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メディカルクラウドファンディングの実態、科学的未検証の治療法に多額の資金が投入されている可能性

この記事の3つのポイント
・医療費の寄付を募るクラウドファンディングが行われているが、運営事業体の信頼性は未知数
・科学的裏付けが乏しいなどの調査結果が多く出ている5つの治療法への調達目標額、実際の調達額を調査
・調達目標総額約30億円のところ、調査終了までに7億3600万円が集まり、調達額の割合は24.9%だった

インターネットを通じて医療費の寄付を募るメディカルクラウドファンディングが広く知られるようになった。特に米国では、公的医療保険を含む保険サービスの不足分を補う役割も果たす有用な経済援助手段であり、活動に共感する慈善的な協力者によって支えられている。だが、個々のクラウドファンディング運営事業体の信頼性は未知数である。

ニューヨーク大学のArthur L.Caplan氏らは、メディカルクラウドファンディングで調達された資金が、科学的、統計学的に有効性が証明されていない治療法や、さらには危険性をもはらむ治療法にも使われている実態を明らかにした。この調査研究結果は、JAMA誌の2018年10月23/30日号に掲載された。

現在、メディカルクラウドファンディング運営サイトの格付けは存在していない。そこでCaplan氏らは、調査対象として、大規模なクラウドファンディングを展開しているGoFundMe、YouCaring、CrowdRise、およびFundRazrのサイトを選んだ。そして、2015年11月1日以降に開始された資金調達キャンペーンの中で、科学的裏付けが乏しい、危険性が潜むといった予備的な調査結果が多く出ている5つの治療法への調達目標額、実際の調達額を調べた。

調査期間は2017年11月14日から12月11日で、2016年から2017年にかけて学術誌に発表された研究結果で、有効性がない、あるいは重篤な有害事象発現することが報告された5つの治療法を調べた。対象疾患と治療法は以下の通りである。

(1) がんを対象とするホメオパシー(同種療法、同毒療法)・ナチュロパシー(自然療法)
(2) 脳損傷を対象とする高圧酸素療法(HBOT)
(3) 脳損傷を対象とする幹細胞療法
(4) 脊髄損傷を対象とする幹細胞療法
(5) 慢性ライム病を対象とする抗生物質長期療法

その結果、上記5つの治療法のいずれかの実現に直接投資の協力を呼び掛けていたキャンペーンは、合計1059あり、そのうち1038(98%)のキャンペーンは最大規模のクラウドファンディングサイトGoFundMeによる運営であった。調達目標総額が約2725万ドル(約30億円)のところ、2017年12月の調査終了までに(約2年間のキャンペーン期間)約678万ドル(約7億3600万円)を集めた。目標額に対する調達額の割合は24.9%であった。

キャンペーンの数自体が最も多かったのは、がんのホメオパシー・ナチュロパシーで474、目標額は約1258万ドル(約14億円)、調達額は約346万ドル(約4億円)、目標額に対する調達割合は27.5%であった。他の4つの治療法では、目標額は約20万ドルから600万ドル(2170万円台から6億5000万円台)、調達額は60万ドルから125万ドル(6500万円台から1億3500万円台)で、調達割合は19.6%から31.9%であった。

集まった資金が上記の治療法の実際に活用されたと仮定すれば、寄付をした者は、疑わしい、恐らくは安全性に問題がある治療に間接的に協力してしまうことになる。あるいは、目的通りに資金が使われていない可能性もある。

Association Between Self-reported Prenatal Cannabis Use and Maternal, Perinatal, and Neonatal Outcomes(JAMA. 2018 Oct 23;320(16):1705-1706. doi: 10.1001/jama.2018.10264.)

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