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4月13日開催『胃がんキャラバン 2019 in 長野』セミナーレポート

4月13日からスタートしました、『胃がんキャラバン2019』。その第1回として長野県佐久医療センターでの『いま、あらためて知る胃がんのこと』をテーマとしたセミナーには、当日約150名に及ぶ多数の参加をいただき、無事に終了いたしました。

年に数回、市民公開講座を開催している佐久医療センター。参加者の多さは、地域のみなさんの佐久医療センターへの信頼の高さを表していると感じました。今回は、『胃がんキャラバン2019』の第1回開催地となったことを長野朝日放送が事前、そして当日の昼、夕方のニュースの中でも取り上げて下さり、地域の応援はキャラバン開催への励みになりました。

【講演1】あなたの胃、大丈夫ですか~早期発見、早期治療の第一歩~
消化器内科副部長である友利彰寿医師から、検診の大切さについて、丁寧にお話いただきました。

どうしても胃カメラへの不安が根強く、その不安が検診受診率にも影響していると思います。国のがん対策推進基本計画の中でも、検診受診率を上げ、早期発見に繋げることは大きな目標となっています。

胃カメラの方法を丁寧に解説し、かつ、早期発見がどんなに大切かをお話いただいたことは、患者、家族のみならず、一般の参加者も多いセミナーとして、参加者の“知りたい”という要望にこたえるものだったと感じます。

セミナー後の質疑応答でも、胃の不調を感じている段階からの質問が複数寄せられ、検診受診に繋がることを確信しました。

スキルス胃がんを知ることで、あまりに不調なら別の病院に行くことなど、知ることで患者家族が選択する方法を増やしていきたいと思ったことが希望の会設立の原点です。

友利先生のお話は、まず、胃カメラがこわくて検診を受けない人に安心を与えるもので、ピロリ菌のことも、早期発見の大切さも、まっすぐに伝えるものでしたので、この講演で命に繋がる人がきっといると確信できる内容だったと思います。

【講演2】胃がんの治療 手術から免疫療法まで
腫瘍内科部長 長瀬通隆医師が、講演1を受け、治療について具体的に講演してくださいました。

がん治療の中で、抗がん剤への負のイメージが、患者家族が大きな不安を抱き、ともすると民間療法に走らせてしまう要因であることを常々感じています。負のイメージは、テレビ、映画などでのがん治療の取り上げられ方に一因があると思います。標準治療のこと、副作用のこと、緩和ケア、さらに情報の得方に及ぶご講演に、参加者が集中して聴いているのを感じました。

最近では、ゲノム、遺伝子という言葉も耳にすることが多く、端的な情報で理解ができないまま、広告的な発信に惑わされてしまう事例も増えています。人は、見通しがつかないことに大きな不安を抱くものです。長瀬先生のご講演は、患者目線にたった言葉遣い、事例を交えたものであり、さらに院内には医師のみならず、不安を相談できる場所があることなどにも触れ、がんと診断されたときに多くの人が狼狽してしまうポイントを網羅しているものでした。

普段、患者家族の目線で向き合っていらっしゃる姿勢を感じる熱い講演でした。このような医療者の思いに触れることも、医療への信頼に繋がると感じました。

【講演3】がんと診断されたら~知っていますか 相談支援センター~
本講演の時間では、相談支援センターのこと、ソーシャルワーカーのことなど、不安を相談できることを知る大切な内容でした。相談支援センターは、がん治療の心強い伴走の場でありながら、診断後になかなかたどり着かない人が多いことも現実に感じています。がんと診断されてから、治療が最優先となり、社会的、心理的不安は我慢してしまう事例が多いことを感じています。診断後、すぐに仕事をやめてしまったり、精神的な不安の原因を自分が弱いのだと悩み、適切な対応がないまま、心を病んでしまう事例もあります。今回、病院の中には、いろいろな形でサポート体制があることを発信したことは、医療への信頼に繋がる大切な視点であったと感じました。

【質疑応答】
毎回、同様なのですが、会場の参加者の熱心な想いに応えようと丁寧な講演となり、質疑応答の時間がおしてしまうことが続いています。今回も、予定を延長していただくことになりました。

ひとつひとつの講演の内容が丁寧でわかりやすかったので、質問はいくつかに内容が集約され、全ての質問にお答えすることができました。

毎回、質問は、そのセミナーの理解を深くすることに繋がっていることを感じています。今回も、全ての講演内容に質問が網羅されていたので、質疑応答の時間に、大きくうなずきながら聴いている姿が多く見られました。

医師のみならず、相談支援センター、ソーシャルワーカーの方が質問に答えたことで、治療に伴なう金銭的なこと、制度にもお答えすることが出来ました。また、神奈川県からの参加者が、セミナー後に佐久医療センターの相談支援室で相談を受けていただき、まさに、全国どこの相談支援室でも支えてくれるのだということを実感していただける機会となりました。

【今後に向けて】
『胃がんキャラバン2019』は、全国を回りますが、地域、開催場所によって、今回のように、がん患者やそのご家族のみならず一般の方が多く参加される場合と、進行再発胃がんの方々が参加する場合でニーズにこたえる講演内容を考えていく必要を感じています。佐久医療センターは、佐久医療センター副院長、診療センター長である宮田佳典先生の地域への想い、がんで命を落とす人を少なくしたいという想いで開催されてきた市民公開講座があり、すでに地域のみなさんが佐久医療センターに大きな信頼を寄せている中でのセミナーでした。がんと言われたとき、不安と混乱で、多くの方が狼狽します。そこで、情報に溺れてしまう事例がほとんどです。今回のように、一般の方の参加が多いセミナーは大切な意味を持っていることを実感し、今後、広い対象のセミナーと、深くこたえていくセミナーの両面の必要を考えていきたいと思う好機をいただきました。

次回、5月は北海道大学での開催となります。

北海道では、進行再発胃がんへのニーズも高いことを感じていますので、是非応えていきたいと思っております。

胃がんキャラバンの申し込みはコチラ

文:認定NPO法人 希望の会 理事長 轟 浩美(編集;中島 香織)

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