講演タイトル:『期待される新薬免疫チェックポイント阻害剤とは?』
演者: 河上裕先生 慶應義塾大学医学部附属先端医科学研究所 細胞情報研究部門 教授
日時: 3月25日(金)19時
場所: 秋葉原・ジーニアスホール
第3回目となる今回も用意していた席が足りなくなるほどの盛況ぶりで、免疫療法への関心の高さがうかがえました。クローズドのセミナーという事もあり、このレポートではお伝えできない内容もあるのですが、当日の盛り上がりを少しでもお伝えできればと思います。河上先生は日本がん免疫学会の理事長であり、この領域の第一人者でおられます。
その河上先生がおっしゃるに、これからのがん免疫療法のキーワードは「個別化」と「複合免疫療法」とのことでした。
その効果から大きな期待が集まっている免疫チェックポイントについて、各がん種ごとの効果の出方に違いがある事を最新データを用いて解説をして頂きました。話によりますと、がん種ごとによる効果の違いに加え、個人のもつ遺伝子型によっても効果が違ってくるとのことでした。また、試験データはあくまでも参考とするべきデータであり、鵜呑みにしてはいけない。大切なのはそれぞれ「個別化」してその人に合う治療をすることであると述べられていました。そのための研究が現在多く実施されているそうです。
次にWebで宣伝されている多くの免疫療法について触れられ、そのなかには「本当に効く免疫療法と効くかわからない免疫療法を区別してほしい!」というメッセージがありました。「Webで宣伝している免疫療法は嘘ばかり!」という言葉には、これまで多くの免疫療法が臨床試験に失敗してきた歴史があることなど、免疫療法を知り尽くす河上先生だからこその説得力がありました。来場者の方々が必至にメモを残す姿が印象的でした。
「複合免疫療法」については今後間違いなく進んでくるでしょうとの事で、近いうちに情報が公になってきそうです。
毎回大好評の質疑応答セッションではとても沢山の質問が寄せられ、こちらも大きな盛り上がりを見せておりました。それ故全ての質問にお答えすることが出来ず申し訳ございませんでした。
質問に対してはどれもはっきりと事実を回答してくださり、質問された方は満足いただけたのではないかと思います。
質問の一部をご紹介します。
Q.個別化はいつごろから可能になってくるのでしょうか?
A.アメリカでは盛んになってきており、すでに始まってきている。研究者も努力しており徐々に進んでいきます。将来的には自身の遺伝子を把握してそれに準じて治療をする時代が来るでしょう。
Q.巷にあふれる医療情報について(※諸事情により表現を変えています)
A.医療情報に0か100で言えるようなものはほとんどありません。なので決めつけるような情報は良くないし、嘘である。皆さんは騙されないようにしてほしいです。自分で考える事も重要です。(※諸事情により表現を変えています。大切なメッセージなのでこのような形で掲載します)
目次
全体を通して
主催者側の私が言うと変なのかもしれませんが、日本を代表する研究者の話を生で聞く機会はそう多くはありません。
貴重な、大切な、情報を沢山教えていただき、とても密度の濃い90分でした。「医学は確実に進歩している」そう確信することが出来ました。今回お忙しい中講演を引き受けてくださった河上先生に心から感謝をしたいです。オンコロでは今後もこのがん情報セミナーを続けてまいりますので、是非一度この興奮を味わいにご来場いただけたらと思います。
レポート担当:HAMA
第3回 アンケート結果
今回は30名以上の方にご参加いただき、29名の方からアンケートにお答えいただきました。
性別
年代
あなたに関係のあるがんの種類はなんですか?(自由記述)
肺がん/肺腺がん/肺がん脳転移/乳がん/子宮頸がん/胃がん/神経内分泌腫瘍/肉腫
このセミナーをどの媒体で知りましたか?
<その他詳細>
メール。チラシ。
セミナーに参加しようと思った理由はなんですか?(複数回答可)
<その他詳細>
・免疫チェックポイント阻害剤の開発に興味があったため。
・肺がんにおける免疫療法について詳しく知りたかったから。
今回のセミナーの感想をお聞かせください。
・「がんが治る」時代が期待できるお話でした。ディスカッションも楽しかったです。
・単純に研究が進めばいいというだけでなく、臨床試験や国の医療費などの問題も絡んでいると気づくことが出来ました。
・わかりやすかったです。
・知りたいこと、聞きたいことを聞くことが出来た。
・研究の全体像(どこまで進んでいて、今後何が期待できるか、現在の課題)がよくわかった。
・免疫情報を難しい課題ですが、わかるように説明してくれました。
・私自身、現在薬の研究をしているので、最先端の話を聞くことが出来、刺激になりました。
・時間が限られていることもあり、もう少し深く聞きたかった。
・可能であれば資料を配ってほしかった。
・チェックポイント阻害剤の現在の状況について理解できた気がする。
・話はおもしろかったのですが、早口でついていけないところがありました。説明しなければならないと思われたことが時間に対して多すぎるのではありませんか?
・もっと話を聞きたかった。1時間は短すぎます。
・先生の講義が早口すぎてわかりづらかった。内容も専門的なものが多いので専門の方々向けのセミナーという感じがした。こういう難しい内容であればプレゼンを印刷したものをハンドアウトとして配布してほしい。あと、部屋が明るすぎてプレゼンが見づらかった。(目が疲れた)
・時間が足りなかった。でも勉強になった。
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