■この記事のポイント
・CD38抗体ダラツムマブは免疫活性を有する薬剤である。
・ベルケイド/デキサメタゾンにダラツムマブを上乗せすると、70%を病態進行リスクを軽減した。
・米国腫瘍学会年次総会にて、プレナリーセッションとして発表された。
6月3日~6月7日にシカゴで開催されている米国臨床腫瘍学会(ASCO:あすこ)のAnnual Meeting(年次会議)にて、「再発または難治性の多発性骨髄種の治療として新規免疫療法ダラツムマブをボルテゾミブとデキサメタゾンに上乗せした第3相試験結果」が、伊トレント大学Antonio Palumbo氏によって発表された。
本演題は、毎年、応募される5000演題の中で4つしか選出されないプレナリーセッション(学問的に優れた演題)の発表の内の1つである。今年のプレナリーセッションのテーマは「患者ケアに多大な潜在的インパクトをもたらすと思われる演題」とのこと。
ダラツムマブは、CD38抗体である。CD38は、多発性骨髄腫の殆どに過剰発現していることが知られており、ダラツムマブはCD38に結合することによりADCC活性(抗体依存性細胞傷害活性)、CDC活性(補体依存性細胞傷害活性)、ADCP活性(抗体依存性細胞貪食活性)などの免疫系活性を介して。抗腫瘍効果を示す。
*ADCC活性等の解説はコチラ(外部サイト)
本試験は、少なくとも初回治療を終えた再発・難治性多発性骨髄腫患者498人を対象に実施された。
参加した患者は、「ダラツムマブ+ボルテゾミブ(ベルケイド)+デキサメタゾン;DVd群」または「ベルケイド+デキサメタゾン;Vd群」に1:1にて割り付けられた。
*ダラツムマブ:1~3コースは毎週、4~8コースは3週毎(各サイクルのDay1)、その後4週間ごと使用。用量は16mg/kg静脈投与。
*ボルテゾミブ:各サイクルのDay1,4,8,11に使用。用量は1.3mg/m2皮下注。
*デキサメタゾン:各サイクルのDay1,2,4,5,8,9,11,12に使用。用量は20mg内服。
病態進行リスクは70%軽減、完全奏効率は19%
本試験の結果、DVd群は病態進行リスクを70%抑えた(TTP, HR0.30 ; 0.21-0.43. P<0.0001)。
また、非常に奏効した方(VGPR)の割合は、DVd群59%、Vd群29%と大きく増加(P<0.0001)、更に完全奏効した方(CR)の割合は、DVd群19%、Vd群9%と大きく増加(P<0.0001)していた。
20%以上の患者で認められた有害事象としては、両群(Dvd/Vd)とも血小板減少(59%/44%)、末梢神経障害(47%/ 38%)、下痢(32%/22%)および貧血(26%/31%)が認められた。
更にGrade3以上(中等度化が重度)の有害事象としては、血小板減少(45%/33%)、貧血(14%/16%)および好中球減少(13%/4%)が認められた。
ダラツムマブに関連したインフュージョンリアクション(注入時の急性アレルギー反応)が45%に認められたが、初回投与のものが多く、またGrade1~2が多かった(Grade3は9%、Grade4は0%)。
Palumbo氏は、「我々は、多発性骨髄腫においてCD38は主要なターゲットになり得るかを長期にわたり疑問視してきたが、そうではなかった。この3剤併用療法は標準療法となるであろうことが明らかになった。ダラツムマブは、多くの症例に対して早期に効果を示し、1か月ほどで抗腫瘍効果を示す。結果、痛みが軽減し、生活の質(クオリティーオブライフ)を改善することできる」と述べた。
Novel Daratumumab-Based Regimen Slows Multiple Myeloma Progression(ASCO News News Releases )
記事:可知 健太
キーワード Daratumumab Darzalex