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2017年、FDAより新規承認された急性骨髄性白血病(AML)の新薬一覧

急性骨髓性白血病(AML)の治療薬としてはシタラビン(商品名キロサイド;以下キロサイド)+イダルビシン(商品名イダマイシン;以下イダマイシン)、シタラビン+ダウノルビシン(商品名ダウノマイシン;以下ダウノマイシン)併用療法が約40年近く急性骨髄性白血病(AML)の標準治療である。

しかし、アメリカ合衆国では2017年以降、急性骨髓性白血病(AML)の新薬が続々と米国食品医薬品局(FDA)より承認されている。そこで本記事では、2017年に米国で新発売された急性骨髓性白血病(AML)の新薬を紹介する。

目次

FLT3キナーゼ阻害薬ミドスタウリン(商品名Rydapt)

ミドスタウリン(商品名:Rydapt;以下Rydapt)はFLT3など複数のキナーゼを阻害することで正常細胞プロセスを調節し、がん細胞の増殖、分裂を阻害、他にもFLT3遺伝子の傍膜貫通領域の一部が重複している変異(FLT3-ITD)、またはチロシンキナーゼドメイン領域(FLT3-TKD)の変異受容体を発現する白血病細胞、またはFLT3野生型受容体を過剰発現する細胞の細胞死を誘発する経口治療薬である。

米国食品医薬品局(FDA)より2017年5月3日にRydaptは承認されたが、その根拠となった臨床試験は、FLT3遺伝子変異を有する急性骨髄性白血病(AML)患者(N=717人)に対して導入療法としてキロサイド+ダウノマイシン+Rydapt併用療法、その寛解後に地固め療法として4コースのキロサイド大量療法+デキサメタゾン+Rydapt併用療法、その後寛解を維持している場合にメンテナンス療法としてRydapt単剤療法を最大12ヶ月間投与する群(N=360人)、または導入療法としてキロサイド+ダウノマイシン+プラセボ併用療法、その寛解後に地固め療法として4コースのキロサイド大量療法+デキサメタゾン+プラセボ併用療法、その後寛解を維持している場合にメンテナンス療法としてプラセボ単剤療法を最大12ヶ月間投与する群(N=357人)に無作為に振り分け、主要評価項目である全生存期間OS)、副次評価項目である無イベント生存率(EFS)を比較検証した二重盲検の第III相試験(NCT00651261)である。

本試験の結果、主要評価項目である全生存期間(OS)はプラセボ療法群に対してRydapt群で統計学的有意に改善(ハザード比:0.78、P=0.009)することを示した。また、副次評価項目である無イベント生存率(EFS)もプラセボ療法群に対してRydapt群で統計学的有意に改善(ハザード比:0.78、P=0.002)することを示した。

一方安全性は、Rydapt群において最も一般的に発症が確認された有害事象(AE)は発熱を伴う白血球値減少(発熱性好中球減少症)、悪心、粘膜炎症(粘膜炎)、嘔吐、頭痛、斑点(点状出血)、筋骨格痛、鼻血(鼻出血)、高血糖および上気道感染症などであった。また、重篤な有害事象(AE)の発症率においては両群に差はなかった。

以上の第III相試験結果より、FLT3遺伝子変異を有する未治療急性骨髄性白血病(AML)患者に対するRydapt+化学療法併用療法の効能でRydaptは米国食品医薬品局(FDA)より承認された。

イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)阻害薬エナシデニブ(商品名Idhifa)

エナシデニブ(商品名Idhifa;以下Idhifa)は骨髄細胞の正常な成熟を阻害する酵素であるイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)を阻害する経口薬である。

米国食品医薬品局(FDA)より2017年8月1日にIdhifaは承認されたが、その根拠となった臨床試験はイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)遺伝子変異を有する再発難治性急性骨髄性白血病(AML)患者(N=199人)に対してIdhifa単剤療法を投与し、主要評価項目である奏効率(RR)、有害事象(AE)などを検証した多施設共同オープンラベルの第I/II相試験(NCT01915498)である。

本試験の結果、主要評価項目である奏効率(RR)はIdhifa単剤療法を投与することで19.3%(95%信頼区間:13.8-25.9%)の患者が完全奏効(CR)を達成し、完全奏効(CR)を達成した期間中央値は8.2ヶ月であった。

一方安全性は、Idhifa投与により最も一般的に発症が確認されたグレードに関係のない有害事象(AE)は高ビリルビン血症、下痢、疲労、食欲不振、嘔吐、呼吸困難などであった。なお、グレード3の有害事象(AE)は高ビリルビン血症、血小板減少症、貧血であった。

以上の第I/II相試験の結果より、イソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)遺伝子変異を有する再発難治性急性骨髄性白血病(AML)と診断された患者に対する効能でIdhifaは米国食品医薬品局(FDA)より承認された。

