2019年7月30日、ファイザー株式会社は、慢性骨髄性白血病(以下、CML)治療薬として、抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼインヒビター(阻害剤)ボスチニブ水和物(以下、「ボシュリフ」)(商品名:「ボシュリフ®錠100mg」)を厚生労働省に製造販売承認事項の一部変更承認申請した。今回の申請により、ファーストライン治療薬として適応拡大への期待が加速される。
今回の申請は、初発のCMLを対象とした、多施設共同国際第Ⅲ相無作為化非盲検試験である*BFORE試験および国内第Ⅱ相非盲検試験であるB1871048試験の結果に基づいている。
B1871048試験は、初発の慢性期CMLの日本人成人患者を対象とし、ボシュリフ単剤投与時の有効性および安全性を評価することを目的とした試験。本試験の詳細な結果は、近く医学学会にて発表される予定である。
ボシュリフは、海外および国内の臨床試験においてイマチニブ抵抗性または不耐容(セカンドライン)のCMLに対して、また、イマチニブ治療後のダサチニブまたはニロチニブ抵抗性または不耐容(サードライン以降)のCMLに対して、良好な有効性と忍容性が認められている。
国内において、本剤は同効能にて希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)に指定され、優先審査品目として審査を受けた。2014年9月に「前治療薬に抵抗性又は不耐容のCML」を適応症として製造販売承認を取得し、同年12月に発売している。
*BFORE(Bosutinib trial in First line chrOnic myelogenous leukemia tREatment)試験について
BFORE試験は、初発の慢性期Ph+ CMLの治療薬としてボシュリフの有効性と安全性を評価することを目的とした、多施設共同の国際第Ⅲ相無作為化非盲検試験。試験には、北米、アジア、欧州の複数施設から患者536人が登録された(日本は参加していない)。
被験者は、試験期間中、ボシュリフ400mg投与群、または標準治療薬イマチニブ400mg投与群に1:1の比率で無作為に割り付けられた。主要評価項目は、12ヵ月時点のMMR率、すなわちBCR-ABL遺伝子レベルが標準ベースラインに比べて0.1%未満に低下した各群の患者割合を比較することによって、イマチニブに対するボスチニブの優越性を示すことであった。
本試験のボシュリフ400mg投与群における12ヵ月時点のMMR率は47.2%(95% CI: 40.9, 53.4)であり、現在の標準治療薬であるイマチニブ400mg投与群の36.9%(95% CI: 30.8, 43.0)を有意に上回った(両側検定P=0.0200)。12ヵ月時点までの細胞遺伝学的完全寛解(CCyR)率は、ボシュリフ投与群で77.2%(95% CI: 72.0, 82.5)、イマチニブ投与群で66.4%(95% CI: 60.4, 72.4)であった(両側検定P=0.0075)。試験で認められた有害事象は、ボシュリフの既知の安全性プロファイルと同様であった。
本試験は、2014年にファイザー社と独占的共同開発契約を締結したAvillion社が実施している。
慢性骨髄性白血病(CML)について
日本において成人白血病の15~20%を占めるCMLは、男性に多く、好発年齢は30~50歳代、発症頻度は約1人/10万人/年間といわれている。CMLは多能性造血幹細胞の異常により惹起される白血病であり、95%を超える患者の白血病細胞に9番染色体と22番染色体の相互転座が認められ、この転座によりBCR-ABLがん遺伝子を含むフィラデルフィア染色体(以下、「Ph」)が生じる。
CMLには3つの病期があり、約85%が慢性期(CP)に診断される。病期が進行するまで無症状であることが多く、無治療で放置した場合は、4~6年続く慢性期の後に、移行期(AP)、急性転化期(BP)へと進行し、重篤な貧血、出血、感染などの症状を発現し、コントロールが難しくなり死に至ることもある。
参照元:ファイザープレスリリース