者さんの希望となりますね。

西口:私と同じく、子どもを持つがん患者の方がいれば、お会いしたいです。がん種は問いません。ぜひ、連絡ください。よろしくお願いします!

(※西口さんの活動にご興味がある方、応援したい方がいましたらお問合せフォームよりご連絡ください。オンコロでも西口さんの活動を応援していきたいと思います。)

お問合せはこちらから: https://oncolo.jp/contact

悩むよりやってみよう

白石:最後に、皆さんに何かメッセージをお願いします。

西口:僕が今充実した人生を送れているのは先ほどお話した目標を持っている事が大きいです。悩むのではなく何かアクションを起こしていくことが、実はがんと闘っていくうえで大きなポイントになると思っています。

もしこのインタビュー記事を見た人が何か「やってみよう!」と思ってくれたのなら嬉しいです。

白石:本日はどうもありがとうございました。

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2020年5月14日追記:
5月8日、西口洋平さんはご逝去されました。本インタビューをはじめ、オンコロ黎明期より数多くの力添えいただき、誠にありがとうございました。謹んでお悔み申し上げます。
―オンコロスタッフ一同―

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