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【オンコロメルマガ】医師の裁量権 [vol.138]

こんにちは、オンコロの高橋です。

さて、少し前に血液クレンジングがインターネットを中心に話題になりましたがご存知でしょうか。

トンデモ医療などと評されていましたが、あのようなトンデモ医療は(ご存知の方も多いと思いますが)がん領域でも存在しています。

常々、どうしてあのようなトンデモ医療が存在し得るのか不思議だったので医療者や有識者のコラムを読んでみたところ、その根拠によく「医師の裁量権」が挙がっていました。

医師の裁量権とは何なのか、調べてみると「これ」という答えはなかなか出てきません。

法律や専門書に明文化されているのかと思いきや、そういうわけでもない。
ひとつ言えることは「医師が自分勝手な治療をして良い」権利ではないようです。

自己決定権やインフォームドコンセントという概念がある以上、これは確かでしょう。

そして、一見相反する権利概念が同時に存在していることに医師の裁量権のヒントがあるように思えます。

そこで、さらに調べてみると、医師は患者に対して

1.治療選択肢の利害を医学の専門家として説明すること
2.各選択肢に伴う危険を具体的に説明すること

これらを医師の説明義務としており、さらに

3.患者に熟考させる機会を与えなければならない

という解説を見つけました※。

これをしなかった場合、医師に説明義務違反を認めることになります。

一方同解説内で、医師がその専門知識を以てして判断した治療法は、患者の望む治療法に必ずしも優位せず、またそのことは患者の自己決定権を侵害するものではない、と医師の持つ裁量を認めるようにも読めます。

すなわち、患者が自己決定できるように医師に説明義務を設定しながら、医師の決定の優位も認める状況にあります。

医師は患者が自己決定できるようにしなければならず、その上で行った自己決定は専門的見地から否定できる場合は自己決定が退けられるのです。

さて、医師の裁量権に立ち返ります。

医師は好き勝手に医療行為を行うことはできません。
医学的見地から患者に説明を尽くして、患者が治療を理解したうえで医師は患者が望んだ/望まない治療を行えるのです。

言うまでもなく義務と権利はセットです。
血液クレンジングにせよ怪しげながん治療せよ、医師はその効果・危険性を正しく説明する義務を果たしているでしょうか。

果たさなければ、裁量権を行使できないように理論上はなっているのです。

※出典元
峯川 浩子「分娩方法に関する説明義務違反と機会の喪失」『別冊 Jurist 医事法判例百選〔第2版〕』219号,2014,3,pp70-71

高橋ミカ

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