がん情報サイト「オンコロ」

成人再発H3K27M変異神経膠腫患者に対するONC201単剤療法、腫瘍縮小効果を確認

この記事の3つのポイント
・成人再発H3K27M変異神経膠腫患者が対象の臨床試験
・ドーパミンD2受容体拮抗薬ONC201単剤療法有効性安全性を検証
・6ヶ月無増悪生存率は33%、全生存期間中央値は未到達を示した

2019年5月31日から6月4日までアメリカ合衆国・イリノイ州・シカゴで開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO 2019)にて、成人再発H3K27M変異神経膠腫患者に対するドーパミンD2受容体(DRD2)拮抗薬であるONC201単剤療法の有効性、安全性を検証した臨床試験の結果がMassachusetts General HospitalのIsabel Arrillaga氏らにより公表された。

本試験は、成人再発H3K27M変異神経膠腫患者(N=29人)に対して1週に1回ONC201 625mg単剤療法を投与し、安全性、無増悪生存期間PFS)、全生存期間(OS)などを検証した試験である。

本試験が実施された背景として、H3K27M変異はびまん性正中神経膠腫の50~90%の患者で認められ、放射線療法後の標準治療は確立しておらず、予後不良の疾患である。また、H3K27M変異はPRC2複合体を抑制し、ヒストンの低メチル化を引き起こし、腫瘍増殖の原因になると考えられている。ONC201はドーパミンD2受容体拮抗薬で、mitochondrial caseinolytic protease P(ClpP)作動薬でもあり、腫瘍細胞をアポトーシスへ導く低分子化合物である。以上の背景より本試験が実施された。

本試験に登録された患者背景は下記の通りである。年齢中央値は35歳(17-74歳)。性別は男性45%、女性55%。KPSスコアは80(60-90)。主な原発腫瘍部位は視床52%、脳幹21%。組織学的分類はdiffuse midline glioma、NOS38%、Astrocytoma21%、GBM17%。前治療歴中央値は2レジメン(1~4)、全例で先行放射線療法が実施されている。

以上の背景を有する患者に対する本試験の結果は下記の通りである。全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率は吐き気21%、嘔吐10%、下痢7%、疲労17%、貧血7%、頭痛3%、目眩10%、ALT上昇3%、リンパ球減少3%、血小板数減少3%、低リン血症10%。グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率は疲労3%、頭痛3%、リンパ球減少3%。

造影病変を有する患者群での客観的奏効率ORR)は27%(95%信頼区間:8%-55%)、非造影病変を有する患者群では36%(95%信頼区間:13%-65%)。6ヶ月無増悪生存率(PFS)は33%、全生存期間(OS)中央値は未到達を示した。

以上の臨床試験の結果よりIsabel Arrillaga氏らは以下のように結論を述べている。”成人再発H3K27M変異神経膠腫患者に対するドーパミンD2受容体(DRD2)拮抗薬ONC201単剤療法は、忍容性も良好であり、腫瘍縮小効果が確認されました。”

Single agent ONC201 in adult recurrent H3 K27M-mutant glioma.(2019 ASCO Annual Meeting, Abstract No:3005)

×
モバイルバージョンを終了