2017年12月11日、医学誌『The Lancet』にて早期乳がん患者に対して術前化学療法、または術後化学療法を投与することで長期的有効性に違いがあるかどうかを検証したメタアナリシス試験の結果がEarly Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG;以下EBCTCG)より公表された。
本試験は、1983年から2002年の間に実施された10本のランダム化試験に登録されていた早期乳がん患者(N=4756人) を対象に術前化学療法を投与していた群、または術後化学療法を投与していた群に分けて、主要評価項目として腫瘍縮小率、局所または遠隔再発率、乳がんによる死亡率、全死亡率をなどを検証したメタアナリシス試験である。
本試験に登録された患者背景は、化学療法として81%(N=3838/4756人)の患者がアントラサイクリン系ベース化学療法による治療を受けていた。また、術前化学療法を投与されていた患者69% (N=1349/1947人)は完全奏効(CR)、または部分奏効(PR)を達成していた。
本試験のフォローアップ期間中央値9年時点での結果、主要評価項目である15年局所再発率は術前化学療法群21.4%に対して術後化学療法群15.9%、術前化学療法群で5.5%(レート比:1.37,95%信頼区間:2.4-8.6)統計学有意に増加していた(P=0.0001)。
また、15年遠隔再発率は術前化学療法群38.2%に対して術後化学療法群38.0%(レート比:1.02,P=0.66)、乳がんによる死亡率は34.4%に対して33.7% (レート比:1.06, P=0.31)、全死亡率は40.9%に対して41.2% (レート比:1.04, P=0.45)をそれぞれ示し、両群間における統計学的有意な差は確認されなかった。
以上のメタアナリシス試験の受けて、EBCTCGは以下のような結論を出している。”術前化学療法を受けている患者さんは受けていない患者さんに比べて局所再発率が有意に高いことが本試験の結果より示されました。術前化学療法による局所再発率を低減させるためには、腫瘍部位を注意深く観察すること、腫瘍の病理学的診断を実施すること、そして場合によっては放射線療法を実施する必要があります。”