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超希少がんメルケル細胞がん適応にて、新規免疫チェックポイント阻害薬バベンチオが承認取得

9月27日、メルクセローノ株式会社とファイザー株式会社は、抗PD-L1抗体アベルマブ(商品名バベンチオ)について、「根治切除不能なメルケル細胞癌」の効能・効果で厚生労働省より製造販売承認を取得したことを発表した。

メルケル細胞がん(MCC)は、治療選択肢が限られている悪性度の高い皮膚がんの一種で、日本における患者数は100人に満たないと推定される超希少ながんとなる。非常に進行が早く、予後が良くないがんであり、有効な治療法の開発が期待されていた。

2つの日本初となった薬剤バベンチオ ~メルケル細胞がんで日本初適応、抗PD-L1抗体として日本初承認~

バベンチオは、PD-L1(プログラム細胞死リガンド-1)と呼ばれるタンパク質を特異的に阻害するヒト型抗PD-L1抗体。腫瘍細胞はT細胞のような白血球の免疫応答から身を守るためにPD-L1を利用するが、バベンチオがPD-L1に結合することによって免疫応答をブレーキし、抗腫瘍免疫反応にさらされることになる。また、バベンチオは、薬理作用として抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)活性を有することが確認されており、抗Pd-L1抗体として開発が進むデュルバルマブやアテゾリズマブにはない機能を有す。(余談だが、ADCC活性はデメリットも存在する)

バベンチオは、メルケル細胞がん適応にて日本で初めて承認された唯一の治療薬となり、日本初の抗PD-L1抗体薬となる。2016年12月に、メルケル細胞がんに対して希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を厚生労働省から受けていた。

今回の承認は、日本も参加した転移性メルケル細胞がん患者を対象とした多施設共同第2相非盲検試験(JAVELIN Merkel 200、NCT02155647)の結果によるもの。遠隔転移を有する根治切除不能なメルケル細胞がん患者さんのうち、パートAでは化学療法歴のある88例、パートBでは化学療法歴のない29例を対象としました。パートAの主要評価項目である奏効率は31.8%(95.9%信頼区間:21.9~43.1%、2016年3月3日データカットオフ)であり、パートBの副次評価項目である奏効率の中間解析結果は62.5%(95%信頼区間:35.4~84.8%、2016年12月30日データカットオフ)であった。

本試験の安全性について、バベンチオが投与された117例中85例(72.6%)に副作用が認められ、主な副作用は、疲労29例(24.8%)、インフージョン・リアクション 17例(14.5%)、下痢11例(9.4%)、悪心10例(8.5%)、発疹8例(6.8%)、無力症及びそう痒症各7例(6.0%)、斑状丘疹状皮疹及び食欲減退各6例(5.1%)となった。

同剤の添付文書においては、1)間質性肺疾患、2)肝不全、肝機能障害肝炎、3)大腸炎、重度の下痢、4)甲状腺機能障害、5)副腎機能障害、6)1型糖尿病、7)心筋炎、8)神経障害、9)腎障害、10)筋炎、横紋筋融解症、11)インフージョン・リアクションを重大な副作用として記載されているとのこと。

本試験の国内治験責任医師である山﨑直也医師(国立研究開発法人国立がん研究センター 中央病院 皮膚腫瘍科長)は、両社のプレスリリース内にて、「メルケル細胞がんは、非常に進行が早く予後が良くないがんでありながら、これまで承認された治療薬がなく、有効な治療法の開発が望まれていました。米国と欧州に続いて、アベルマブが日本で承認取得にいたったことは、メルケル細胞がんで苦しむ患者さんやご家族にとって大変大きな一歩となります。この薬剤の承認により、新たな治療選択肢が提供されることになります」と述べた。

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