■この記事のポイント
・根治的前立腺摘出手術を行った方に、フォローアップ放射線療法にカソデックスを追加する臨床試験結果。
・10年後の生存割合はカソデックスを使用した方が高く、主因としては転移率が低下したこと。
・心臓系の副作用が2倍程度多かったが、2~3%が4~6%であった。
1月7日から9日まで米国サンフランシスコで開催された米国癌治療学会 尿路悪性腫瘍シンポジウム(ASCO GU2016)で、米国 ボストン マサチューセッツ総合病院のウイリアム氏によって発表された第3相臨床試験を報告します。
本試験は、根治的前立腺摘出術を行った患者リスク前立腺患者761名に対して、術後フォローアップ治療として放射線療法に加え、ホルモン療法薬であるビカルタミド(カソデックス)を追加した場合と、プラセボ(偽薬)を追加した場合の10年後までに生存された方の割合を比較する試験となります。
10年後の生存割合にて、カソデックスを加えた方が25%リスクを減少
ポイントは以下の通りです。
◆ 試験結果
・治療開始から10年後の生存率を比較すること結果は、放射線とカソデックス錠を併用した群で生存率が82%、一方、プラセボ併用群で78%であり、臨床統計学的に、カソデックス錠を併用する治療法の有効性が高いことが示されました。リスクは25%軽減しています。(95%、HR CI: 0.58-0.98、P=0.036)。
・転移と死亡に関することが評価されています。まず、転移を起こす確率は、カソデックス錠併用群10年後で11%に対し、プラセボ併用群で19%という結果でした。カソデックス錠を併用することで、転移を起こす率を39%減らすことになります。さらに、10年後死亡に至った率では、カソデックス錠併用群で4.5%、プラセボ併用群は10.1%となり、臨床統計学的に死亡する率をカソデックス錠併用群で51%減らすこととなりました。
◆ 副作用(安全性)
・泌尿器系と消化管系のグレード2(中等度程度)とグレード3(中等度から重度)の副作用の発現は、カソデックス錠併用群、プラセボ併用群共に差はありませんでした。
● 泌尿器系の副作用
グレード2 : カソデックス錠併用群 32%、プラセボ群32%
グレード3 : カソデックス錠併用群 7%、プラセボ群7%
● 消化器系の副作用
グレード2 : カソデックス錠併用群 20%、プラセボ群16%
グレード3 : カソデックス錠併用群 3%、プラセボ群2%
・心臓系においては、カソデックス錠併用群でグレード2と3の発現頻度が約2倍高く発現が認められています。
グレード2 : カソデックス錠併用群 6%、プラセボ群3%
グレード3 : カソデックス錠併用群 4%、プラセボ群2%
・女性化乳房
全グレード : カソデックス錠併用群 70%、プラセボ群11%
◆ 結論
根治的前立腺摘除後に放射線とカソデックス錠を併用することで、治療開始から10年後時点での生存率を有意に改善し、転移を起こす率や死亡に至る率については、減少させることが判明しました。
記事:前原 克章 (構成:可知 健太)