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慢性リンパ性白血病(CLL)の白血病の中での位置付け
白血病は、造血幹細胞が分化成熟する過程において、白血病細胞に悪性化するパターン、起源、病態の進行速度など病気の性質により、急性の骨髄性またはリンパ性、ならびに慢性の骨髄性またはリンパ性の4種類に分けられます。
白血病では、がん化した細胞が、もし成熟したら「何」になっていたか?によってがんの種類が分類されます。血液細胞の1つである白血球の中にはウイルスを攻撃する働きをするリンパ球があります。成熟したらリンパ球になる予定の細胞ががん化した場合がリンパ性白血病です。リンパ球以外の白血球、赤血球、血小板になる予定の細胞ががん化した場合、骨髄性白血病となります。
骨髄性白血病には、急性と慢性がありますが、ここでは慢性リンパ性白血病の説明をいたします。
慢性リンパ性白血病(CLL)は造血幹細胞からリンパ系に分かれた幹細胞(リンパ系幹細胞)ががん化した病気です。リンパ系幹細胞は、成熟すると白血球の一部であるリンパ球になります。リンパ球は、体に侵入してきたウイルスを攻撃するなどの免疫機能を担う重要な役割を持っています。
また造血器腫瘍のWHO分類では悪性リンパ腫である非ホジキンリンパ腫(NHL)の1つで、成熟B細胞腫瘍に入ります。発症のメカニズムの観点からも、B細胞リンパ腫の近縁に位置づけられています。
リンパ球系幹細胞はリンパ芽球に成熟し、以下の3種類のリンパ球(白血球)の1つになります:
・Bリンパ球:感染と闘うために役立つ抗体をつくる
・Tリンパ球:感染と闘うための抗体をつくるBリンパ球を補助する
・ナチュラルキラー細胞:がんやウイルスを有する細胞を攻撃する
CLLで増殖しているのはB細胞で、しかもちゃんと成熟したB細胞です(急性リンパ性白血病では未熟なリンパ系細胞が増殖していましたが、ここが急性と慢性の違いです)。
CLLの原因は解明されていませんが、造血幹細胞や前駆細胞が分化成熟する過程での悪性化に関与する遺伝子異常が明らかになってきています。
2016年に改訂されたWHO分類第4版によると、悪性リンパ腫は、9割以上を占める非ホジキンリンパ腫(NHL)と1割以下のホジキンリンパ腫(HL)に大別され、さらに、NHLは成熟B細胞腫瘍、成熟T/NK細胞腫瘍に分けられます。
なお、「Chronic lymphocytic leukaemia/small lymphocytic lymphoma」(慢性リンパ性白血病[CLL]/小リンパ球性リンパ腫[SLL])と表記されることが多いのは、SLLはCLLとは臨床表現型が異なる同一疾患として分類できるためです。
SLLは悪性化したリンパ球が主にリンパ節に集まって腫瘤を作るのが特徴ですが、細胞の組織学的診断は同様であるため、CLL/SLLは1つの病気として位置付けられています。ともに増殖している細胞はB細胞性のもので、病理診断をしてみても画像は共通しています。両者を分けるのは白血病細胞がどこにあるのか、という点です。
慢性リンパ性白血病(CLL)の発生割合
悪性リンパ腫の中で、日本におけるCLL/SLLの発生数は欧米と比べて少なく、2014年の報告によると、米国(24.1%)の約8分の1(3.2%)程度です。一方で、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)や成人T細胞白血病/リンパ腫などは日本での発生率が高くなっています。
慢性リンパ性白血病(CLL)の症状・臨床所見
慢性リンパ性白血病(CLL)は発症しても緩徐に進行するため、早期は無症状で、本人が気づくことはほとんどありません。
健康診断の血液検査値で白血球数やリンパ球数の異常が認められたことをきっかけに医療機関を受診し、発見されるのが一般的です。徐々に進行してくると、倦怠感や食欲不振、大量の汗、微熱、体重減少などが認められ、正常な白血球やリンパ球が減少して免疫能が低下するため、感染症にかかりやすくなり、しかもそれを繰り返すという経過をたどります。
また、白血病細胞が骨髄や血液以外のリンパ節や肝臓、脾臓などで異常増殖し、全身のリンパ節や肝臓、脾臓が腫大するため、本人が脇腹などの腫れを自覚して医療機関を受診することも少なくありません。造血機能が低下して正常な血液細胞を作れなくなると、貧血による息切れや血小板減少による出血傾向が顕著になり、まれではありますが、自己免疫性溶血性貧血や自己免疫性血小板減少をきたすこともあります。