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GIST(消化管間質腫瘍)の原因、症状等の基本情報

目次

GIST(消化管間質腫瘍)とは

GIST(消化管間質腫瘍)は、主に消化管の粘膜表面より下の筋層に発生する間葉系腫瘍で、手術や生検で組織を確認して初めて診断できます。病理組織診断の前にGISTと診断されることはありません。

多くは粘膜下腫瘍(SMT)として見つかり、すべてが悪性の腫瘍(がん)に進行するわけではなく、良性の経過をたどるもの、悪性の経過をたどるものに識別されていきます。悪性GISTは肉腫の一種です。治療の対象となるGISTは臨床的GISTと呼ばれますが、臨床的GISTがすべて悪性GISTとは限りません。

一般的に、正確な病理診断と最初の手術により60%から70%の患者は治癒し、転移・再発のGISTでも遺伝子変異検査結果に基づく薬物治療により進行を抑制し、持続的な安定状態に導くことが可能です。

GISTが発生する部位は、胃(胃体上部、噴門直下)が60%から70%を占め、次いで十二指腸・小腸(近位空腸)が20%から30%、直腸(肛門括約筋直上)が5%程度、食道その他が5%未満です。

患者数の動向

悪性の臨床的GISTは年間10万人あたり1人以下と極めて少ない希少がんです。症例数の少なさゆえに医療者側の診断と治療の経験数も少ないことから、正確な診断と適切な治療方針を決めるためには、専門医療機関の専門医を受診することが望ましいでしょう。

日本人では胃のGISTがおよそ7割を占めるといわれています。胃がんや大腸がんのような粘膜表面にできる腫瘍ではないため症状が現れにくいのが特徴です。GISTの好発年齢は50歳から60歳台ですが、極めて少ないものの、小児・若年(AYA)世代に発生するGISTもあります。

発生の原因について

GISTの発生原因は、主に血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)ファミリーに属するチロシンキナーゼKIT、またはPDGFRAをコードする遺伝子の変異で、GIST全体の80%にKIT、10%にPDGFRAの変異が確認されています。

これらの遺伝子に変異がないおよそ10%の野生型GISTでは、コハク酸脱水素酵素SDH)の欠損または非欠損に分けられ、さらに、SDH欠損でも同遺伝子に変異がある場合とない場合もあります。また、同じKITやPDGFRAの遺伝子変異でも、遺伝情報があるエクソンの変異がある場所によって発生の頻度や部位など特徴が異なり、詳細化すれば遺伝子変異は様々です。しかし、遺伝子変異はGIST発生の原因の1つではありますが、必ずしも悪性化の原因とは言えません。

それぞれの遺伝子変異は、GISTの発生部位や組織型、悪性度などの特徴との関連性がある程度認められており、例えば、SDH変異陽性のGISTは小児・若年(AYA)世代の胃・小腸に発生し、他のGISTでは珍しいリンパ節転移が多く、組織はKIT蛋白を発現する類上皮型で、薬物治療の第1選択であるイマチニブ(商品名グリベック)が効かないといった特徴があります。

GISTのほとんどは遺伝子しません。例外的に、家族性GIST、SDH変異陽性のCarney-Stratakis症候群などは遺伝する可能性があります。

症状

GISTの症状は、一般的に急性の下血や吐血、慢性の消化管出血による貧血などで、腫瘍破裂による急性腹症、消化管閉塞なども起こり得ます。これらの症状に連動して、疲労や嚥下困難、腹部膨満などを自覚することがあります。

診断

切除可能の限局性粘膜下腫瘍がGISTと確定診断されるまで

通常、検診で粘膜下腫瘍(SMT)が疑われる所見が認められた場合、または何等かの症状を自覚した場合に医療機関を受診しますが、いきなりGISTと診断されることはありません。「粘膜の下に腫瘤(SMT)がありますよ」といわれることから始まります。

未診断のSMTが原因と考えられる自覚症状がある場合は、GISTか否かに関わらず、まずは症状を取り除くために手術で切除し、摘出組織の病理診断によりGISTか否かを判定します。

症状がなくてもSMTの腫瘍径が5cmを超えている場合は、悪性の可能性が高いため、明らかに良性と判断できる場合を除き手術で切除し、病理診断によりGISTか否かを判定します。腫瘍径が2cmから5cmの場合は、CTや超音波内視鏡(EUS)の所見、および超音波内視鏡下穿刺吸引生検(EUS-FNAB)で採取した組織の病理診断により精査し、GISTか否かを判定します。腫瘍径が2cm未満の場合は、内視鏡検査で悪性所見を確認し、EUS-FNABの病理診断でGISTか否かを判定します。悪性所見がなければ定期的な検査で経過観察をします。

なお、日本のガイドラインでは、確定診断されたGISTは腫瘍径に関係なく手術で切除することが推奨されていますが、現実的には、2cm未満のSMTをGISTと確定診断できる確率は低く、仮にGISTと判定しても、悪性度が明らかに高いと予想されるもの以外は手術不要としている専門医もいます。手術の要不要と経過観察に関するエビデンスはほとんどないのが実情です。

手術や生検で採取した組織検体の病理診断では、一般的なヘマトキシリエオジン(HE)染色像でGISTに特徴的な紡錘型細胞、または類上皮型細胞が確認されたら、KIT蛋白に特異的な染色方法でKIT発現の有無を確認します。

いずれの組織型でも、KIT陽性の場合はGISTが確定しますが、KIT染色が陰性もしくは弱陽性の場合は、GIST細胞が特異的に発現する蛋白質DOG1(Discovered on GIST1)の染色、およびKITとPDGFRAの遺伝子変異の検査を組み合わせ、GISTか否かを判定します。

したがって、GISTと確定診断された患者さんは、KITとDOG1の発現、KITやPDGFRAの遺伝子変異の有無、腫瘍径など、自身のGISTに特徴的な情報を把握することができるでしょう。

また、遺伝子変異の検査はGISTの分子状態を把握するのみならず、術前または術後に実施する可能性のある薬物治療に対する感受性の予測にも重要な情報を与えてくれます。現在は、検査のサンプルとして採取した組織を用いますが、将来的には血液を検体として検査が可能になると考えられています。

前述したように、GISTの確定診断は一般医療機関では極めて難しく、専門家の協力が欠かせないことから、病理コンサルテーションシステムなどを利用して正確な診断をすることが重要な第一歩です。

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