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進行性乳がん患者に対する運動介入によりがん関連疲労、痛みは軽減する

2017年11月2日から4日ポルトガル・リスボンにて開催されているAdvanced Breast Cancer Fourth ESO-ESMO International Consensus conference(ABC4)にて進行性乳がん患者の治療中の痛み、疲労を軽減するための個別化運動プログラムの有効性を検証した試験の結果がMama Help Breast Cancer Support Center所属のEduardo Oliveira氏らによる公表された。

本試験では、試験参加前には運動をしていない年齢34歳から68歳の進行性乳がん患者(N=15人)に対して、1週間に2回の頻度で1時間の運動を12週間継続する群(N=8人)、試験参加前と変わらない治療を継続する群(N=7人)に振り分けて、試験参加前後での最大酸素摂取量(VO2max)、健康に関連した生活の質QOL)に検証している。なお、本試験での運動は患者個々により変更されているが、心臓リハビリテーション、ウェイトトレーニングなどである。

本試験の結果、試験参加前より試験参加後で増加した最大酸素摂取量(VO2max)は運動をする群で平均13.3%増加、運動をしない群で平均2.7%増加した。なお、最大酸素摂取量(VO2max)の最大増加率は運動をする群で37.2%増加、運動をしない群で平均3.9%であり、運動をした女性の身体的持久力が向上することが示された。

また、健康に関連した生活の質(QOL)に関するアンケートが試験参加者に実施されており、例えば疲労の軽減率は運動をする群で平均14.4ポイント、運動をしない群で平均2.2ポイント軽減した(P < .001)。痛みの軽減率は運動をする群で平均21.4ポイント、運動をしない群で平均2.6ポイント軽減した(P < .001)。

その他にも試験参加者の幸福度の増加についても検証しており、運動をする群で16.6ポイント上昇したのに対して運動をしない群で11.0ポイント上昇していた。なお、本試験における介入期間は12週間であったためにすべての患者が運動を継続できた。

以上の結果より、Eduardo Oliveira氏は下記のように述べている。”運動が身体能力を向上させる薬理学的機序は明らかになっていませんが、運動をすることで心拍出量、酸素輸送量が増加し、骨格筋機能が改善することで生活の質(QOL)が向上することが分かっています。しかしながら、進行性乳がんをはじめ多くのがん患者さんは治療による副作用である疲労、痛みのために運動そのものを実施するのが困難である場合があります。がん関連の疲労に比べて運動関連の疲労は自然な疲れとして肯定的に考えられており、睡眠、身体的幸福度なども改善することが示されておりますので、本試験のように導入し易い運動プログラムを通じてがん関連の疲労、痛みを軽減させていきたいです。”

Effect of exercise on cardiovascular fitness and quality of life outcomes in advanced breast cancer patients (E. Oliveira, PT) -Advanced Breast Cancer Fourth ESO-ESMO International Consensus conference

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