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 「日本における遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)とそのアンメットニーズ」  アストラゼネカ・メディアセミナーレポート

2017年5月11日、「第七回 アストラゼネカ・オンコロジーサイエンス・メディアセミナー」が開催されました。
今回のテーマは「日本における遺伝性乳がん・卵巣がん(HBOC)とそのアンメットニーズ」と題して、慶應義塾大学医学部の青木大輔先生とアストラゼネカ株式会社 メディカル本部 オンコロジー領域部 橋上聖氏による講演が行われました。

青木先生からは「遺伝性乳がん卵巣がんの診療の実際-卵巣がんを中心に-」というタイトルで、基礎的な事項から非常にわかりやすく遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)を中心に現状を解説頂きました。
今回のセミナーにおいて「患者さんを含むより多くの方に遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)について啓発をしていく」ことの重要性を強く感じましたので、セミナーで得られた情報について講演内容の要点を絞った内容をお伝えする事でレポートに代えさせて頂ければと思います。
※HBOCのうち卵巣の情報が中心でしたのでそちらの情報が多くなっております。

■遺伝性卵巣がんについて
・卵巣がんのうち約10%が遺伝性のものである。
・遺伝性卵巣がんのうち約70%がBRCA1、約20%がBRCA2、約2%がリンチ症候群、約8%がその他の遺伝変異が起因していると考えられている。
BRCA遺伝子変異があると卵巣がんのリスクが20~40倍に上昇する。
・BRCA遺伝子変異を有する卵巣がんは、変異なしと比較して予後が良好とのデータがある。

■HBOCの診断手順について
1、遺伝的リスクの評価
患者さんの本人の既往歴や家族歴の確認を行い遺伝性であるリスクを確認する。
・BRCA遺伝子変異を有する近親者がいるか。
・若年性(45歳以下)の乳がん患者であるか。
・両側性の乳がん患者であるか。
・家系内に乳がん・卵巣がん・膵がん・前立腺がん患者がいるか。    など

2、遺伝カウンセリング
・遺伝的リスクのある方への相談や、情報提供の実施等を行う。
3、遺伝学的検査
・HBOCの多くを占めるBRCA遺伝子変異検査の場合は現状保険適応はない。 (20~30万程度)
・検査をするかは原則患者さんで決定する。

■リスク低減卵巣卵管摘出手術『RRSO』について
がんを発症する前に予防的に両側の卵巣と卵管の摘出をする。
日本では保険適応外で実施の場合は自費となる。(約70万程度)
乳がんの予防切除の場合はアンジェリーナ・ジョリーさんが有名。
海外でのデータとなるが、以下のことが科学的に証明されている。※BRCA1/2変異のある方を対象とした研究
・卵巣がん・卵管がん・腹膜がんリスクが80~90%低減
・乳がんの発症リスクが約50%低減
・総死亡リスクが60%低減
考えるべきこととして、生殖に関する問題、費用の問題、全てのリスクを完全排除できるわけではないこと(腹膜がんのリスクは残る)などがある。

■今後の展開について
・JGOG(婦人科悪性腫瘍研究機構)による、遺伝性卵巣がんに対する治療の更なる研究が進んでいる。
・BRCA遺伝子変異のある卵巣がん、乳がんの方への新薬(PARP阻害薬)の開発が進んでいる。卵巣がんにおいては、順調にいけば2018年春には承認??
・研究が進めば保険適応なども検討され、より多くの方が検査や治療を受けられるようになる。
・遺伝カウンセリングの更なる充実などのHBOCへの認知度向上、新たなる遺伝子異常の探索やその治療薬の開発など今後の課題もある。

山崎先生のまとめの言葉にもあったのですが、
「自分の遺伝的リスクを知ることによって、乳がん、卵巣がんの予防や治療に応用できるようになってきている」
ことを実感することが出来ました。
自身のがんが遺伝性のものかどうかを知ることに不安を感じる方も多いと聞きます。しかし、知る事で対策を行うことが出来るのならば、自分のがんについて把握しておくことも大切なことであると思いました。まずは私自身、関心を持ち、家族とも遺伝性のがんについて情報共有し、親族の既往歴についても把握をしてみようと思います。

今回のテーマでもあったHBOCについては下記でもとてもわかりやすく知ることが出来ます。是非一度ご覧になってみてください。
『遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)をご理解いただくために(Ver.3)』
特定非営利活動法人日本HBOCコンソーシアム作成

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