・ホルモン感受性転移性前立腺がん患者が対象の第3相試験
・イクスタンジ+アンドロゲン除去療法の有効性をプラセボ+アンドロゲン除去療法と比較・検証
・治療開始24週時点において、イクスタンジ群で画像診断による病勢進行または死亡のリスクを61%有意に改善
2019年7月22日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にてホルモン感受性転移性前立腺がん患者に対する経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬であるエンザルタミド(商品名イクスタンジ;以下イクスタンジ)+アンドロゲン除去療法(ADT)の有効性を比較検証した第3相のARCHES試験(NCT02677896)の結果がDuke Cancer CenterのAndrew J. Armstrong氏らにより公表された。
ARCHES試験とは、ホルモン感受性転移性前立腺がん患者(N=1150人)に対して1日1回イクスタンジ160mg+アンドロゲン除去療法(ADT)を投与する群(N=574人)、またはプラセボ+アンドロゲン除去療法(ADT)を投与する群(N=576人)に無作為に振り分け、主要評価項目として画像診断による無増悪生存期間(rPFS)、副次評価項目として前立腺特異抗原非再発生存期間(PSA-PFS)を比較検証した国際多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第3相試験である。
本試験が実施された背景として、前立腺がんは男性の罹患率が最もがんの1つであり、死亡率の高い患者の特徴として転移率の高さである。経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬であるイクスタンジは、第2相試験においてホルモン治療歴のない転移性前立腺がん患者に対して前立腺特異抗原(PSA)値を低下させる可能性が示唆されている。以上の背景より、ホルモン感受性転移性前立腺がん患者に対するイクスタンジ+アンドロゲン除去療法(ADT)の有用性を検証する目的で本試験が開始された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
イクスタンジ群=70.0歳(46-92歳)
プラセボ群=70.0歳(432-92歳)
人種
イクスタンジ群=白人81.2%、アジア人13.1%、黒人1.4%
プラセボ群=白人79.9%、アジア人13.9%、黒人1.4%
ECOG Performance Status
イクスタンジ群=スコア0 78.0%、スコア1 21.8%
プラセボ群=スコア0 76.9%、スコア1 23.1%
診断時点におけるグリソンスコア
イクスタンジ群=8未満 29.8%、8以上 67.2%
プラセボ群=8未満 32.5%、8以上 64.8%
診断時点におけるの転移有無
イクスタンジ群=ありの患者割合 93.4%
プラセボ群=ありの患者割合 92.2%
PSA中央値
イクスタンジ群=5.4ng/ml
プラセボ群=5.1ng/ml
以上の背景を有する患者において、本試験の治療開始24週時点における結果は下記の通りである。治療中止に至った患者の割合はイクスタンジ群で15.9%、プラセボ群で34.9%。主要評価項目である画像診断による無増悪生存期間(rPFS)中央値はイクスタンジ群で未到達(95%信頼区間:未到達)に対してプラセボ群で19.0ヶ月(95%信頼区間:16.6ヶ月-22.2ヶ月)、イクスタンジ群で画像診断による病勢進行または死亡(rPFS)のリスクを61%統計学的有意に改善した(ハザード比:0.39,95%信頼区間:0.30-0.50,P<.001)。
重要な副次評価項目である前立腺特異抗原非再発生存期間(PSA-PFS)中央値はイクスタンジ群で未到達(95%信頼区間:未到達)に対してプラセボ群で未到達(95%信頼区間:未到達)、イクスタンジ群で前立腺特異抗原再発/病勢進行(PSA-PFS)のリスクを81%統計学的有意に改善した(ハザード比:0.19,95%信頼区間:0.13-0.26,P<.001)。
評価可能であった患者群における客観的奏効率(ORR)はイクスタンジ群で83.1%(N=147人)に対してプラセボ群で63.7%(N=116人)、その奏効の内訳はイクスタンジ群で完全奏効(CR)36.7%、部分奏効(PR)46.3%、病勢安定(SD)9.6%、病勢進行(PD)4.0%に対してプラセボ群で完全奏効(CR)23.1%、部分奏効(PR)40.7%、病勢安定(SD)23.6%、病勢進行(PD)4.9%を示した。
一方の安全性として、全グレードの有害事象(AE)発症率はイクスタンジ群で85.1%(N=487人)に対してプラセボ群で85.9%(N=493人)、グレード3以上の有害事象(AE)発症率はイクスタンジ群で24.3%(N=139人)に対してプラセボ群で25.6%(N=147人)。最も多くの患者で確認された全グレードの有害事象(AE)はイクスタンジ群でホットフラッシュ27.1%、疲労19.6%、関節痛12.2%に対してプラセボ群でホットフラッシュ22.3%、疲労15.3%、関節痛10.6%、背部痛10.8%を示した。
また、治療関連有害事象(TRAE)により治療中止に至った患者割合はイクスタンジ群で7.2%(N=41人)に対してプラセボ群で5.2%(N=30人)、治療関連有害事象(TRAE)により死亡に至った患者割合はイクスタンジ群で2.4%(N=14人)に対してプラセボ群で1.7%(N=10人)を示した。
以上のARCHES試験の結果よりAndrew J. Armstrong氏らは以下のように結論を述べている。”ホルモン感受性転移性前立腺がん患者に対する経口アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害薬イクスタンジ+アンドロゲン除去療法(ADT)は、プラセボ群に比べて主要評価項目である画像診断による無増悪生存期間(rPFS)を統計学的有意に改善しました。”