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希少がん遺伝子レジストリー「MASTER KEYプロジェクト」始動~希少がんのプレシジョン・メディシンへのチャレンジ~

7月31日、国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院は、希少がんの研究開発およびゲノム医療を推進する産学共同プロジェクト「MASTER KEYプロジェクト」を開始したと発表した。
※MASTER KEY:Marker Assisted Selective ThErapy in Rare cancers: Knowledge database Establishing registrY Project

希少がんは、欧州では「年間発生数が人口10万人あたり6例未満の悪性腫瘍」、米国では「年間発生数が人口10万人あたり15例未満の悪性腫瘍」と定義される。日本においては、これまで明確な定義が存在していなかったが、2015年3月に厚生労働省の「希少がん医療・支援のあり方についての検討会」が設置され、(1)概ね罹患率(発生率)人口10万人当たり6例未満、かつ、(2)数が少ないため診療・受療上の課題が他のがん種に比べて大きいがん種を希少がんとして扱うようになった。

このように、希少がんの患者さんは限られるため、多くの製薬企業では希少がんに対する抗がん剤開発は必ずしも積極的に行われてこなかったのが現状である。

この世界共通の課題に対して、国立がん研究センターと製薬企業(※)が共同で取り組み、希少がんにおけるプレシジョン・メディシン の推進を目指す世界でも初めての試みとなる。

「MASTER KEYプロジェクト」は、大きく二つの取り組みから成る。

一つは、希少がん患者の遺伝子情報や診療情報、予後データなどを網羅的に収集し、研究の基礎データとなる大規模なデータベースを構築するレジストリ研究である。収集したデータは、参加企業にも共有し、バイオマーカー探索や薬剤開発に役立てられる。

もう一つは、バスケットスタディと呼ばれる新しい手法の臨床試験の実施である。バスケットスタディとは、がん種を限定せず特定のバイオマーカー(遺伝子異常・蛋白発現等)を有する患者集団に対して、そのバイオマーカーに適した薬剤を用いるもの。


国立がん研究センタープレスリリースより転載

すでに、2017年5月よりレジストリ研究はスタートしており年間100例の登録とを目指す。また、今秋からのこの仕組みを利用した臨床試験の実施を目指して準備を進める。また、西日本の研究施設として京都大学医学部附属病院とも協力し、国内での実施体制の拡大も図っていく予定。

※参加企業(7月31日現在11社)
アステラス製薬株式会社、エーザイ株式会社、小野薬品工業株式会社、杏林製薬株式会社、第一三共株式会社、大鵬薬品工業株式会社、武田薬品工業株式会社、中外製薬株式会社、ノバルティスファーマ株式会社、ファイザー株式会社、ブリストル・マイヤーズスクイブ株式会社

希少がん、原発不明がんのほか、5大がん(胃がん、大腸がん、肺がん、乳癌、肝臓がん)でも希少組織型であれば参加可能

対象がん種は、年間発生数が人口10万人あたり6例未満となる希少がん患者、原発不明がん患者のほかに、5大がん(胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、肝臓がん)のうち希少病理組織型も対象になる。また、現在は対象患者さんを固形がんに限定しているが、今後は血液がんへ対象を拡大することを検討中しているとのこと。

参考:希少がんの研究開発・ゲノム医療を産学共同で推進(プレスリリース付きのPDFスライド)

記事:可知 健太

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