リポソーム化製剤ヴィキセオス(開発記号:CPX-351)

ヴィキセオスは急性骨髄性白血病(AML)治療の標準治療薬であるとキロサイド+ダウノマイシン併用療法を抗腫瘍効果が最も高くなる割合でリポソーム化した製剤である。

米国食品医薬品局(FDA)より2017年8月3日にヴィキセオスは承認されたが、その根拠となった臨床試験は治療関連の急性骨髄性白血病(t-AML)または骨髄異形成に関連した変化を有する急性骨髄性白血病(AML-MRC)と新規に診断された患者(N=309人)に対して、一次治療としてヴィキセオス療法を投与する群、またはキロサイド7日間+ダウノマイシン3日間(7+3療法)を併用投与する群に1:1の割合で無作為に分けて、主要評価項目である全生存期間(OS)、副次評価項目である無イベント生存率(EFS)を比較検証した多施設共同の第III相試験(NCT01696084)である。

本試験の結果、主要評価項目である全生存期間(OS)中央値はヴィキセオス療法群9.56ヶ月に対してキロサイド+ダウノマイシン(7+3療法)併用療法群5.95ヶ月、ヴィキセオス療法群で統計学的有意(ハザードリスク=0.69、P=0.005)に改善することを示した。また、副次評価項目である無イベント生存率(EFS)もプラセボ療法群に対してRydapt群で統計学的有意に改善(ハザード比:0.74、P=0.021)することを示した。

一方安全性は、ヴィキセオス群において最も一般的に発症が確認された有害事象(AE)は出血、発熱を伴う白血球値減少(発熱性好中球減少症)、悪心、粘膜炎症(粘膜炎)、下痢、便秘、呼吸困難、頭痛、咳、食欲不振、不整脈、肺炎、血液関連感染症、悪寒、睡眠障害、そして嘔吐などであった。また、グレード3から5の有害事象(AE)発症率においてはヴィキセオス療法群92%に対してキロサイド+ダウノマイシン(7+3療法)併用療法群 91%、両群間に差はなかった。

以上の第III相試験結果より、治療関連の急性骨髄性白血病(t-AML)または骨髄異形成に関連した変化を有する急性骨髄性白血病(AML-MRC)と新規に診断された患者に対する効能でヴィキセオスは米国食品医薬品局(FDA)より承認された。

抗CD33モノクローナル抗体ゲムツズマブオゾガマイシン(商品名:マイロターグ)

ゲムツズマブオゾガマイシン(商品名マイロターグ;以下マイロターグ)は、急性骨髄性白血病細胞の表面に存在するCD33と呼ばれるたんぱく質と結合するゲムツズマブという抗体にカリケアマイシンという抗がん剤を結合させた遺伝子組み換えタイプの抗体医薬である。

米国食品医薬品局(FDA)より2017年9月1日にマイロターグは承認されたが、その根拠となった臨床試験はCD33陽性急性骨髄性白血病(AML)と新規に診断された患者(N=280人)に対して、一次治療としてマイロターグ+キロサイド+ダウノマイシン併用療法を投与する群(N=140人)、またはキロサイド+ダウノマイシン併用療法を投与する群(N=140人)に1:1の割合で無作為に分けて、主要評価項目である無イベント生存率(EFS)、副次評価項目である全生存期間(OS)などを比較検証したオープンラベルの第III相試験(NCT00927498)である。

本試験の結果、主要評価項目である2年無イベント生存(EFS)率はマイロターグ+キロサイド+ダウノマイシン併用療法群40.8%(32.8–50.8)に対してキロサイド+ダウノマイシン併用療法群17.1%(10.8–27.1)、マイロターグ群で統計学的有意(ハザードリスク=0.69、P=0·0368)に改善することを示した。また、副次評価項目である2年全生存期間(OS)率もマイロターグ+キロサイド+ダウノマイシン併用療法群53.2%(44.6–63.5)に対してキロサイド+ダウノマイシン併用療法群41.9%(33.1–53.1)、マイロターグ群で統計学的有意(ハザードリスク=0.69、P=0·0368)に改善することを示した。

一方安全性は、マイロターグ群において最も一般的に発症が確認された血液学的有害事象(AE)は持続性血小板減少症であり、マイロターグ+キロサイド+ダウノマイシン併用療法群16%(N=22人)に対してキロサイド+ダウノマイシン併用療法群3%(N=4人)であった。ただし、毒性による死亡率が増加することはなかった。

以上の第III相試験結果より、CD33陽性急性骨髄性白血病(AML)と新規に診断された患者に対する効能でマイロターグは米国食品医薬品局(FDA)より承認された。なお、マイロターグCD33陽性再発難治性急性骨髄性白血病(AML)の2歳以上の患者に対しても承認されている。

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