・未治療の濾胞性リンパ腫患者が対象の第3相試験
・維持療法としてのリツキサン単剤療法の有効性・安全性を経過観察群と比較検証
・無増悪生存期間の中央値は10.5年であり、統計学的有意に改善
2019年7月24日、医学誌『Journal of Clinical Oncology』にて未治療の濾胞性リンパ腫患者に対する寛解導入療法として抗CD20モノクローナル抗体製薬であるリツキシマブ(商品名リツキサン;以下リツキサン)+化学療法後、有効性が確認された患者に対して維持療法としてのリツキサン単剤療法の有効性、安全性を比較検証した第3 相のPRIMA試験(NCT00140582)の9年間フォローアップ解析の結果がEmmanuel Bachy氏らにより公表された。
PRIMA試験とは、未治療の濾胞性リンパ腫患者に対する寛解導入療法としてリツキサン+化学療法を投与し、その後有効性が確認された患者(N=1018人)に対して維持療法としてリツキサン単剤療法を投与する群(N=505人)、経過観察をする群(N=513人)に無作為に振り分け、主要評価項目として無増悪生存期間(PFS)、副次評価項目として全生存期間(OS)、客観的奏効率(ORR)などを比較検証した国際多施設共同無作為化第3相試験である。
本試験が実施された背景として、濾胞性リンパ腫は非ホジキンリンパ腫の25%、インドレントリンパ腫の70%程度を占める疾患である。寛解導入療法としてのリツキサン+化学療法により、無増悪生存期間(PFS)をはじめ良好な結果が過去の臨床試験で示されている。以上の背景より、未治療の濾胞性リンパ腫患者に対する寛解導入療法後の維持療法としてのリツキサン単剤療法の有用性が本試験で検証された。
本試験に登録された患者背景は下記の通りである。
年齢中央値
リツキサン群=55歳(22-84歳)
経過観察群=57歳(26-79歳)
性別
リツキサン群=男性51.2%
経過観察群=男性53.5%
B症状あり
リツキサン群=30.4%
経過観察群=31.7%
FLIPI分類に病期スコア
リツキサン群=Low 21.4%、Intermediate 36.5%、High 42.1%
経過観察群=Low 21.0%、Intermediate 36.2%、High 42.6%
寛解導入療法の化学療法の種類
リツキサン群=CHOP療法 75.2%、CVP療法 22.0%、FCM療法 2.7%
経過観察群=CHOP療法 75.6%、CVP療法 21.6%、FCM療法 2.8%
本試験の9年間フォローアップ解析の結果、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)中央値はリツキサン群10.5年に対して経過観察群4.1年、リツキサン群で病勢進行または死亡(PFS)のリスクを39%統計学的有意に改善した(ハザード比:0.61,95%信頼区間:0.52-0.73,P<0.001)。
副次評価項目である10年全生存率(OS)は両群間ともに80%程度であり、両群間で死亡(OS)のリスクに統計学的有意な差は確認されなかった(ハザード比:1.04,95%信頼区間:0.77-1.40,P=0.7948)。
一方の安全性として、全グレードの治療関連有害事象(TRAE)発症率はリツキサン群で56.9%に対して経過観察群で38.2%。グレード3以上の治療関連有害事象(TRAE)発症率はリツキサン群で24.4%に対して経過観察群で16.9%。重篤な治療関連有害事象(TRAE)発症率はリツキサン群で21.2%に対して経過観察群で13.4%であった。
以上のPRIMA試験の9年間フォローアップ解析の結果よりEmmanuel Bachy氏らは以下のように結論を述べている。”未治療の濾胞性リンパ腫患者に対する寛解導入療法として抗CD20モノクローナル抗体製薬リツキサン+化学療法後の維持療法としてのリツキサン単剤療法は、無増悪生存期間(PFS)を統計学的有意に改善しました。一方で、全生存期間(OS)を改善するベネフィットを見出すことはできませんでした。”