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子宮肉腫とは
子宮の肉腫は、子宮の筋肉や結合組織(脂肪や線維からなる支持組織)に発生する悪性腫瘍で、子宮の内膜から発生する子宮体がん(子宮内膜がん)とは違います。非上皮性細胞(間葉系細胞:筋肉、骨、結合組織など)に由来する悪性腫瘍は肉腫と呼ばれ、間葉系腫瘍と呼ばれることもあります。なお、上皮性細胞に由来する悪性腫瘍は癌種と呼ばれています。そして、子宮の肉腫は希少がんであり、再発可能性の高い難治がんですが、診断と治療には確たるものがないのが実情です。
子宮の肉腫は、毎年約800人に発生すると推測されています。子宮体部悪性腫瘍の約8%を占め、その内訳は多い順にがん肉腫(46%、約360人)、平滑筋肉腫(36%、280人)、内膜間質肉腫(13%、約100人)で、内膜間質肉腫はさらに低異型度子宮内膜間質肉腫と未分化子宮内膜肉腫に分けられます。
症状について
自覚する最も多い症状は不正性器出血で、排尿痛や排尿困難、下腹部や骨盤周囲の違和感を伴うこともあります。出血は他の疾患でも見られる症状でもあるため、異常を感じた場合は早めに受診することが重要です。
診断について
子宮の肉腫は、子宮体部の内膜や子宮頸管の粘膜に肉腫成分が露出しないため、子宮体がんとは異なる診断方法が求められますが、術前診断が難しいため、経膣超音波検査やMRIによる画像所見が診断の鍵になります。内膜に肉腫が露出している場合は、採取した内膜の細胞や組織の検体を用いて病理学的な診断はできますが、病変が確認できなければ肉腫であることの診断はできません。また、子宮以外の臓器に発生する肉腫とは病理診断が異なり、診断の正確性が十分ではないため、肉腫が疑われる場合は子宮を摘出して診断するのが理想的であり、優先される治療手段でもあります。しかしながら、女性の晩婚・晩産化により、子宮摘出に同意できる人が少ないことも現状です。
さらに、子宮の肉腫の確定診断を困難にしている理由は、性成熟期女性の20%から30%に発生する良性腫瘍である子宮筋腫との鑑別が難しいことです。しかも、子宮筋腫は発育に伴い変性し、多彩なMRI画像を示すため、筋腫の中に肉腫が紛れていることも少なくなく、筋腫と認識して摘出した組織を病理診断した結果、肉腫であることが判明することもあります。
MRIで子宮の肉腫が疑われる所見は、出血、壊死、拡散抑制などが代表的なものです。例えば、子宮平滑筋肉腫のMRI所見では、腫瘤の境界が不明瞭で、出血を示すT2強調像で高信号が認められます(加藤氏スライドNo.14)。血液検査で乳酸脱水素酵素(LDH)の値が上昇していることも、子宮の肉腫を疑う根拠になります。また、閉経後に急速に増大する筋腫や、MRIで不均一な像を示す筋腫は肉腫の疑いを強める根拠になります。なお、MRI検査で筋腫と診断されたうちの0.1%が、実際は肉腫と最終診断されたとの報告があり、診断精度の限界も認識しておく必要があります。筋腫か肉腫かの鑑別が困難な場合、子宮頸管的針生検による診断が有用との報告もあります。
組織分類
子宮の肉腫は子宮体がんとは異なるものの、現時点では「子宮体癌取り扱い規約」およびWHO分類を元にして組織分類が行われています。
進行期分類
子宮の肉腫は子宮体がんとは異なる悪性腫瘍ではありますが、悪性の上皮性腫瘍と間葉系腫瘍が混合しているがん肉腫の場合は、子宮体がんの高悪性度と同様に治療することが現在の国内外のガイドラインにより推奨されています。平滑筋肉腫と子宮内膜間質肉腫の場合は、FIGO分類により、子宮に限局するI期から遠隔転移のあるIV期まで分けられています。