・複数治療歴のある再発難治性慢性リンパ性白血病患者が対象のレトロスペクティブ試験
・ベネトクラクス単剤療法、ベネトクラクス+リツキサン併用療法の有効性・安全性を検証
・無増悪生存期間、全生存期間について、両群間に統計学的有意な差は確認されなかった
2019年5月、医学誌『blood advances』にて複数治療歴のある再発難治性慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対するBCL-2阻害薬であるベネトクラクス単剤療法、ベネトクラクス+抗CD20モノクローナル抗体薬併用療法の有効性、安全性をレトロスペクティブに検証した多施設共同試験の結果がMemorial Sloan Kettering Cancer CenterのAnthony R. Mato氏らにより公表された。
本試験は、米国、英国の医療機関にてベネトクラクス単剤療法、またはベネトクラクス+リツキシマブ(商品名リツキサン;以下リツキサン)併用療法の治療を受けた再発難治性慢性リンパ性白血病(CLL)患者(N=321人)を対象にして、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)を比較検証したレトロスペクティブ試験である。
本試験が実施された背景として、慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対するベネトクラクス+リツキサン併用療法はベネトクラクス単剤療法に比べて有用性があることがランダム化試験で検証されておらず、また今後も検証される予定がない。そのため、現在臨床試験で蓄積されているデータに基づきベネトクラクス単剤療法、リツキサン併用療法の有用性を検証する必要性があり、本試験が実施された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
ベネトクラクス単剤群=68歳(37-91歳)
リツキサン併用群=66歳(45-88歳)
前治療歴
ベネトクラクス単剤群=3レジメン(0-12レジメン)
リツキサン併用群=2レジメン(0-15レジメン)
イブルチニブによる治療歴
ベネトクラクス単剤群=79%
リツキサン併用群=73%
以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)は両群間に統計学的有意な差は確認されず、unadjusted分析により無増悪生存期間(PFS)のハザード比は1.0(95%信頼区間:0.6-1.8,P=0.7)、全生存期間(OS)のハザード比は1.0(95%信頼区間:0.6-2.3,P=0.5)。adjusted分析により無増悪生存期間(PFS)のハザード比は1.0(95%信頼区間:0.5-2.0,P=0.9)、全生存期間(OS)のハザード比は1.1(95%信頼区間:0.4-2.6,P=0.8)。
また、その他評価項目である客観的奏効率(ORR)はベネトクラクス単剤群81%に対してリツキサン併用群84%、その内完全奏効率(CR)はベネトクラクス単剤群34%に対してリツキサン併用群32%。奏効までの期間中央値はベネトクラクス単剤群2.5ヶ月に対してリツキサン併用群2.1ヶ月を示した。
一方の安全性として、治療関連有害事象(TRAE)発症率は下記の通りである。グレード3の好中球減少症はベネトクラクス単剤群40.4%に対してリツキサン併用群34%、グレード3の血小板減少性はベネトクラクス単剤群30.8%に対してリツキサン併用群23%、グレードの下痢はベネトクラクス単剤群8.7%に対してリツキサン併用群5.1%。なお、治療関連有害事象(TRAE)による治療中止率はベネトクラクス単剤群41%に対してリツキサン併用群39%を示した。
以上のレトロスペクティブ試験の結果よりAnthony R. Mato氏らは以下のように結論を述べている。”複数治療歴のある再発難治性慢性リンパ性白血病(CLL)患者に対するBCL-2阻害薬ベネトクラクス単剤療法、ベネトクラクス+抗CD20モノクローナル抗体薬リツキサン併用療法は無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)ともに同様の結果が示されました。”