切除不能の悪性胸膜中皮腫(MPM)患者に対する第2/3相無作為化二重盲検試験(LUME-Meso、NCT01907100)の第2相部分で、MPMの標準的化学療法であるシスプラチンとペメトレキセド(商品名アムリタ)に分子標的薬のニンテタニブ(商品名オフェブ)を追加することの有益性が検証された。主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間が、プラセボを追加した対照群と比べ有意に延長し、病勢進行リスクが46%低下、死亡リスクが23%低下した。
2017年6月2日から5日に開催された米国臨床腫瘍学会(ASCO2017)において、オーストラリアWestern Australia大学のAnna K. Nowak氏らが発表した中間結果で、2016年12月にオーストリアで開催された世界肺癌会議(WCLC2016)での報告に続く最新データである。第2相部分の無増悪生存(PFS)期間中央値が更新され、全生存期間(OS)データも確定した。LUME-Mesoは日本を含む全世界の100施設以上で行われている。
目次
最長4.5カ月の化学療法に併用後、オフェブ単剤投与で治療継続
切除不能で化学療法未治療の悪性胸膜中皮腫(MPM)患者87例を対象とし、アムリタ(500mg/m2)+シスプラチン(75mg/m2)の標準化学療法(PEM/CIS)にオフェブ(200mg)を追加する群(以下オフェブ群)、またはプラセボを追加する群(以下プラセボ群)に割り付け(各44例、43例)、オフェブまたはプラセボは1サイクル3週間の化学療法の2日目から21日目まで1日2回経口投与した。最長6サイクルの併用療法を終了した後はオフェブ、またはプラセボの投与を継続した。
全解析対象で主要評価項目を達成
その結果、主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間中央値は、オフェブ群がプラセボ群より有意に延長し(p=0.010)、病勢進行リスクが46%低下した(ハザード比(HR)=0.54)。全生存期間(OS)中央値はオフェブ群がプラセボ群より延長する傾向を示し(p=0.319)、死亡リスクが23%低下した(HR=0.77)。
組織分類の上皮型にメリットか
悪性胸膜中皮腫の病理診断に基づく組織型は、上皮型、肉腫型、および二相型に分類されている(WHO200組織分類)。本試験において、オフェブ群、プラセボ群ともに大半を占めていた上皮型の悪性胸膜中皮腫(MPM)患者集団(88%超)では、オフェブを追加したことによるベネフィットが特に大きく、オフェブ群の無増悪生存(PFS)期間中央値(9.7カ月)はプラセボ群(5.7カ月)より有意に4.0カ月延長し(p=0.006)、病勢進行または死亡のリスクが51%低下した(HR=0.49)。
上皮型患者集団における全生存期間(OS)中央値は、統計学的有意差には達しなかったものの、オフェブ群(20.6カ月)がプラセボ群(15.2カ月)より5.4カ月延長し、死亡リスクが30%低下した(HR=0.70)。標準化学療法を受けた患者のOSは1年程度とされている。本試験で、プラセボ群でも15カ月を超えて有意差は認められなかったが(p=0.197)、20カ月を超えさせたオフェブの効果については、今後の試験結果に基づき解釈を組み立てていく必要がある。
オフェブの追加で治療中止例は増加せず
グレード3以上の有害事象は好中球減少症(オフェブ群27.3%、プラセボ群4.9%)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)上昇(各11.4%、0%)、ガンマグルタミルトランスフェラーゼ(GGT)上昇(各6.8%、0%)、下痢(各6.8%、0%)などで、発現率はオフェブ群の方が全般に高かったが、有害事象を理由とする治療中止率(各6.8%[3例]、17.1%[7例])はオフェブ群の方が低かった。
現在、LUME-Mesoの第3相試験の患者登録が日本を含み行われている。
記事:可知 健太&川又 総江